今日から、M&Aアドバイザリー(FA業務)の面接対策の連載として、採用面接における典型的な(よくある)質問の意図と回答方針の立て方を検討していきます。
具体的な回答の「サンプル」を提示するというアイディアもありますが、面接官からの質問に対する「回答そのもの」は、面接を受ける応募者の状況・特性によって変わり得るものだと思いますので、「サンプル」よりも、どちらかというと概括的(メタ的)な内容を書いていき、面接における自分なりの回答をつくるための指針になるような連載にしたいと思います。
今回は、まず第1回目の記事として、
- 「なぜM&Aアドバイザリーの仕事なのか?」
という質問について考えてみたいと思います。
志望動機は何ですか?
自分自身の経験から言っても、面接では、
という質問が一番多いように感じます。
・・・といいますか、具体的な聞き方はさておき、ほぼ全ての面接官から毎回聞かれるでしょう。
この質問、要は志望動機を確認しているのですが、M&AアドバイザリーのFA業務の場合、
「それでは志望動機を教えてください。」
といった感じのかしこまった聞き方ではなく、端的に
「なんでM&Aなの?」
とシンプルに確認してくる面接官が多いように感じます(問われ方はいろいろあると思いますが、志望動機を説明する必要があるというわけです)。
なぜ志望動機を確認されるのか
面接官は事前に履歴書と職務経歴書を確認するのですが、実際には面接の直前にざっと眺めた程度ということが多いです。
なので、まずは応募者本人から、そもそもなぜこの仕事がしたいのかを聞いてみようというのが自然の流れとなります。
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ところで、もう一歩遡ってみたいのですが、どうして
「なぜ、この仕事がしたいのか」
と尋ねる必要があるのでしょうか。
面接で志望動機を確認するのは当たり前なのかもしれませんが、これが「当たり前」になっている理由は何なのかから確認していきましょう。
面接の目的 ⇒ 応募者にM&Aアドバイザリー業務の資質があるかどうかを確認すること
そもそもの採用面接の大目的に戻りましょう。面接の目的は
をチェックすることです。
なので極論かもしれませんが、志望動機を問うといってもM&Aアドバイザリーの仕事をしたい「理由そのもの」としての何らか正解を期待しているわけではなく、面接の取り掛かりとして、その応募者の人となりを理解するための会話がスタートできれば良いかな程度に思っているようにも思います。
むしろ、会話の中身そのものも大事ですが、それと同時に会話の組み立て方といいますか、どのようなロジックで組み立てて理由を主張していくのかという点にも重きを置いていると言えるかもしれません(何を言うかよりも「どう伝えるか」に力点を置くべきだと思います)。
志望動機の説明ロジックの例
私見ですが、M&Aアドバイザリーの採用に限らず「なぜこの仕事?」という質問に答えるためには、
- 現状の説明
- 何らかの問題を提起
- この選択が、その問題の解決になるはずとの主張
- その選択の現実性(能力の十分性)の説明
という枠組みで説得していくことがひとつのアイディアだと思います。
以下で詳しく見ていきましょう。
1.現状説明:私は何者か
志望動機の始まりは、自分が何者かという説明から入ります。
何者かといっても、要は「今の仕事として何をしているのか」を説明するわけです。
今の仕事について、冗長にならないように簡潔かつポイントを外さず説明する必要があります。場合によっては、いまの仕事に就く前の「かつての状態(前職・学生時代)」を説明する必要があるかもしれません。
いずれによせ、自分の志望動機を首尾一貫したものとするために必要となる現状説明を考えていくことになります。
2.問題提起:私の抱えている問題意識は何か
続いて、自分の抱えている問題意識の説明に入ります。
可能であれば、仕事の経験と関連付けられた問題意識とすることが望ましいです。
(例:現在、海外事業部に所属しており、資本関係の無い代理店経由の販売の問題点を目の当たりにして、海外企業に直接資本を投下してコントロールを効かせる必要性を感じた。実際に現地企業への出資案件に関与し、クロスボーダーM&Aの難しさとやりがいを感じた)
M&Aに直接関連した仕事をしたことがない方の場合、問題意識の設定は難しいかもしれませんが、M&Aとは要は「売り買い=商売の基礎」なので、ご自身の現状のビジネスと上手く関連付けて理由を作っていく必要があります。
3.選択の合理性:私の選択は問題解決に役立つ
そして、選択の合理性という部分は、M&Aアドバイザリーの仕事に就ければ、自分の問題意識につき、解決の糸口になるということを説明することになります。
(例の続き:事業会社にてクロスボーダーM&Aの当事者として関与できた経験を生かして、今度はアドバイザーとして、多くの企業のクロスボーダー案件に関与していきたい。おそらく相当数の企業が潜在的にクロスボーダーM&Aの必要性を感じているはずなので、それらの企業の役に立ちたい)
4.選択の現実性:私の選択は自分自身の能力の範囲内である
最後に、その選択が現実的にワークするということを説明することになります。
すなわち、自分自身が持っているM&Aアドバイザリーの仕事に必要な知見やスキル、そして意欲が十分であることを述べることになります。
経験者であれば、それまで経験したFA業務と関連付けて能力を説明することになるでしょうし、未経験者であっても、関連スキルや経験を説明して能力の十分性と今後の早急にキャッチアップしていくことを主張することになるでしょう。
2021年2月追記
2021年2月にM&Aアド位バイザリー業務の志望動機を別の観点でまとめてみた記事をでアップしております。こちらもご参考にしていただければ幸いです。
さいごに
志望動機の説明のロジックは決して一つのパターンだけではありませんし、個人ごとの具体的な状況に沿って、論拠を組み立てていくことになるでしょう。
ただし、どのような論拠・理由付けであるとしても、それが相手の理解を得られるロジックになっている必要があるという点に気をつけていただきたいと思います。
(次回の記事)
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