連結会計実践編 / 株式譲渡の会計処理3 〜段階取得について〜

M&A講座
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今回も連結会計実践編として、株式譲渡の会計処理の続きを考えていきたいと思います。今回は、持分法適用を経ない段階取得について見てきます(下記の水色ハイライトのケース)。

  1. 0% → 60%(子会社化)
  2. 60% → 80%(子会社化後にさらに追加取得)
  3. 0% → 10% → 60%(段階的に取得して子会社化)
  4. 0% → 30%(持分法適用)
  5. 0% → 30% → 60%(持分法適用後に追加取得して子会社化)

III.段階的に取得して子会社化するケース(0% → 10% → 60%)

まずはいつもの数値例で考えてみる

M&Aにおいて、「0% → 10% → 60%(段階取得で子会社化)」という感じに、まずは少しだけ(持分法にならない程度に)株式を取得して、その後子会社化するというケースもないわけではないです。

たとえば、上場会社の株式を市場で少しだけ買っておいて、その後しばらくたって公開買付け(TOB)をするというケースがあてはまるでしょうか。

いずれにせよ、数値例で会計処理を見ていきましょう。

【前提:P社はS社株式をU社から段階的に取得】

  • X1年末にP社はS社株式の10%をU社から取得
  • X1年末のS社の株式価値総額(100%ベース)は1,000
  • X2年末にP社はU社から50%のS社株式を買い増して計60%保有(S社を子会社化)
  • X2年末のS社の株式価値総額(100%ベース)は1,200
  • 取得対価はいずれも現金
X2年末のP社のBS(S社を除く連結:S社株式は取得済)
諸資産  18,000資本金 12,000
(うちS社株式700)利益剰余金 6,000

 

X2年末のS社のBS(単体)
諸資産 800資本金 500
利益剰余金 300
※S社諸資産の含み損益なし

単体の会計処理

P社単体の会計処理は、以下のとおりです。

【X1年末:最初の10%取得時】
S社株式 100現金 100
※S社株式1%あたりは10
【X2年末:追加で50%取得時】
S社株式 600現金 600
※S社株式1%あたりは12

連結の会計処理

段階取得の場合「投資=子会社株式」の金額の調整が必要!

連結は単体のように単純にはいきません。

まず、投資と資本の消去対象となる金額について考えてみます。

S社株式の取得価額は「100+600=700」ということで、単純に、この和を投資と資本の消去のベースとしてはNGです。

なぜなら、X1年末とX2年末とでS社株式の評価単価が異なっているからです(S社株式の単価は1%あたり10から12に値上がり)。

さて、どちらの単価が「連結上」あるべき単価なのでしょうか。

単体の会計処理では実際に支払った金額をS社株式の簿価とします。一方、連結では、支配権獲得時の単価で、当初の10%部分の単価も12に洗い替えてあげる必要があります。

これは、支配権獲得時に、子会社株式を時価で評価し直すことで、含み益を実現させるようなイメージです(子会社の資産負債を時価評価すると同時に、それに対応する投資たる株式も全て時価に洗い替えようという考え方が背景にあります)。

したがって、単体から連結への修正仕訳として以下が必要になります。

【P社の連結修正仕訳1:S社株式の単価調整】
S社株式 20段階取得に係る差益 20
※当初保有していた10%相当の株式の単価を10→12へ洗い替え

念のため、単純合算BSに、この連結修正仕訳を入れたBSを示すと次のようになります。

【P社の連結BS(単純合算)】
諸資産 18,820資本金 12,000
(うち、S社株式 720)利益剰余金 6,300
段階取得に係る差益(利益剰余金)20

投資と資本の消去仕訳投資と資本の消去仕訳は次のようになります。増加させた投資(S社株式)は消去対象ですが、資本の部に発生した「段階取得に係る差益」は消去対象にはならない点に留意が必要です。これは、親会社P社の投資勘定を増やした見合いで剰余金が増えているため、P社の剰余金の性質があるからです。

【P社の連結修正仕訳2:投資と資本の消去】
資本金 500S社株式 720
利益剰余金 300非支配株主持分 320(※1)
のれん 240(※2)
(※1) S社資本勘定800 x 40%
(※2) 差額(検算:S社資本勘定800 x 60% と S社株式720の差額でもある)

最後に単純合算BSに連結修正仕訳1と2を加減算すると以下のとおりの連結BSが作成できます。

【X2年末のP社の連結BS】
諸資産 18,100資本金 12,000
のれん 240利益剰余金 6,020(段階取得差益20含む)
非支配株主持分 320

段階取得に係る差益を認識するのがポイントです(意外とうっかりわすれがちなので、注意が必要)。さいごにこのように、連結会計では支配権獲得時に、改めて取得している子会社株式を時価評価し直そうという考え方があります。これは、持分法適用会社を連結化した場合も同じなのですが、持分法適用時の段階取得に係る差損益の算出は今回のように単純にはいきません。そのあたりも含めて次回の記事で見ていきたいと思います。

(次回に続きます)

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