株式交換入門5 / 株式交換の税制適格

M&A講座
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前回に引き続き、株式交換入門の第5回です。

今回は株式交換の税制適格について見ていきます。

(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)

株式交換の税制適格

税制適格性の検討

◎「完全子会社の株主の税務については税制適格か否かというのは関係ない」という話でしたけど、株式交換の当事者である

  • 株式交換完全親会社 と 株式交換完全子会社

においては、税制適格性の検討が必要だってことですよね。

◆◆そうだよ。

◎なるほど、それで、株式交換が税制適格となるかどうかはどのように決まるのでしょうか?

◆◆その前に、税務の原則処理を覚えているかな?以前、同じような話をしたんだけど。

◎ええ、税務の原則は税制非適格だってことでしたね。

(参考記事)

M&A税務入門 税制適格と非適格を学ぼう 税務の原則どちら?
今回はM&A税務の基本の「税制適格」についてまとめてみます。 M&Aアドバイザリー業務でクライアントと会話していて感じるのは、M&Aスキームに関する彼らの興味の大半は自社にどのような税務インパクトがあるのかとい...

◆◆そうだね。「非」という文字が例外を感じさせるのだけど、実は適格の方が例外なんだってことだったよね。

非適格の株式交換となった場合の税務処理

1.完全子会社

◆◆株式交換の場合で税制非適格、すなわち非適格株式交換となった場合は、完全子会社の一部の資産が時価評価されるんだ。

◎一部の資産って何ですか?

◆◆具体的には、「固定資産、土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産」のうち、含み損益及び帳簿価額が1,000万円以上のものだね(本来は資本金等の半額基準もあるが証券会社のM&Aアドバイザリー対象の会社では原則考慮不要)。

◎なるほど、BSの固定資産の部のあたりが時価評価されるというイメージでいれば良いのでしょうかね。ちなみに、合併の場合は全ての資産負債の時価評価だったと思うのですが。

◆◆合併とは違って、株式交換は株主が変わるだけだから、限定的な時価評価となっているんだろうね。

◎そもそも株主が変わっただけで一部の資産とはいえ時価評価しなければならないというのも不合理ですね。

◆◆株式譲渡や、かつての株式併合や全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトで完全子会社化した場合は税制適格性の検討がそもそも不要であったから、この時価評価問題も起こらなかったのだけどね。

◎たしかにそうですね。2017年の税制改正をふまえたスクイーズアウト税制についてまとめて勉強してみたいですね。

◆◆たしかにそれはまとめて再確認しておくべきかもね。

◎ぜひお願いします。

◆◆ちなみに、適格となった株式交換の場合は、完全子会社において時価評価がなされないということを覚えておいてね。

◎わかりました。

2-A.完全親会社(非適格)

◆◆次に、完全親会社の税務はどうかということだけど、非適格の場合の先ほど会計の仕訳を作ってくれたとおり、時価にて子会社株式を計上するというのでOKだよ。

◎あれ? 非適格の場合に会計と同様の処理をするんですか?

◆◆会計とひもづけるとややこしくなるけど、適格と非適格のイメージはこんな感じだよね。

  • 適格 → 簿価引き継ぎ
  • 非適格 → 時価評価

◎なるほど、非適格の場合、完全親会社では時価で子会社株式を認識するわけで、それが会計と整合していたわけですね。

◆◆会計は持分プーリング法がなくなって、簿価引き継ぎとなるのは共通支配下の取引か共同支配企業の形成だけだからね。

2-B.完全親会社(適格)

◆◆次に、適格株式交換の場合は完全親会社において子会社株式をどの金額で認識すると思う?

◎時価じゃないということですよね。そうなると簿価として、、、何が簿価なんでしょうか?

◆◆そもそも株式を持っていなくて、株式交換によってはじめて子会社となる会社の株式を取得したわけだから、完全親会社の情報だけでは簿価を算出することはできないんだよ。

◎となると、、、完全子会社の簿価純資産に合わせるのではいかがでしょう?

◆◆そのとおりだね。正しくは完全子会社の株式交換前の株主数が50人以上の場合はおっしゃるとおりに簿価純資産の金額にあわせるんだよ。

◎もし、株主数が50人未満でしたらどうなります?

◆◆それぞれの株主が付していた帳簿価額相当額の合計値でもって子会社株式を認識しなければならないんだけど、現実的にはそれは困難だよね。

◎上場会社に対する株式交換の案件ならば簿価純資産だと思っておいて良いわけですね。

◆◆それでOKだよ。

さいごに

株式交換のときにクライアントが気にする論点とは

◆◆株式交換を検討する際に、クライアントが気にする論点はたいていの場合同じようなものなんだよね。

◎具体的にはどういう論点なのですか?

◆◆会計では、連結のれんの金額がどうなるかということであり、税務では税制適格となるかということだね。

◎連結のれんは、利益へのインパクトがありますからね。税制適格となるかどうかということも、時価評価課税で余計なキャッシュアウトを防ぎたいということなのでしょうか。

◆◆利益とキャッシュに直接影響する項目を気にするということなのだろうね。

◎税務の観点でもう少し説明を伺いたい項目があるのですが。

◆◆何かな?

非適格株式交換でのみなし配当と繰越欠損金は?

◎非適格となった場合に、みなし配当が生じるかということと、繰越欠損金がどうなるかということなんです。

◆◆なるほど。

◎何かとごちゃ混ぜになっているのかもしれませんが、非適格だとみなし配当が発生し、繰越欠損金も使えないと聞いたことがあるのです。

◆◆ある意味では正しいものの、株式交換に限って言えば間違いだね。

◎そうなんですか。

◆◆端的に言えば、株式交換では非適格となってもみなし配当は生じないし、完全子会社の繰越欠損金も何ら問題なく使い続けられるよ。

◎私の勘違いだったんでしょうか。

◆◆いや、合併ならば君の言ってくれたことが正しいし、株式交換の後に連結納税に加入するならば欠損金の切り捨て問題を検討しなければならないんだけどね。

◎合併と株式交換で非適格であっても扱いが違うんですね。さらに連結納税まで絡んでくると色々と複雑になる、と。

◆◆まあ、それぞれよく考えればロジカルに説明することもできるんだけどね。

◎では、それもまた別の機会に教えてください。今日はとりあえず非適格株式交換であったとしても

  • みなし配当なし
  • 繰越欠損金は自由に使える

ということを覚えておきます。

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