引き続き、M&Aアドバイザリー(FA業務)の面接対策として、よく聞かれる質問の意図と回答方針の立て方について検討しております。
今回は第7回目の記事として、
- 「最後に何か質問ある?」
という質問について考えてみたいと思います。
いわゆる「逆質問」の重要性
面接では、最後の方に面接官から、
「じゃあ、最後に何か質問ある?」
と必ず聞かれると思います。世の中的には、これを「逆質問」と呼ぶ風潮もあるようです。
なお、逆質問をするのは面接官としての一般的なマナーになっており、基本的にどんな面接官も最後にこれを聞くのがお決まりになっているようです。
実は、心理学的な見地からは最後の逆質問はかなり重要な要素であると言えますので、まずはその点を確認してみたいと思います。
初頭効果と終末(親近)効果
心理学の用語で、初頭効果と親近効果という概念を聞いたことがあるでしょうか。
簡単に言うと、次のようなものです。
- 初頭効果:第一印象に強く影響を受ける
- 終末(親近)効果:最後の印象に強く影響を受ける
いずれも重要で、面接ではどちらの効果についても最大限良い印象を残せるように準備する必要があります。そのためにも、志望動機と逆質問は特に重点的に準備しておく必要があるでしょう。
初頭効果は自己紹介と志望動機で
初頭効果を良いものにするためは、面接の冒頭の自己紹介とそれに続く志望動機で良い印象を与えるように的確に話を進める必要があります。
この辺りは、この連載のはじめの記事で説明しているのであわせて読み返してみて下さい。
(参考記事)
終末効果(親近効果)をねらう
一方の終末効果(親近効果)とは、先ほど述べたように最後の去り際の印象が残るというものですが、良い終末効果を残すためには、逆質問が面接の最後になされるという性質上、逆質問にうまく対応することが必要となります。
逆質問で良い対応ができれば、場合によっては面接の途中が芳しくなくても逆転的に良い印象を残せるかもしれません
(とはいえ、初頭効果のインパクトを大きく覆すほどの影響はないようにも感じますので、面接の最初から頑張る必要があることは言うまでもありません)
望ましい逆質問の例・・・その前に
逆質問の例は、インターネットで検索すれば転職サイトでも特集を組んでいますし、色々なものが出てきます。
なので、大抵はその中から実際に自分の興味関心を満たすための質問をいくつかピックアップしておいて、面接中に解消できなかった疑問点を逆質問に充てることとなるでしょうか。
ここで、逆質問をする際に、ぜひ覚えておいて欲しいことをがあります。
逆質問は面接官の役職(社内地位)に応じて臨機応変に変えるべき
応募者は事前に用意しておいた逆質問リストの中から話題にならなかったものを漠然と逆質問として投げかけてしまいがちですが、何を質問するのかを決める際に、
この面接官は社内でどんな地位なのか
を改めて思い出して、その面接官に適したことを聞くべきです。
すなわち、ジュニアのアソシエイト社員に対して、
「御社のM&Aアドバイザリーに関する長期的なビジョンを教えてください」
とか聞いてみても、何らかのことは答えてくれるかもしれませんが、心の中で
「そんなのは経営陣に聞いてくれよ」
と本音では思っているかもしれません。一方で、MDクラスの方に
「なぜM&Aの仕事をやってるんですか?今後のキャリアプランは?」
と聞くのは案外的外れ(そしてある意味で失礼)な質問のように思います。
まずは、その役職者の方にあった質問をするように心がけるというのが第一関門だと思います。
逆質問の終わり方は自己アピールにつなげるのがベター
自分の経験上、逆質問をして
「なるほど、わかりました」
とだけ言って終わるのはもったいないと思いますし、そのような応募者がいた場合には会話のキャッチボールができない人だなあと感じてしまいます。
一方で、逆質問を取り掛かりとして、会話のキャッチボールが弾み、さらに最後にさりげなく自己アピールを混ぜてくる応募者が居ると、「この応募者は会話をリードするのが上手いな」と感じます。
なので、逆質問は「本当に聞きたいこと」を聞くと言うよりは、最後の自己アピールにつなげるための取り掛かりにするのがベターかもしれません。
望ましい逆質問の例
そのための質問としては、
- どんな人と一緒に仕事をしたいですか?(どんな人材を採りたいですか?)
- 仕事がつらいと思う場面をどのようにして乗り切ってきましたか?
- 仕事の醍醐味、やりがいを感じる場面を教えてください。
- シニア(ジュニア)バンカーに必要な資質はどんなものがあるのでしょうか
- 私は●●のようなスキル(資格)を持っていますが、実務で役立つためにはさらにどのような点を重点的に勉強していけば良いでしょうか?たとえば・・・のような勉強は必要だとは想定しております。
といった辺りを聞くのが無難だと思います。
面接中の会話を上手く質問に関連付けられれば尚ベター
さらに、会話上手をアピールするためには、面接の途中で出た話題とも関連付けて質問するのが良いと思います。
たとえば、面接の途中で面接官が「シニアバンカーは判断力が大事だよね」という話をしていたとして、自分がジュニアバンカーとしての面接を受けているならば、
「先ほど、シニアバンカーに必要な資質は判断力であると教えていただきましたが、私のようなジュニアバンカーに必要な資質もおしえていただけますでしょうか。」
と質問すれば、
(この人は、自分の話を覚えていてくれて、さらにそれと関連付けて質問をしてくるとはなかなかやるなあ)
と感じてくれるでしょう。
逆質問NG集
お金と休みと時間の話は避けるべし
気になるからといって、次のような質問をするのは避けた方が良いでしょう。
- 給与
- 福利厚生
- 有給休暇のとりやすさ
- 残業時間の水準
個人的には、これらの情報が気になるという気持ちはすごく分かりますが、直接聞かずに転職エージェントを上手く使って、オファーレターをもらう直前までには確認するようにしたいところです。
簡単に分かることを聞かない
また、ホームページやインターネットで探せば分かる情報は聞かない方が無難です。
FAの仕事は、色々な情報ソースから情報を集めてくる仕事なので、簡単な調査もしないのかという人材は基本的に採用せずとなってしまうでしょう。
特に質問はありません
さらに、
「特に質問はないです」
といって、何も逆質問をしないというのも、消極的な印象を残すだけとなります。
面接官としては、最後のアピールの場として逆質問を促していますし、それだけではなくてこの人物はどんなことを聞いてくるのだろうという純粋な興味もあります。
それをバサッと「特になし」と切り捨ててしまうのは、基本的にありえない行動だと思います。
なお、逆質問をど忘れしたり、面接中にあらゆる疑問点が解消されたという稀有な状況になったとしても、
「面接中に●●ということを教えていただきましたが、それに関連して具体的に●●についてさらに詳しく教えていただけますか?」
といって、適宜質問を作り出せるようになっておきたいところです。
いずれにせよ、逆質問NG集もいろいろな転職サイト等で特集があり、その内容はFA業務での採用でも概ねあてはまると思います。
さいごに
文中でも触れましたが、逆質問は終末(親近)効果を狙うために、重要なアピールポイントです。なので、漠然と時間を消化することのないように、しっかりと準備して臨みたいものです。
(次回の記事)
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