組織で働いている以上、月日が経てば多くの人が他者(若手)を育成するポジションにシフトしていくことでしょう。
人を育てることは真剣に取り組もうとすると、とても難しいと感じています。
(もしかしたら「育てる」などという考え方がそもそも思い上がりなのかもしれませんが)
個人的にもまだ正解などは全く掴めていませんが、ちょっと思うところもあったので、少し記事にしてみます。軽く読んでいただきたいので、いつもの先輩・後輩の対話形式でまとめました。
(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)
(対話編)ジュニアメンバーの指導に悩む後輩との話
新規メンバーと提案書を作っていた時に
◎先輩、こんにちは。先日、新しいジュニアメンバーと一緒に新規案件の提案書作りをしていたんですけどね。
◆◆ふむふむ。まず、君もジュニアな気がするけれども。
◎のっけから謎のツッコミはやめてくださいよ。私よりももっと若い、FA業務の経験年数的に言えば2年もやっていないような若手と一緒にやったという意味ですよ。
◆◆ごめんごめん、冗談だよ、話の腰を折り切らないうちに続けてどうぞ。
◎ええ、それで、そのジュニアから提示された1stドラフトを見て面食らいましたよ、「若手世代の能力はここまで劣化が進んでいたのか」っていう観点でですが。
◆◆そうなんだ、その案件は一緒にやってないからわからないけど、普段私のところに上がってくる提案書を含めた資料の類でそこまでヤバイのは来ないけどね。
◎それはそうですよ。我々VP手前世代がそういうめちゃくちゃな提案書を文字通りゼロから作り直して上にあげているわけですから。
◆◆もちろん、君をはじめシニアアソの皆が本当によく頑張っているのは認識しているよ。
型にはまれという話
◎それはさておきなんですが、先輩が以前、私が入社した頃に教えてくださった、型にハマれっていう言葉を思い出したんです。
◆◆懐かしいことを覚えていてくれたものだね。
◎あれは結構新鮮だったんですよ。それまでの私は型にはまるっていうのは、どちらかというとネガティブな印象をもっていたんですよね。でも、まずは一回型にはまってみないと、自分としてあるべきM&Aのアドバイスができないっていう話でしたよね。
◆◆最初はM&Aアドバイザリーの仕事をやったことないわけで、具体的な実務として何をどう進めれば良いか分からなくて当然だから、とにかく過去の類似案件を真似しつつ、そして一緒に着いてくれた先輩のアソシエイトにこれでもかという感じで食らいついて、質問をしまくるのが大事ってことだよね。
◎ええ、そうやって何度かM&Aアドバイザリー業務の一巡を経験していき、少しずつ自分なりの型から外れたもっと良いやり方を見出していくのだと、今では思っています。
守破離という考え方
◆◆そうだね。おそらくFA業務っていうのは、武道や師弟関係のあり方の守破離に近いところがあるんだろうね。ちょと大袈裟な言い方かもだけど。
◎守破離、ですか。たしか、こんな感じでしたね。Wikipedia読んだだけですけど。
- (型を)守(る):支援のもと〜自律的に作業を遂行できる(半人前〜1人前)
- (型を)破(る):作業を分析し改善・改良できる(1.5人前)
- (型を)離(れる):新たな知識(技術)を開発できる(創造者)
◆◆いきなり、独自に型破りな方法を取り創造者になろうと思っても、文字通り型を破るわけで、型にはまったことのない人には独創的なやり方はなかなか編み出せないってことなんだろうね。
◎そもそも、FA業務が独創性とかをそこまで追求する仕事じゃないわけですし。まずはいろんな型をおさえることが重要だと思っています。
新しい守破離のサイクルに踏み込むべき時では
◆◆それで、君はそのジュニア君に「まずは型にはまれ」っていう話をちゃんとはじめにしてあげたのかな? 過去の類似案件の資料をよく読み込んで、本件に必要な項目を網羅的におさえつつ作ってね的な話を。
◎あ、そういう意味では、、、してないですね。
◆◆それじゃあ、そのジュニアくんが車輪の再発明をしてしまっていたとしても、必ずしもその子だけが悪いってわけじゃあないよね。
◎相変わらず手厳しいですね。確かにちょっと丸投げしすぎていたのかもしれません。最初からもうちょっと丁寧に、どういう段取りで資料作りを進めていくかのすり合わせをして行った方が彼も私も効率的でしたね。そこは素直に反省です。
◆◆まあ、君もそのうちVPになるのだろうから、そうなったときにチームを高品質でまとめ上げていく観点を少しづつ身につけて行った方がいいんだろうね。
何重にも巡る守破離のサイクル
◎私には資料作成の型、FA業務そのものの型にははまれていたのかもしれないですが、チームをまとめる型・・・たぶんそれはマネジメントの型なんでしょうけど、それは未だ見えていないんでしょうね。
◆◆まあ、そういう見方もあるかな。FAの仕事はシニアになればなるほど、ジュニアとは異なる観点を要求される気がするよ。資料を作り込める能力も大前提として大事なんだけど、如何にして自分が直接手を下さない場面で、ジュニアが上手くまわってくれるのかという仕組みを用意し、そこでジュニアに気持ちよく仕事をしてもらうかっていうことがとても大事になるかな。
◎型を巡る守破離のサイクルは、何重にもあるんですね。つまり、各段階(各職階)でそれぞれの型があり、それを守破離の考え方によってひとつずつ身につけてていくことの繰り返しこそが大事なんですかね。
◆◆たぶん、そういうことだよ。私もいまでも毎日が是勉強だからね。でも、一度守破離のサイクルを経験したことがあれば、新しい課題に出くわした場合でも、どうすれば上手くできるようになるかの指針は持てるよね。要はもう一度ゼロから守破離のサイクルを回せばいいんだから。
◎・・・何か少し見えてきた気がします。今後は、私の下についてくれた若手くんともうちょっと丁寧に対話し成長のサポートをしていこうかなと感じました。ありがとうございます。
さいごに
個人的には、まず、新人や若手メンバーには型にはまることの重要さをうまく伝えていきたいと思っています。
そして、ひとつの型について守破離のサイクルを一通りこなせるほどに成長した中堅メンバーには、また別の観点で新しい課題が降ってきて、それにまつわる型を改めて身につけていって欲しいなと感じています。
そういう繰り返しこそが、仕事で成長していく王道なのだろうなと考える日々です。