週刊M&Aバンカー第15号:TOB案件の特別委員会の運営と買付者への質問(例)

週刊M&Aバンカー
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11月に入り、一段と寒くなりましたね。陽も短くなり、晩秋になってきたなと感じるところです。

さて、今週の週刊M&Aバンカー(第15号)は、

【M&A講座】TOB案件の特別委員会の運営と買付者への質問(例)

です。

【M&A講座】TOB案件の特別委員会の運営と買付者への質問(例)

2019年に経産省から公表された「公正なM&Aの在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(以下、「2019経産省指針」または「本指針」)で定められている通り、現在においては、MBO案件や上場子会社の完全子会社化案件では少数株主保護のための公正性担保措置の一環として、特別委員会(従来は第三者委員会と呼ばれもしたもの)の設置が一般的になってきています。

とはいえ、実務上は、2019経産省指針の公表前から本指針の対象となる取引においては一般的に特別委員会の設置がなされてきていました。

この点に関しては、東証の「支配株主との重要な取引等」に係る規制でも、少数株主にとって当該取引が不利益でないことについて、

  • 特別委員会(第三者委員会)による意見書
  • 独立委員による意見書
  • 法律事務所による意見書または第三者算定機関によるフェアネスオピニオン

のいずれかを取得することで示すよう求められているという側面も関係しているといえます。

(参考記事)

支配株主との重要な取引等に関する規定 〜第三者委員会の組成と活動も〜
公開買付け(TOB)や株式交換等の完全子会社化の案件においては、 支配株主との重要な取引等 に該当することがあるため、その対応が必要となることがあります。 今日は、そもそも支配株主とは何かということこと、支配株主との重...

特別委員会の運営はどうするのか

メンバーの選び方

本指針において、特別委員会は社外役員を主軸とするメンバーによって構成されるべきとなっていますが、社外の有識者(弁護士・会計士等の専門家)をメンバーにすることを妨げるものではないともいわれています。

本指針公表前は、社外の有識者を積極的に起用するケースも多かったという理解ですが、本指針公表後はなるべく社外役員からの人選となるように助言されることが多くなっているようです。

株主総会において株主によって選任された人物が特別委員になることが重要であるという考え方が背景にあります。

(「社外の有識者」とかいう”どこの馬の骨ともわからない人物”、かつ、その選任に際して株主の意向が反映されていない者に株主にとっての重要な判断材料となるもの任せて良いのかという観点が影響しているようです。そして、社外の有識者は特別委員のアドバイザーとして選任すれば足りますよねという整理のようです)。

実務面のサポート体制(事務局・株価算定者)

特別委員会の役割期待は、最終的には諮問対象の取引にかかる答申書を作成し、少数株主にとって不利益な取引ではないことをサポートすることであります。

この点に関し、特別委員会のメンバー自身はMBOや完全子会社化取引になれているわけでも、過去に類似案件で特別委員となった経験もほぼないことが想定されるため、実務面でのサポートは必須といえます。

一般的には、特別委員会を設置する会社(TOBの対象者側)のリーガルアドバイザーが特別委員会の事務局を兼ね、答申書のドラフト作成をしたり、買付者側への質問状を作成したりするケースが多い印象です。

また、株価算定については、

  • 特別委員会として、対象者のFAとは異なる独自の株価算定者を起用するケース
  • 対象者が起用したFAを特別委員会としての株価算定に係るアドバイザーとして追認し、新たに株価算定者を起用しないケース

の2つのパターンがありそうです。

特別委員会による買付者への質問(例)

特別委員会の実務として、買付者へ当該取引に関して質問を投げかけるというものがあります。答申書を作成するにあたり、買付者の意向を正確に把握するためにおこなわれます。

ちなみに、実務の流れとしては、

買付者による完全子会社化の提案 → 特別委員会による買付者への質問状の送付

という順番になります。

特別委員会としては、買付者による提案書に記載されている内容につき、さらに深堀をしたり、記載がなされていないけれども確認が必要な要素について質問を投げかけることになります。

なお、FAとしては、買付者側でも対象者側でも当該質問の機会に関して、質問案・回答案の作成をサポートしたりすることもあります。質問集の例をあげてみるとこんな感じになることが多いでしょうか。

(1)過去から現在までの認識の確認

  • 買付者の事業環境は
  • 買付者と対象者との関係は、現在までのシナジーはどんなものがあるか

(2)なぜ本件を実施するのか、メリット・デメリットの整理

  • 本件の意義、具体的な施策、その実現方針
  • 買付者における対象者の課題認識と本件実行による改善案、改善により享受できそうなメリット
    • 当該改善、メリットを上場したままでは享受できないと考える理由
    • 当該改善施策の結果、短期的な業績への悪影響と長期的な好転予測について
  • 対象者が上場廃止になることに伴い、対象者に発生すると見込まれる懸案事項の有無と対応方針

(3)なぜ今なのか

  • 今次タイミングを選択した理由(経営環境を踏まえた買付者及び対象者にとって最善のタイミングと考える理由)

(4)今後について

  • 本件実施後のガバナンス体制(役員構成、経営方針・事業戦略、株式保有方針、従業員の処遇、等)

(おまけ)株式交換案件の場合

  • 対象者の既存株主が負うことになる新たなリスクの有無
  • 交換された事業計画の策定プロセス、本件のためにこのタイミングで策定したのか、その決裁レベルは

回答案の作成におけるFAのサポート

このような感じで特別委員会は買付者側に相当数の質問を投げかけます。いくつかの質問は各案件ごとに固有の状況を整理し回答案を作成することになりますが、別の質問のいくつかはいわゆる定型回答があるものだったりします。

FAとしては、他の案件でどのような回答がなされていたのかを熟知しておくことで、回答案作成時に積極的にサポートができます。また、各案件ごとに固有の内容を回答する必要がある項目も、他の案件での記載のレベル感を知っておくことで、どの程度の細かさで回答すれば必要十分なのかを肌感覚として認識しておき、積極的にアドバイスしていきたいところです。

さいごに

特別委員会が登場する実務は、経験の有無でだいぶ進め方の効率性・有効性が変わってくるところです。

FA選定に際しても、類似案件の経験の有無は問われるでしょうから、ふつうは経験者をメンバーに含めることとなります。

それでも、誰しも最初は知らない・やったことがないというところからのスタートになりますから、はじめましてのケースであっても、周りのメンバーの知見をフル活用して乗り越えていきましょう。

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