連結会計実践編 / 株式譲渡の会計処理4 〜持分法の基本〜

M&A講座
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今回も連結会計実践編として、株式譲渡の会計処理の続きを考えていきたいと思います。

最終的に持分法適用会社の連結子会社化のケースをおさえたいので、その前に単純な持分法のみの会計処理を見てきます(下記の水色ハイライトのケース)。

  1. 0% → 60%(子会社化)
  2. 60% → 80%(子会社化後にさらに追加取得)
  3. 0% → 10% → 60%(段階的に取得して子会社化)
  4. 0% → 30%(持分法適用)
  5. 0% → 30% → 60%(持分法適用後に追加取得して子会社化)

IV.持分法の基本ケース(0% → 30%)

M&A実務においても、子会社にはしないけれども、まずは持分法適用になる程度まで株式を取得しようとする、マイノリティ出資の案件もそれなりにあります。

いつもの数値前提で考えてみましょう。

前提

【前提:P社はS社株式をU社から取得】

  • X1年末にP社はS社株式の30%をU社から取得
  • X1年末のS社の株式価値総額(100%ベース)は1,000
  • 取得対価は現金
  • のれん償却年数は20年
X1年末のS社のBS(単体)
諸資産 800資本金 500
利益剰余金 300
※S社諸資産の含み損益なし

 

X2年末のS社のBS(単体)
諸資産 900資本金 500
利益剰余金 400(うち当期純利益100)
※S社諸資産の含み損益なし

単体の会計処理

まず、単体は以下の通りです。

  【P社単体の会計処理(X1年末):S社株式の取得】
S社株式(投資有価証券) 300諸資産(現金) 300

連結の会計処理

持分法と連結の関係は?

次に連結ですが、そもそも「持分法」のことを連結と呼ぶのでしょうか。

会計を「単体or連結」と分けますと、持分法を適用するのは連結会計での話です。

そのイメージは次のようなツリー構造です。

  • 会計
    • 単体
    • 連結
      • フル連結(子会社)
      • 持分法(持分法適用会社+非連結子会社)

このように、連結決算は、フル連結する親+子の決算書に持分法適用とする会社の決算情報を反映させたものになります。

連結の会計処理(1年目)

P社の連結会計処理は仕訳なしです。

  【P社単体の会計処理(X1年末)】
単体の仕訳を修正する必要なし ⇒ 仕訳なし

連結の会計処理(2年目)

P社のX2年末の連結会計処理は、S社の純利益の30%を投資有価証券の増加とすることになります。

  【P社連結の会計処理(X2年末)】
S社株式 30(※1)持分法による投資損益 30
(※1)S社の当期純利益100 x 30% = 30

この仕訳自体は正しいですが、これだけで終わってはなりません。

もし連結していたらどうなるか考えてみる

持分法は「一行連結」とも呼ばれることがあり、親会社としては、フル連結した場合と同じ損益だけ取り込むことになります。

ということで、仮に連結だったどのようになっていたかを考えてみます(X1年の取得時から考える)。

  【P社連結の会計処理(買収時:X1年末)→ もし連結子会社だったら】
資本金 500S社株式 300
利益剰余金 300「他」株主持分 560
のれん 60

ご覧いただければわかるとおり、実は「のれん」が発生しています。

したがって、持分法でも「のれん」とその償却費の相当額を考慮しなければならないわけです(前提条件に「のれんの償却年数が20年」という項目を入れていたのは、そのヒントでした)。

このケースでは、1年間の「のれん償却費」は60÷20=3です。ただし、持分法では「のれん償却費」というPL項目を計上できないので、別の勘定科目で代用してあげる必要があります。

持分法にて発生する損益は、基本的に「持分法による投資損益」で調整すれば良いとなっておりますので、当期純利益の取り込みに加えて、

  【P社連結の会計処理(X2年末)】
持分法による投資損益 3S社株式 3
※のれん相当額の償却

という仕訳が必要になります。

「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の残高確認

以上より、結果的にX2年末のP社の連結上でのS社株式に関する金額の残高がどうなったのかを確認してみます。

まず、投資有価証券は、このような残高になっています。

当初が300、当期増加が30、さらにのれん相当額の償却でマイナス3 → 327

次に、持分法による投資損益は次のとおりです。

当期増加が30、のれん相当額の償却マイナス3 → 27(利益)

このように、持分法では、「のれん相当額」があるかどうかをしっかりと把握することが重要です。

さいごに

持分法適用後は、買い増しをする度にのれんが発生しますが、その発生額を正しく把握しておくのはなかなか難しいです。

そのため、投資と資本を正しく消去し、のれんの金額を適切に算出するため「連結のボックス図」があります。

ということで、次回の説例では連結ボックス図もあわせて説明してみようと思います。

(次回に続きます)

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