FA業務を続けていくために必要なこと(4) 〜「コミュニケーション能力」・・・という曖昧ワード〜

M&Aとキャリア
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不定期企画として、M&AのFinancial Advisory業務(FA業務)を続けていくために必要なことを考えておりますが、今日は4回目の記事として、

コミュニケーション能力

について考えてみたいと思います。

(参考記事)

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FAの仕事に求められるコミュニケーション能力とは?

私はコミュニケーション能力が高いですという主張について

社会人なら大抵何らかのコミュニケーションを求められる

たいていの社会人の場合、象牙の塔にこもって仕事をしているわけではないので、他人と協働しなければならない部分が含まれているため、自分以外の人々と適切に意思疎通をするためのコミュニケーションは欠かせません。

ところで、採用面接やOB訪問で、

「私はコミュニケーション能力が高いです」

と主張される方をしばしば見かけますが、その具体的な意図や実際にどんなシチュエーションでコミュニケーション能力の高さを発揮できるのか聞くと、

  • 初対面の人とも気軽に話せます
  • 誰にでもハキハキと会話できます
  • 自分の主張を理解してもらうことができます
  • 相手の言うことをしっかりと聞けます
  • 会話のキャッチボールができます

という趣旨の回答がなされることが多いです。

コミュニケーション能力を定義してみると・・・

先ほどの回答の例を繋げると、

  • 初対面の人も含めて、いかなる人とも会話のキャッチボールができて自分と相手の意思疎通が適切にできる能力

となるわけですが、これをコミュニケーション能力の定義とするならば、正直に言って、このような能力は程度の差はあっても大多数の社会人なら身についている能力です。

なので、「私はコミュニケーション能力が高いです」という主張は、社会人的には当たり前の能力を当たり前に持っていますという主張に過ぎないと感じられてしまいます。

FA業務に求められるコミュニケーション能力とは

社会人としてのコミュニケーション能力は、程度の差はあっても誰でも身についているわけですが、FA業務に求められるコミュニケーション能力となると、少し違ってくると思います。

適切に案件を回してくれる人とそうでない人

実際のM&A案件において、VP前後の中堅層にクライアントや相手方のFAとのコミュニケーションを任せた場合に、

  • 適切に案件を回してくれるタイプ
  • なぜか色々なところで躓いて案件が回っていかないタイプ

の2つのタイプが居ます。

そして、誰に聞いても

「この人は案件を任せても大丈夫だけど、あの人には任せられないな」

というタイプ分けは、概ね同じようになっているので、案件の特性というよりは、やはり個人的な資質によるものが大きいと言えそうです。

FAの仕事をシンプル化すると・・・

FAの仕事のうち、クライアントや相手方FAとのコミュニケーションでどんな会話するのかをシンプルに整理すると、

  • 各当事者の現状整理・報告
  • 各当事者の選択肢の整理
  • 相手方の行動を促すための説明・説得

のいずれか、またはその組み合わせの会話をしているのだと思います。

例として株式譲渡案件の最終契約書(DA)の交渉を想定してみますと、コミュニケーションとしては、

  • 各当事者の現状整理・報告 ⇒ 当方と相手方のDAにおける主張の整理
  • 各当事者の選択肢の整理 ⇒ 当方と相手方のDAの選択肢を有利不利を含めて整理
  • 相手方の行動を促すための説明・説得 ⇒ 当方が少しでも有利な選択ができるようにクライアント及び相手方へ選択・行動を促す説明・説得の実行

という感じでそれぞれ具体化していけると思います。

適切に案件を回せる人の特徴

そして、コミュニケーションが上手いFAはこのそれぞれの行動について、極めてスムーズに会話を運びます。

たとえば、現状整理や選択肢比較のために綺麗に比較表を作って、相手方の理解に資するようなサポート資料をさりげなく準備していき、それに基づいて各選択肢のメリット・デメリットをわかりやすく説明します。

また、クライアントの行動を促すために必要なサポート材料があれば、それを準備してクライアントが社内をしっかりと仕切れるようにサポートをします。

また、クライアントがどのような選択肢を取れば良いのか分からない場合には、アドバイザーの域を超えないように(言い切らない程度に)ベターな選択肢は何かをクライアントに理解していただくような助言を心掛けるでしょう。

まとめてみると、

  • 客観的に現状を整理する
  • 豊富な知見に基づき選択肢を整理する
  • 相手をロジカルに説得し、相手が必要とする材料も適時に共有できる

という能力が高い場合には、シームレスに案件を回せることができる「コミュニケーション能力の高いFA」であると言えるのではないでしょうか。

さいごに

FAの仕事の場合、立て板に水のようにしゃべることができる人が必ずしも良い仕事ができるわけではありません。

流暢に話ができる能力も大事ですが、それは中身を伴ってこそであります。

ぺらぺらとしゃべっていても中身が明確でなければ、クライアントとしてもこのFAは大丈夫か?と思いますし、逆にシンプルにしかしゃべらなくても、言っている内容が常に的を射ている場合には、その人の発言を慮るようになります。

また、FAはチームワークでもあるため全員が流暢に話す必要はなく、チーム内で適切に役割分担し、たくさんしゃべる人とその中からポイントをしっかりと突く人、という棲み分けができていれば、それはクライアントにとって良いチームになるのだと思います。

(次回の記事)

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