会社法に定められる、組織再編行為である、合併、会社分割、株式交換及び株式移転の4つの手法についてそれぞれの特徴を比較してみようと思い、先輩と後輩の対話仕立てで記事にしております。
今回は連載第4回ということで、税制適格や金商法対応を確認していきます。
(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)
組織再編と税制適格
税制非適格時の時価評価
◎合併と分割、株式交換と移転の2グループで税制非適格のときの時価評価対象が違いますよね?
◆◆そうだね。非適格となった場合、次のように区別されているよね。
- 合併・分割 ⇒ 対象となる全資産負債の時価評価
- 株式交換・移転 ⇒ 固定資産、土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産のうち含み損益及び帳簿価額が1,000万円以上のものに限定
◎そもそも、交換と移転では法人格の混ざり合いがないにもかかわらず、なぜ時価評価が必要なのでしょうか。しかも中途半端に一部の資産だけという具合に。
◆◆それは僕にもよくわからなくて、税制の設計ミスじゃないかと思うくらいなんだよね。非適格株式交換での時価評価問題があったから、直近の税制改正以前は、株式併合や全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトが流行っていたわけだからね。
スクイーズアウト税制の整備
◎でも、それがある意味で斜めの方向に税制が改正されてしまいましたね。
◆◆そうだね。平成29年度(2017年度)の税制改正で、株式等売渡請求・株式併合・全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトが株式交換「等」として、組織再編税制の枠内に入ってしまったからねえ。
◎実務上は、連結納税との兼ね合いで使いやすくなったという理解もできそうですが、いずれにせよ、実務がどうなるかということろでしょうかね。
◆◆10月1日以降に実際の案件がどのようになっていくのかは楽しみだね。
(参考記事)
組織再編と金商法対応
◎組織再編と金商法対応についても考えておきたいのですが。
◆◆金商法対応というと、有価証券届出書の作成の必要性ということでいいのかな?
◎そうですね。
◆◆簡単に言ってしまえば、組織再編で有価証券届出書が必要となるのは株式移転の場合がほとんどかな。
◎そうなのですか。
◆◆本来的には組織再編行為は有価証券届出書対応が必要という原則論があり、その例外に該当すればその提出が免除されるという枠組みになっているんだ。
(参考記事)
◎ということは、合併・会社分割・株式交換は概ね免除に該当するという理解で良いんですかね。
◆◆上場会社が非上場会社を存続会社として合併するとか、分割型の会社分割をして非上場会社の株式を交付するとかといったトリッキーな手法を採らなければ基本的に大丈夫だよ。
◎要するに、”既発行の有価証券を対価としない場合”が問題となるわけでしたよね。
◆◆そのとおり。株式移転は会社を新設する手法であって、その株式は「既発行」にはなり得ないため、有価証券届出書の対応が必須となるわけだね。
(次回に続きます)