引き続き、M&Aアドバイザリー(FA業務)の面接対策として、よく聞かれる質問の意図と回答方針の立て方について検討しております。
今回は第3回目の記事として、
- 「投資銀行のビジネスって虚業だよね?」
という質問について考えてみたいと思います。
自虐的なのか引っ掛けなのか
なにをもって実業と虚業とを区別するのかは、個人の価値観による部分もあるため明確にこうだと決められない部分もあるのでしょうけれども、投資銀行の仕事はどちらかというと虚業であるとの世間的な認識があろうかと思います。
なので、面接の場においても「投資銀行のビジネスは虚業ではないか?」ということを吹っ掛けて、相手がどう反応するのかを見る面接官もいるように思います。
そのような場合、半ば自虐的に言っているのか、それとも引っ掛けで言っているのかの判断に苦慮するかもしれませんが、実は、何か唯一の正解を求めているわけではなく、この質問への答え方によって投資銀行の仕事をどう捉えているのかを見たいがための質問なのだと思います。
ということで、今回は真逆の考え方に基づく2つの回答パターンを考えてみました。
案1.投資銀行のビジネスは虚業である
一つ目の回答案は、
- 投資銀行のビジネスは虚業である
ということを出発点とするものです。M&Aアドバイザリーの仕事も含めて金融業・助言業務を虚業と割り切るというスタンスです。
アドバイザリー業務は、助言の対象がいなければ成立しません。そして、助言の対象となるクライアントは一般的には製造業等の実業を営む会社であることが多いわけです。
その前提で、論拠の流れを箇条書きすると次のようになります。
- クライアントになる事業会社等のお客様は実業を通じて直接社会に貢献している
- 一方で、投資銀行の仕事はものづくりではなく、直接社会に貢献しているとは思えない
- あくまでも事業会社の役に立つことで、間接的に社会に貢献できる黒子としての存在だと思っている
- ゆえに、アドバイザアリーの仕事は、クライアントの役に立ってこその存在であるからこそ、クライアントファーストの精神でお客様に対応する必要があると思う
- したがって、自分がM&Aアドバイザリーの仕事をする際には、自身が実業ではないことを忘れず、お客様のために尽力したいと考えている
簡単に言うと、自分の仕事は黒子であり、主役のお客様の役に立ってなんぼであるということを忘れず頑張りますというロジックになります。
自分の仕事に過度なプライドを持たず、淡々と奉仕の精神で仕事をしていこうという志望動機になるのだと思います。
案2.投資銀行の仕事が虚業?とんでもない
二つ目の回答案は、
- 投資銀行の仕事は虚業ではない
というスタンスです。製造業等を実業として位置づけると、その実業がうまく回るためのお金を扱うインフラとして金融業が存在していると考えるものといえるでしょう。
その前提で、論拠の流れを箇条書きすると次のようになります。
- 製造業等のクライアントがいわゆる実業を通じて直接社会に貢献しているのはわかる
- しかし、実業だけでは社会は成り立たない、これは現代社会で金融が高度に発達していることを見ても、実業と金融業とは表裏一体、互いに依存し合っているものだと思う
- また、お金は社会の血液であるという考え方もあり、そのお金を適切に循環させることが金融業の使命であると思う
- 特にM&Aアドバイザリーの仕事に限ってみても、事業会社はFAを起用することで適正な条件で取引ができる可能性が高まるし、そういった助言への潜在的な期待感がある
- そもそも社会的な意義もあり、またクライアントからの期待感も高い仕事が「虚業」であるとは思えないし、虚業であると割り切ってしまうのは早計だと思う
- なので、そういった重要な仕事であるM&Aアドバイザリーの仕事に是非就いて、クライアントのために働きたいと思う
簡単に言うと、実業だけで世界が成り立つわけではないのだから、金融業にだって意味があるというロジックになります。
自分の仕事にプライドを持って、重要感を感じているからクライアントのために頑張ろうという志望動機につながるのだと思います。
さいごに
虚業であるか否かということ自体の回答は、個人的にはどっちでも良いと思っており、むしろそれをふまえてどのように志望動機につなげられるのかが重要なのだと思います。
虚業であるか?の答えがYesでもNoでもしっかりとしたロジックで志望動機を補強していければそれで十分だと思います。
(次回の記事)
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