今日はFAの仕事をする上で、メールと電話をどのように使い分けるべきかについて考えてみます。
本来は、Face to Faceとメールと電話を比較すべきかともしれません。
とはいえ、FAの仕事においてはFace to Faceの面談よりもメールと電話を手段として用いる頻度の方が高いので、今回はこの2つに特化して比較してみようと思います。
メールと電話の特徴を比べてみよう
まずは、ビジネスで一般論的に言われているところの、メールと電話の特徴を次の4つの観点で比較してみます。
- 相手の作業を中断させる可能性
- 適時性
- 双方向のコミュニケーション(誤解発生の可能性)
- 記録性・証拠力
1.相手の作業を中断させる可能性(メール優位)
まずは、メールまたは電話をしたときに、相手の作業が中断されてしまう可能性について比べてみましょう。
この観点では、明らかにメールの方に優位性があります。
電話は相手側の状況がわからないにもかかわらず、適時に相手に反応を求めるという手段です。
なので、仮に相手が電話に出たとしても、実は忙しい中電話に出てくれているかもしれません。そんな状況下で、たいした重要性もない話をしてしまっては相手から面倒なやつだと思われてしまいます。
メールならば相手は都合の良いタイミングで読むはずですので、電話よりは相手のペースを乱さないと考えられます。
(相手がメールの新着受信のポップアップをONにしている場合には、メールであっても相応に相手の作業を中断しかねませんが・・・)
2.適時性(電話優位)
タイムリーに情報を伝達するという意味では、電話に優位性があります。
メールを送ったとしても、それを必要なタイミングより前に読んでもらえる保証はありません。
一方で、電話ならば相手が出てくれれば、仮に30秒程度であってもかいつまんで用件を伝達することはできますし、別途メールを送るから確認して欲しいというリマインド効果も狙えます。
3.双方向のコミュニケーション(電話優位)
双方向のコミュニケーションの観点では、完全に電話の方に優位性があります。
誤解を避けられる
メールは本当に注意を払って文を書いたとしても、簡単に相手に誤解をされます。
一方で、電話の場合相手の反応を聞きながら相手の理解度を確認することができます。なので、電話の場合にはメールほどは誤解を招かないように思います。
伝達すべきことの取捨選択
また、メールはある意味でこちらの手の内をかなり明かす必要がありますが、電話ですと、相手の反応を見ながら何を伝えるべきかを臨機応変に変えられます。
特に、メールで交渉ごとをやろうとするのはかなり難しいように感じます。
双方向理解の効率性
情報の送信側と受領側とを明確に区分できるのであれば、メールの方が望ましいです。
それは、同じ情報を伝達するのであれば、視覚で認識する方が数倍速くて効率的だからです。
一方で、FAの仕事で起こるシチュエーションは、相応の頻度で双方向のコミュニケーションが必要になります。その場合、相手方にもメールを書かせるという時間を考えると、口頭で話し合える電話の方が効率的かつ有用であると思います。
4.記録性・証拠力(メール優位)
これは、要は言った言わないの論争を避けられるかということですが、明らかにメールが優位です(録音機能付きの電話は除く)。
話し言葉はときに誤解を招く
メールも誤解を生じやすいですが、一方の電話も、敢えてオブラートに包んで伝えたり、主語を明確にしなかったり、相手の記憶が時間とともに曖昧になっていったりといった理由で、お互いの主張につき、言った言わないのいざこざを起こしやすいという特徴があります。
第三者が介在できるか
また、電話のコミュニケーションは当事者内に閉じられており、相手が悪意で、言ったことなのに、
「そんなことは、言ってない」
というように主張することもあり得ます。
ここで、メールならば、伝えた内容はその日時も併せて記録されますし、CCに他者を入れることで、証人を増やせるという利点もあります。
FAの仕事では、どのように使い分けているか
FAの仕事で、実際にメールと電話をどのように使い分けるのかは、各自の特徴(キャラクター)によっていろいろなパターンがあるのだと思いますが、ここでは、私の個人的な感覚をお伝えしてみようと思います。
個人的には、次のように使い分けております。
- 電話:原則として新たな論点の頭出しと協議
- メール:リマインドまたは継続協議中の論点の経過報告
これらをもう少し詳しく説明していきます。
原則として、新しい論点(New Issue)を扱うときは電話
M&Aの案件は日々そのプロセスが進むので、新しい要対応事項が刻々と発生します。
クライアントの不安感を取り除くために
M&Aに慣れているFAであれば、新しい論点が発生したとしても、その状況の理解と対応方針の策定につき、発生した瞬間にだいたいの場合ひらめくことになろうかと思います。
しかし、一般的にクライアントはM&Aに不慣れですので、その新しい論点がM&A全体のプロセスや自社の意思決定にどの程度影響するのか判断に迷い、不安を抱きやすいという状況です。
そのような状況下で、メールで一方的に
「こんな状況になっていますが、このように対応するで良いですか?」
と伝達するだけでは、クライアントの不安感は取り除けないかもしれません。
なので、原則として電話を使ってクライアントにアプローチして、状況を丁寧に説明し、対応方針の趣旨や背景を伝え、また選択肢が複数ある場合には、それぞれの特徴を説明します。
特にクライアントが不安を抱えやすいような状況であれば、その不安感を取り除き、適切にプロセスが進捗するように対応することにになります。
電話のデメリットを回避するための工夫
なお、電話のデメリットである、
相手の作業を中断させる可能性
を避けるための工夫としては、事前にメールで電話可能な時間帯のアポ取りをするという方法が考えられます。
すなわち、重要ではあるものの緊急度がそこまで高くないような内容の場合、メールで先に電話で新しい論点につき協議したい旨の頭出しをつつ、その日の空き時間も確認して電話連絡の時間帯をあらかじめ調整しておくといった対応をするようにしています。
もちろん、緊急度の極めて高い話であればすぐに電話をしますが、そうでなければ、FAとしても状況を整理して選択肢を検討する時間が確保できるという意味で、電話の時間帯をあらかじめ調整しておくという方法は結構使えます。
リマインドまたは継続協議中の論点の経過報告としてのメール
メールにもメリットがあります。それは、リマインド効果と経過報告です。
リマインド効果
上述のとおり、電話にて新しい論点を協議したとして、その内容をリマインド的に相手に送ることがあります。
電話内容を簡潔にまとめて、それぞれのタスクやその期限も記載しておけば、そのメールを指針として次の行動ができるというメリットがあります。
ただし、あまりやり過ぎると
「そんな分かっていることをいちいちメールしてくるな」
と主張する相手もいるため、簡潔にまとめたり、タスクの役割分担と期限だけに絞るとか、相手の特徴にある程度あわせるという工夫も必要です。
経過報告
電話等で状況や対応方針は相談済みではあるものの、継続的に状況が報告が必要な内容については、メールで履歴を残しながら連絡をすることで、情報整理が効率かつ有用にできると思います。
大抵の場合、経過報告は緊急度はそこまで高くないですし、当初の想定通り案件が進捗している限りにおいてはメールで一報しておけば十分であるというケースがほとんどですので、定例的に経過報告のメールをしておくと良いと思います。
さいごに
ということで、FAの仕事はメールと電話の特性を考慮しつつ、それぞれを組み合わせて上手く案件を進めていくことになろうかと思います。
クライアントの特徴次第で、若干は方法を変える必要はありますが、大方針としては今日の記事の内容で大丈夫だと考えております。