持株会社の作り方(2) 〜株式移転と抜け殻方式の比較〜

M&A講座
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今日も前回に引き続き、持株会社の作り方についてみていきます。

(前回の記事)

持株会社の作り方(1) 〜株式移転と抜け殻方式(会社分割)とは〜
先日、経営統合の手法として、合併と株式移転を比較しました。 (参考記事) 実は経営統合で持株会社を作るという際に、株式移転以外にも持株会社化するための手法があったりします。 ということで、今回は持株会社の作り方につ...

今回は、株式移転と抜け殻方式のそれぞれを比較します。

株式移転と抜け殻方式の比較(前半)

まず、比較のポイントを挙げてみると次のようになるかと思います。

  1. 新設会社によるテクニカル上場
  2. 許認可等の再取得と契約の引き継ぎ
  3. 株主・債権者対策(米国証券法対応も含む)
  4. 配当原資(剰余金問題)
  5. 税務(特に欠損金の帰属)

それぞれ、ひとつずつ丁寧に見ていきます。

1.新設会社によるテクニカル上場

上場会社が関与する共同株式移転の場合、テクニカル上場は必須となりますが、抜け殻方式であればテクニカル上場の対応は不要となります。

まずは、新設会社によるテクニカル上場を必要とするかどうかという観点で比較をしていきます。

そもそもテクニカル上場とは

そももそテクニカル上場とは何かという点については、先日、テクニカル上場について記事にしましたので、併せてご確認ください。

(参考記事)

テクニカル上場の解説 〜株式移転による経営統合ではテクニカル上場は必須!〜
今回の記事ではM&Aの経営統合案件で時々話題になる「テクニカル上場」について確認していきたいと思います。 なお、参考文献として、東証のホームページにある次の資料をベースにまとめておりますので、あわせて資料もご覧ください。 ...

手続の煩雑さ 〜テクニカル上場は面倒?〜

テクニカル上場は手間がかかるというイメージを持つ方もいらっしゃいます。東証対応や書類の準備が必要であり、当事者に負荷がかかるからです。

この点では、抜け殻方式に優位性があるように感じます。

ただし、会社分割をして会社を抜け殻にするのも、債権者保護手続の対応や許認可の再取得と契約の引き継ぎ対応で、結構な手間がかかります。

なので、取引所対応の手間をとるか、会社法対応や許認可・契約の引き継ぎの手間をとるかという比較になりそうです。

真新しい組織が作れる

株式移転でテクニカル上場を採る特徴としては、真っ新な組織(持株会社)が作れることも挙げられます。

真っ新な組織というのは、債権債務的にも真っ新であるため、抜け殻方式で懸念される潜在債務の問題を意識する必要がありません。

経営統合の当事会社の一方がオフバランス債務等を負っている可能性がある場合等では、好まれるように感じます。

また、定款はもちろんのこと、登記の記録も新しくなるため、商号、住所、役員、代表者等が真っ新なものになります。経営者はそういうのを好む人も意外と居たりします。

抜け殻方式の場合には、この逆で、組織としては当事会社のいずれかの組織を流用することになるため、相手方からすると少し面白くないという気持ちになることもあるかもしれません。

新しい証券コード

最後に、新しい証券コードというのもよく着目されるポイントです。

日本では対等の精神をうたう統合が多いわけですが、合併や抜け殻方式を採ってしまうと、どちらかの法人格を頂点の会社として残しての統合になるため、存続会社の証券コードが生きることになります。このような場合、経営統合で社名は変わっても、証券コードは変わらないという統合ということになります。

本当に対等に経営統合したいと思う会社同士だと、この新証券コードというのも好まれる傾向にあります。

もちろん、実際には新証券コードや真っ新な登記記録だけを目指して、株式移転を選ぶというわけではありませんが、株式移転を選択した際に「おまけ的に」好まれる要素というイメージです。

2.許認可等の再取得と契約の引き継ぎ

株式移転と抜け殻方式の大きな違いのひとつとして、

実際に事業を遂行する会社が既存の会社か新会社か

という点があります。

株式移転では既存の会社が事業を継続し、抜け殻方式では新会社が事業を引き継ぐことになります。

実は、この点が許認可の再取得と契約の引き継ぎの論点につながります。

許認可は原則として届け出が必要

会社分割では、許認可は自動的に承継会社に移らないと考えていた方が良いと思います。

もちろん、許認可の種類によりますが、原則として当局に対して何らかの手続が必要だと思います。

そして、この許認可の再取得には相応の時間を要することも多く、再取得と言っていますが、実態は新規取得とほとんど変わらない手続が要求されるケースも多いです。

なので、銀行業のような許認可の再取得に時間と手間がかかるような業種の場合は抜け殻方式は基本的に採用されません。

契約の引き継ぎ

会社法上の原則論としては、会社分割は事業譲渡とは異なり、「包括承継」の思想になっています。

したがって、原則論からいえば、各種契約についても相手方の同意を得ることなく、当然にして承継会社に引き継がれると考えたいところです。

しかし、会社法の規定は原則を表しているに過ぎず、強行法規に違反しない限りにおいては契約自由の原則に従って、各契約の規定が優先されます。

一般的な傾向として、重要な契約であればあるほど、会社分割をする際には契約の相手方の事前同意や事前通知が必要とされているケースが多いです。

この点では、法人格に影響がない株式移転の方が契約の引き継ぎに関しての対応可能性は低いとも言えるかもしれません(実務上は会社分割では同意を要して、株式移転では同意を要さないという契約もあまりないと思いますので、いずれにしても対応が必要となりますが・・・)。

3.株主・債権者対策(米国証券法対応も)

株主対策

株主対策という意味では、

  • 株主総会の省略可否
  • 統合直後の利益配当

というポイントを考慮する必要があります。

まず、株主総会の開催可否ですが、抜け殻方式の場合、

  • ステップ1の抜け殻を作るための会社分割については株主総会の省略ができない
  • ステップ2の株式交換では簡易株式交換に該当すれば株主総会を省略できる

という整理です。

一方で、株式移転については略式・簡易の制度はないので、必ず株主総会が必要となります。

なお、統合後の利益配当については、詳細は後述しますが原則として

  • 株式移転:資本剰余金からの配当(株主側で投資の一部払い戻し扱い)
  • 抜け殻方式:利益剰余金からの配当(株主側で受取配当金認識 → 普通の配当)

という取り扱いとなります。

米国証券法対応

株主対応という意味では、米国証券法対応(Form F-4またはForm CB対応)の検討も必要となり、この観点では株式移転のケースで留意が必要となります。まとめ表を示すとこんな感じです。

A社とB社の経営統合
Form F-4 対応を免れ得る
スキーム
米国証券法対応
■ケース1
米国人株主割合はA社及びB社ともに10%を超える
なしForm F-4の作成・提出
■ケース2
米国人株主割合は、
A社→10%を超える
B社→10%以下
・株式移転を実施した場合の出来上がりの持株会社→10%を超える
(1)株式移転ではF-4対応が必須

(2)抜け殻方式を選択し、A社を完全親会社・B社を完全子会社とする株式交換によって経営統合をすればF-4免除が可能

(1)株式移転を選択した場合→Form F-4の作成・提出

(2)抜け殻方式を選択した場合→米国証券法のルール802に基づく免除申請(Form CB対応等)

■ケース3
米国人株主割合は、
A社→10%を超える
B社→10%以下
・株式移転を実施した場合の出来上がりの持株会社→10%以下
株式移転または抜け殻方式いずれもF-4免除が可能米国証券法のルール802に基づく免除申請(Form CB対応等)
■ケース4
米国人株主割合はA社及びB社ともに10%以下
株式移転または抜け殻方式いずれもF-4免除が可能米国証券法のルール802に基づく免除申請(Form CB対応等)
補足説明

株式移転の場合で、新設の持株会社の出来上がりの米国人株主が10%を超える場合にはForm F-4対応が必要です。

ゆえに、共同株式移転で経営統合をする場合は、両社のいずれかの米国人株主割合が相応に高い場合にはForm F-4対応が必要となる可能性があります。

他方で、抜け殻方式であれば、経営統合の片方の会社の米国人割合は10%を大きく超えていても、もう片方の会社の米国人割合が10%以下の場合には、その米国人株主割合が低い方の会社を株式交換で完全子会社とするように抜け殻方式による経営統合を実施すればF-4作成は免除可能です。

債権者対策(債権者保護手続)

債権者保護手続は、抜け殻方式の場合で会社分割を採るならば必要です。

一方で、株式移転では新株予約権付社債の引き継ぎがなければ不要です。

債権者保護手続は最短でも30日の待機期間が必要なので、スケジュール策定上は留意する必要があります。

(次回に続きます)

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