ここ数回に亘りM&A講座として実務的な話題を記事にしておりましたので、ちょっと軽めの記事ということで、Financial Advisor(FA)から見た専門家の先生方のイメージと印象について考えてみようと思います。
なお、専門家の先生方を、
- 弁護士
- 会計士・税理士
の2つのカテゴリーに区分して考えたいと思います。
専門家の先生方とM&A案件について
以前、別の記事でFA業界のプレーヤーをマッピングしようという趣旨の話をしたときに、FAを含めたM&Aアドバイザリーのプレーヤーの案件中の役割について触れました。
(参考記事)

簡単にその内容を抜粋すると、
- FAはM&A案件の最初から最後まで関与
- 弁護士の先生方はDDと契約交渉で関与
- 会計士・税理士の先生方はDDで関与
という整理でした。
また、専門家の先生方とFAの報酬体系の違いにも触れました(FAは成功報酬型で専門家の先生方は時間給制)。
一般的なM&A案件においても事業会社がFAを起用しないで自社で案件プロセスをコントロールすることはあり得ますが、証券会社が扱うM&A案件の規模感で専門家の先生方を(主にDDで)起用しないケースは基本的にないと考えて差し支えないでしょう。
そういう意味で、弁護士等の専門家の先生方はM&Aとは切っても切れない関係にあると言え、FAよりもその重要性は高いのだと思われます。
FAからみた弁護士の先生方
ここからは、FAからみた弁護士の先生方の印象をざっくばらんに書いてみたいと思います。
顧問弁護士の先生方
おそらくは弁護士の先生方の専門領域も多岐に亘りM&Aを専門にしている先生方も居れば、M&Aについてあまり触れたことのない先生方も居るのだと思います。
ただし、専門家ということで仮にクライアントから相談があれば、
「できません」
ということを言う先生はなかなかいないのかなと思います。
顧問弁護士の先生との長い関係がある会社で、会社と顧問弁護士の双方がはじめてM&Aに取り組みますという時は要注意です。
といいますのも、顧問弁護士の先生方の見解に従うと容易に案件が迷走するからです。
なので、M&Aに不慣れな顧問弁護士の先生方がM&A案件に関与せざるを得ない場合には、顧問の先生方のご機嫌を損ねないように、手足として動くという整理で、いわゆる大手の弁護士事務所をセカンドアドバイザー的に起用するように持っていくことになりますし、そのようなセカンド(実質的には唯一のLAとして機能されますが)アドバイザ−的な位置づけであっても積極的に引き受けていただける先生方には毎度頭が下がる思いでおります。
そして、そのようなバランス感覚に優れた先生方は、案件においても合理的な範囲でしっかりと実利を取るアドバイスをして下さるケースが多いので、そのような先生方と積極的に情報交換してリピーター的に起用させて頂くことも多いです。
弁護士としての主張を通そうとする先生方
一方で、不慣れな顧問弁護士の先生方とは逆の意味でなかなか辛い状況に陥るケースもあります。
それはすなわち、M&Aが得意すぎて、あらゆる案件類型のリスクを熟知しており、それを網羅的かつ具体的に指摘することに長けた先生が案件に登場した場合です。
FAとしても
「まさに先生方のおっしゃるとおりではありますが・・・」
と軌道修正するのに苦労しますし、アドバイスを受ける会社の方も
「それで、結局案件をやめた方が良いと言うことでしょうかね」
という具合に、「ご指摘」を受けて及び腰になりがちです。
たとえば株式譲渡契約書の交渉をしているときにも、それが合理的かどうかはさておき、クライアントとしてはある意味で弁護士の先生方から、
「このようなリスクは僅少かつ実現性も低いため取るという選択、ビジネスジャッジも検討しうるものだと思いますよ」
的なコメントを貰いたがっているのだろうなと思われるケースで、しっかりとサポートができる先生方とそうではない先生方との差は結構あります。
バランス感覚のある先生方の場合、FAとして特段リードしなくても合理的なアドバイスをして下さりますが、保守的な先生方の場合には、FAとしてクライアントが言って欲しいだろうなという内容の発言を促すように話を持っていくようにします(そして、おそらく先生方からは「面倒なFAだなあ」という風に思われるのだと思います)
このような観点でも、リピーター的に何度が案件でご一緒していて進め方につきお互い認識しているFA・LA同士であれば上手い具合にタッグを組んでしっかりとクライアントがサポートできるように感じます。
バランス感覚のある弁護士の先生方
ということで、FAとしてはバランス感覚のある先生方と積極的に関与したいなと思う次第ですし、クライアントから
「本件に適切な弁護士の先生方をご紹介ください」
と依頼された場合には、間違いなくバランス感覚のある先生方を紹介するようにしています。
なお、FAとしては、バランス感覚のある先生方をどれだけ多く知っているのかということも重要なファクターなので、場合によってはある案件の逆サイドのLAの先生方と案件を通じて上手く仲良くさせて頂き、別の案件ではご一緒頂くということもあったりします。
さいごに
専門家の先生方というカテゴリーで考えても、弁護士の先生方の重要性が一番高いと思います。
すなわち、弁護士の先生方は契約交渉に関与するという意味で案件の成否について相当に影響を及ぼします。
そういう意味でも、会計士・税理士の先生方はある意味で空気が読めなくても何とかなりますが、弁護士の先生方が空気が読めずに案件を迷走させる場合には、FAとして本当に骨が折れます。
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