簡易組織再編が適用できないケースとは

M&A講座
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上場会社の完全子会社化等の案件では、親会社となる会社の株主総会決議が省略できる可能性があり、いわゆる「簡易組織再編」の制度と呼ばれたりします。

似たような概念に「略式」がありますが、略式は子会社の総会の省略のための制度で、「簡易」は親会社の総会の省略のための制度です。

今日は、簡易組織再編が使えなくなるケースについて、いつもの先輩と後輩の対話を通じて確認していきたいと思います。

(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)

後輩がミスしかけたようですが・・・

簡易に反対の株主とは?

◎先輩、先日案件で少し冷や汗をかきまして。

◆◆何があったの?

◎簡易組織再編の制度(会社法第796条3項)を用いて、親会社の株主総会を省略して株式交換をしようとしてたんですよ。

◆◆簡易組織再編制度は、相対的に規模の小さな会社を株式交換で完全子会社化するときに、用いられる制度だよね(株式交換の場合、ざっくりいうと親会社の新株発行数が発行済に対して20%以下のケースなら簡易に該当)。

◎ところが、親会社が簡易株式交換の公告をした後、なぜか簡易株式交換に反対の株主が続出したんですよ。

◆◆なるほどね。

  • 仮に親会社が株主総会を開いていたら、その特別決議を棄却できるだけの株主が、
  • 公告から2週間以内に簡易組織再編に反対するから総会を開けと申し出てきた場合、

には簡易組織再編の制度は適用できず、株主総会の特別決議を得る必要がある(会社法796条4項、会社法施行規則第197条)からね。

◎それなんです! さらに、私の担当していた案件の親会社は、株主総会の特別決議の定足数を1/3に減らしていたため、「1/3の出席&1/3の反対」として、全体の1/9の反対があった場合、親会社の簡易組織再編はできなくなるところだったんです。

◆◆上場会社の場合定款で特別決議の定足数を減らしている会社が多く、1/9の反対というのは、可能性としてあり得なくも無い数値だから、気を付けないとね。

◎結果としては、簡易組織再編に反対の株主はそれ程多くは出ずに1/9未満だったので、なんとか事なきを得たんですが。もし、簡易の前提が崩れた場合のスケジュールをあまり詳しくは説明していなかったため、その2週間は冷や汗ものでしたよ。

◆◆われわれの仕事は、想定可能なリスク・論点はできる限り事前説明をしておく必要があるよね。

◎ええ。

◆◆簡易組織再編について、制度の説明はよくなされているけれども、そのリスク、すなわち簡易が使えなくなるケースというところまでしっかりとクライアントに理解しておいていただく必要があるよね。また、スケジュール案を作るときも、必要に応じて簡易が使えなかった場合を想定してバックアッププランを示せるようになっておく必要があるよね。

◎そうですね。

その他の簡易が適用できないケース

◆◆ついでに伝えておくと、簡易組織再編が使えないのは、この「反対が一定数出た場合」以外にもあるんだけど覚えているかな?

◎あれ、まだあるんですか!?

◆◆以前話したんだけど、

  • 差損が発生する組織再編 ⇒ 簡易が使えない
  • 株式移転 ⇒ そもそも簡易という制度が無い

という点を改めて整理しておくと良いかもね。

(参考記事)

組織再編の四きょうだい2 〜簡易・略式の制度について〜
会社法に定められる、組織再編行為である、合併、会社分割、株式交換及び株式移転の4つの手法についてそれぞれの特徴を比較してみようと思い、先輩と後輩の対話仕立てで記事にしております。 今回は連載第2回ということで、略式・簡易の制度を確認し...

さいごに

簡易組織再編が株主の反対によって適用できなくなるケースは実務上の可能性はほとんど無いかとは思いますが、可能性を指摘しておく方がベターですし、そもそも簡易が使えない「差損」ケースについてもしっかりと整理しておいてクライアントからの質問には適切に回答できるようになっておくのが望ましいと思います。

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