投資銀行のM&Aアドバイザリーの仕事は長時間の残業が当たり前なのか?

M&Aとキャリア
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今日は投資銀行のM&Aアドバイザリー業務の残業時間の長さについて、私の体験に基づくところを話してみようと思います。

OB訪問などで就職・転職活動中の方に会うと、皆様ちょっと聞きにくそうに、でも興味津々といった感じで

「実際のところどのくらい残業しているんですか?」

と質問してきます。

昨今の情勢を踏まえても残業時間には高い関心があると思いますので、そのあたりをざっくばらんに話してみます。

入社前のイメージ

投資銀行(証券会社)へ入社する前には、

  • M&Aアドバイザリーの仕事は徹夜もあるし電車で帰れないなんて当たり前
  • 土日が休めると思うな(休日に急に呼び出されることもしばしば)

といった、諸々の噂があり、戦々恐々としつつも、まあそれでもいいやと思って入社しました。

入社後の実態

ジュニアの時代

それで、実際に入社してどうだったかと言いますと、、、想定内ではあったものの、なかなか拘束時間の長い日々でした。

特にジュニアと呼ばれるアナリスト〜アソシエイトの時代は、何だかよくわからないけど雑用みたいな仕事(データ入力やDD資料のインデックス作りとか)もあって、大変だった印象です。

クライアント向けのプレゼン資料作成やValuationモデルの作成といった仕事に関しても、不慣れな部分が多かったり知識が不足しているのもあって、かなり時間がかかっていたと思います。

特に入社してすぐのタイミングでは、全ての案件のパターンが

「はじめまして!」

の状態なので、類似プレゼンを見ても、そもそも何がポイントなのか把握するだけですごく時間がかかりました。

まわりを見渡しても、やはり若い人たちは残業している人が多かったですし、複数案件に関与してて、なかなか仕事が尽きないという感じでした。

土日はそこまで拘束はされなかったものの、平日に疑問に思った論点を土日のどちらかで勉強するという感じ過ごしていました。

VPからディレクターの時代

ジュニアの時代が終わり、VP(Vice President)になると、クライアント対応が主な仕事になります。

すなわち、いかにして着実に案件をドライブしていくか、また新規の案件をどうやって獲得していくかということが大きなミッションになります。

単にモノを知っているだけでは「頭でっかちの使えないバンカー」の烙印を押されてしまうため、クライアントからの評価を得ながらも自社の数字を追うという意味で、上手く立ち回るための工夫が必要です。

しかも、案件のチームで自分が実質的なトップとなるため、クライアントに対してどのような助言をしていくのかの意思決定も自分でしなければならず、作業ではなく「案件の方針を考える」という思考に時間を使うようになります。

といった感じでVP・ディレクターは作業をするという意味での残業ではなく、クライアント対応のための残業という感じですので、残業時間の絶対量はジュニアの時代よりは減ります。

しかし、帰宅後もメールチェックはしますし、必要に応じてクライアントへの電話・メール等での連絡及び案件チームのジュニアへの指示出しが必要となります。

今後のM&Aアドバイザリー業界はどうなるだろうか

昨今の社会の流れとして、超長時間の残業は避けるようにというものがあり、外資系・日系を問わず、各投資銀行も程度の差はあっても徐々にその方向へ行くのだと思います。

実際に10年程前と比較すると、深夜に残っている人数は減っているようにも感じます。ただし、仮にこれまで1日15時間使っていた作業を10時間でこなさなければならないとすると、単純計算で1.5倍の効率で仕事をしないと終わりません。

環境面は各社とも改善しつつあるようです

IT等の環境面の改善

VDRの普及で、無為にデータルームへ拘束されることが減ったり、ブロードバンド環境が改善して、出先でもオフィスとそんなに変わりなく作業ができるように改善されてきたりと、効率性を高めようと会社側も色々工夫しているように感じます。

実務面の改善

各社とも環境面が改善する一方で、実務面でも今まで以上に多くのフォーマットを標準化したり、案件の知見をとりまとめたりという動きをしているようで、効率性を高める取り組みには相当に力を入れているようです。

個人として改善できること

個人として改善できることと言えば、とにかく無駄な作業はしないということに尽きると思います。

標準フォーム、過去資料を流用

会社が用意している標準フォーマットがあるならそれをベースに作業するとか、過去に類似案件があったなら流用できそうなパワーポイントは積極的に取り込むとか、各位が色々工夫をしていると思います。

チームメンバーに聞く

あとは、チームメンバー間の風通しを良くしておくというのも大事です。

誰がどんな案件を得意としているかを知っておくことで、自分がはじめて扱うタイプの案件があった際には、とりあえず何に気をつければ良いのか、とかどんな参考資料があるかといった関連情報を、その案件タイプが得意な人にざっくり聞けます。

また、社内に弁護士や会計士が居る場合に、最近のM&Aに関連する改正トピックを聞いてみるのも良いかもしれません。会計事務所の資料を読む前に当たりをつけられるという意味でとても有用です。

同じ会社で長く働くことによって、有用な社内人脈をどんどん形成していくことが可能です。なので、よほどのことがない限りは転職をしないというのもありかもしれません。

休めるときはさっさと休む

これからは、ジュニアであっても案件の端境期等では積極的に休んでリフレッシュするような流れになると思います。

人間、どんな超人であってもずっと仕事ばかりしていたら能率も落ちますので、やはりリフレッシュと言いますか、上手く休んで仕事への鋭気を蓄え直すというのが大事だと思います。

さいごに

正直に言えば、ジュニアの時代は、その後大きく伸びるためにある程度の残業は仕方ないと感じています。

といいますのも、ジュニアの時代にどれだけ自分で考えて仕事をしてきたか次第で、いかなるM&Aバンカーになれるのかという意味でのVP以降の伸びしろが違ってくるからです。

長い人生の中の、たかだか数年と割り切って頑張ってみるのも良いかもしれません。

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