プレゼンが成功するかどうかは冒頭で大勢が決する!?

仕事術
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M&Aアドバイザリー(FA)の仕事では、クライアントとのミーティングの機会は相当に多いです。

たとえば、FA選定目的のプレゼン(ビューティーコンテスト)、案件途中の主要論点整理や定例会、そしてValuation試算値の報告といった具合に、その会議の目的は様々ですが、ほぼ毎日何らかの会議が詰まっております。

個人的には、そういった会議の場においてメインのプレゼンターとしてプレゼンをリードすることもあれば、同僚に主にリードしてもらい、適宜補足する役回りをすることもあります。

また、他のプロフェッショナルファームのプレゼン・報告会に同席することもよくあります。

そんな中、(このプレゼンターは上手いな)とか(このプレゼンターはどうなんだろうか)と思う部分があるわけですが、たいていの場合はそのプレゼンの最初に上手いかどうかのおおよそのアタリがつくことが多いように感じています。

ということで、今回は仕事術の話題としてそれらを少し整理してみようと思います。

プレゼンの目的は伝えたいことを言うことだけではない

プレゼンの段取りをシミュレーションするのは大切だが・・・

初めてのプレゼンだったり、初めてではなくてもプレゼンに不慣れだったりすると、

  • どのようにプレゼンを進めていくか
  • 提示する資料の構成はどうか
  • 何を言うべきか

といったあたりをシミュレーションする人は多いです・・・。といいますか、まともなプレゼンターなら事前準備として何をどのように言おうかということはしっかりと確認することでしょう。

プレゼンのスライドの順番を調整して、なるべく言いたいことが綺麗につながるようにコンテンツを入れ替えたり、こちらが話す時間が何分くらいかかりそうか計ることもあるかもしれません。

これらの準備はとても大切なことですが、個人的にはこのような準備とあわせてとても大切なことがあると思います。

それは、プレゼン相手の属性・状況を理解しておくということです。

プレゼン内容に関する相手の知識と理解力はどうだろうか

Valuation報告会のケース

たとえば、Valuationの試算値を報告するというケースを考えてみましょう。

プレゼンの相手が、Valuationの知識を相当程度持っているならば、類似会社比較法やDCF法というものがそもそも何なのかは説明せずとも試算の内容に入っていった方が効率的でしょう。

一方で、相手がM&AやValuationに不慣れで、Valuation手法にどのようなものがあるのかとか、企業価値と株主価値の違いがあやふやなであるならば、もう少し基礎的なところから始めつつ、最後の核心としての試算結果にまでたどり着く必要があります。場合によっては多少端折ることが有効となるケースもあるでしょう。

実際には、Valuation試算値の報告会であれば、たいていの場合は相手方のメンバーの知識量も事前になんとなくは把握できている場合が多いので、その前提に沿って準備をすれば大きく外すことは無いのだと思います。

このようなValuation報告会の場合は、過去に相手とやり取りを何度もしている状況であれば、相手の状況を知っておくという重要なポイントを自然に掴んでおり、それに従って展開させていけるというケースなのでしょう。

(とはいえ、Valuation報告会で「はじめまして」の重要人物が登場することも結構多いので、そのような場合に備えて、事前に相手方の担当者に誰が出席するのかと面識のない出席者の方がどのような人かの探りを入れておくことが重要とも言えます)

FA選定のビューティーコンテストのケース

次に別のケースとしてFA選定のビューティーコンテストの場合を想定してみます。

ビューコンの場合は「初めまして」の相手にプレゼンをしなければならないケースがほとんどでしょう。

そのような場合、相手の知識量や関心がある論点がほぼわからない中でプレゼンをしなければならないはずです。そのような中でこちらの言いたいことだけを言うという進め方になるのはマズいように感じます。実際に同僚がビューコンのプレゼンターとして一生懸命説明しながらも、相手方が渋い顔をする場面に出くわしたことがあり、その理由が

「そんなわかりきったことを説明するのに時間を使うな」

と思われていた、なんてこともあったりします。

プレゼンの冒頭における問いかけの重要性

プレゼンの目的を、

こちらが言いたいことを相手にしっかりと理解してもらい、さらに相手の行動を促すこと

と定義すれば、プレゼンは一方通行では無く双方向に展開すべきとなります。

最初に相手に質問をしてみる

プレゼンだから、こちらがしゃべるのであって、相手に問いかけるのは違和感があるかもしれませんが、聞いていて上手いプレゼンターは冒頭に問いかけから入ります。たとえば、

本日は●時までのお時間を頂戴しておりますが、進め方としては冒頭●分を資料説明、その後の●分を質疑応答という形で進めてよろしいでしょうか

とか

本日のプレゼンでは●という論点と●という論点といったあたりを説明しますが、その中で貴社が最も懸念されている論点は●だと理解しておりますがいかがでしょうか

といった具合に、相手に問いかけて双方向にやり取りすることを重視しているように思います。

相手としても問いかけを受ければ、「それで結構です。」とか「それは違います、●について詳細に知りたいですね」とかいった感じで進め方のヒントを示してくれることも多いように感じます。

事前にいくつかのパターンを考えておく

相手に問いかけ、その回答次第で進め方を変えるためには、事前にどのような展開になりそうかのシミュレーションを複数パターンしておくということが重要です。

普通は相手方が関心を持ちそうな論点は数個にまとめられるはずですので、その数個の論点をどのように取り上げていくかを考えるわけです。

また、相手が関心を持たなくても、こちらが重要だと思っている論点については、それを相手の関心事から上手く展開させて繋げるという進め方を組み立てておくことも大切でしょう。

プレゼンは結論から述べる

プレゼンの冒頭に相手への問いかけから始めることと同じくらい重要なこととして、

プレゼンは結論から始める

ということが挙げられます。特にM&Aに関するプレゼンであれば結論から述べて間違いはありません。

この辺りに関しては、たとえばDD報告会で専門家の先生方が、

「DDの進捗状況は●という感じで、現在進行中ではありますが、案件を止めなければ鳴らないほどの重要な論点は発見されておりません」

という結論から述べることがほとんどであることが好例でしょうか。

他の例で言えば、たとえばValuation試算値の報告会であれば、資料の冒頭で全ての評価手法に基づく試算値を1枚のサマリーにまとめて示すということになることでしょう。

この辺りに関して、仮に何らかの商品を買って頂くといったプレゼンの場合にはいきなり結論をもってくるのはマズいのかもしれませんが、少なくともM&Aに関連するプレゼンならば、

「結論から述べる」

ということは重要なポイントだと感じます。

さいごに

個人的には、プレゼンの冒頭にそのアジェンダと時間の使い方を述べてから始めるようにしております。相手の貴重な時間を頂いているわけですし、場合によっては相手が突発的に終わりの時間を早めたいと思っているケースもありますから、時間の使い方の確認をさらっとでもしておくのは重要だと感じております。

また、アジェンダとして論点が●個あって、その中での相手の最大の関心とこちらが最も伝えるべき内容を上手くリンクさせながら展開させていけるように、事前に色々な相手の出方をシミュレーションしておくというのも重要だと思います。

おそらくは、相手の貴重な時間を頂いているというをしっかりと認識してプレゼンを進めることが重要な心構えなのだと思います。

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