不定期企画として、M&AのFinancial Advisory業務(FA業務)を続けていくために必要なことを考えておりますが、今日は6回目の記事として、
について考えてみたいと思います。
(前回の記事)
話すときは誰よりも自信を持ち、聞くときは誰よりも無知を自覚する
クライアントへ説明するときに・・・
FAの手数料は高い
特殊な案件で専門家の先生方のメーターが回らない限り、FAは弁護士や会計士等の専門家の先生方よりも多額の報酬を頂きます。
FAには何らかの国家資格があるわけでもないのに、専門家の先生方よりも高額の報酬を頂けるという一見矛盾を感じるような状況ではありますが、それは次のような前提があり合理的な仕組みです。
すなわち、
- FAはM&Aの専門家として基本的に専門家と遜色のない知見を持っている
- DDを除けば専門家の先生方からのコメントは基本的にはFAの知見の裏取りになる
- FAは案件の創出から最後までリスクをもって成功報酬型で動く
という状況なので、FAの手数料が高くなることも一定程度はクライアントにも理解いただける状況です。
M&Aの専門家としての信頼を得るために
M&A案件において、一般的にクライアントはメーター制ではないFAに対して、案件に関するあらゆる疑問・質問をぶつけてきます。FAはそれを自らの知見に基づきクライアントへ報告し、最後にその裏取りとして専門家へ照会をかけることになります。
ここで、FAとしてクライアントの疑問に答えるときには、その論点についてその場に居る誰よりも詳しいのは自分であるという自信を持って説明をすべきです。
すなわち、クライアントとしても、高額の報酬を払っているFAの説明が頼りないものであるとそのFAに従っていても大丈夫なのかものすごく不安になります。なので、クライアントの質問に答えるときには、堂々と回答し、同時に展開される関連質問についても臨機応変に対応することが望まれます。
自信を持って説明するために
過去に類似した案件をやったことがあったりすると、クライアントが躓く論点とその方針についてすぐに思いつきますが、仮に過去に類似案件をやったことがなくても、さも当然その論点を知っているがごとく回答する必要があります。
そのためには、事前準備が欠かせません。
たとえば、社内に類似案件をやったことがあるメンバーがいれば、そのメンバーに色々と質問をしておいたり、社内で起用している専門家へ一般論で照会できる仕組みがあればそれを使って事前に論点を整理しておくことが重要です。
また、相手方からの関連質問についても色々なケースを想定しておき、質問の連続となった場合にでも、適切に捌いていくシミュレーションをしておいた方が望ましいでしょう。
クライアントの説明・質問を聞くときには・・・
自らの無知を自覚すること
これまでの説明と矛盾するようですが、案件中でクライアントの説明を聞いたり、クライアントからの素朴にみえる疑問を聞くときには、自分が一番無知であるという自覚をもって聞く必要があります。
すなわち、M&A慣れしていると、
「他の案件でこうだったから、このような質問には、あのように応えれば良いよね」
と単純に捌きがちですが、M&Aは案件ごとのテーラーメイドなので、クライアントの疑問が過去の類似案件と完全に一致しているとは限りません。
また、そもそも、そのようなある意味でクライアントを「見下した姿勢」を取っていると、それはクライアントへも伝わってしまうかもしれません。
実際にクライアントのおかれている状況については無知であるわけですから、そこは本当に謙虚に耳を傾けるべきです。
クライアントの論点を正しく認識するために
クライアントの質問等を聞く際には、自分が無知であるという自覚と、それをもとに、自分としてその質問をどのように理解したのか、すわなち、論点がどこにあるのかを明確化して共有する必要があります。
たとえば、「ご質問の点は、●●という前提でXXという観点の質問ですよね。」という具合に、相手の漠然として質問を、必要に応じて前提もおきながら整理して、それを共有しておくことが重要です。
この「質問の確認」プロセスを飛ばしてしまうと、クライアントが本当に聞きたかったことがではない別の説明をしてしまう可能性があり、そんな場合には、
「このFAは聞きたいこととズレた内容を回答してくる使えないFAだな」
と思われてしまします。
さいごに
結局、FAのあるべき姿というのは、クライアントの信頼を勝ち取り、クライアントをしっかりとリードして行くことだと思います。
そのためには、論点を整理し、質問に適切に答えていくということを繰り返して、仕事の中身を通じて相手の信頼を勝ち取っていくことが重要です。
仮に、自信を持って説明しても、その説明が間違っていたりあやふやだったりすると、クライアントから、
「このFAは自信たっぷりに間違った内容をよくぞここまで言えるもんだ」
と思われてしまうでしょう。
ということで、大前提として、説明のためにしっかりと事前準備をしておく必要があるのは言うまでもありません。