いよいよ極寒の日々がはじまりました。
今年の年末年始は巣ごもりされる方が多いと思いますので、巣ごもりを楽しく過ごす計画を立ててみるのも一興かもしれません。
さて、今回の週刊M&Aバンカーは、
です。
【M&A講座】資金調達:出資はこわいという話
M&Aアドバイザリーの仕事においては、普段、上場会社の企画や財務の方とやりとりをすることがほとんどなので、資金調達のメリット・デメリットや留意点なんかは所与の前提として話をすることができます。
ところが、世間一般では融資と出資の違いを正確に理解していないにもかかわらず、会社を設立してビジネスをやってみようという方も増えてきています。
新規ビジネスをやろうというチャレンジ精神が旺盛なのは良いことですが、資金調達において融資と出資の違いと留意点をはじめにしっかりと理解せずに資金を受けてしまうと、あとからは取り返せないような事態になってしまうかもしれません。
先輩との対話:友人が会社を設立したらしいのですが(フィクション)
後輩の友人の話
◎先輩、こんにちは。先日、大学時代の友人がサラリーマンから独立するってことで会社を新規設立した話を聞いてて驚いたことがありまして。
◆◆そうなんだ。それで何に驚いたの?
◎友人のビジネスは、初期投資がたくさん必要とか運転資金を相応に要するといった感じではない事業らしいんですけども、なぜかある筋から出資を受けるって話になっていまして。
◆◆へえ、それは穏やかではないね。ところでそのある筋ってのは何?
◎ある筋っていうのはイメージとしては主要取引先なんですけども、よく話を聞いてみれば取引をするにあたり出資を受けることが要件になっているわけではないってことでして。
◆◆それがなぜ出資を受けるって話につながるのさ?
出資を囁く甘いことば
◎要は、友人はその筋の人から、こう言われたらしいんですよ。
◆◆なるほど、怪しいにおいがぷんぷんするね・・・。
◎それでも、その友人は前向きに検討しますってことで真剣に考え始めていたので、全力で止めてきましたよ。
◆◆まあ、大切な友人ならやっかいごとに巻き込まれそうになっているのであれば全力で止めるべきだよね。
付け焼き刃の知識では対処できない
◎ええ。まず、その友人にも問題はあるのですが、ネットでちょっと調べただけらしいのですが出資の危なさが理解できていなかったんですよね。
◆◆なるほどね。独立したてで、甘い言葉をささやいて援助しますよっていう声かけになびく気持ちはわからんでもないけど、あぶないね。
◎そもそも出資を受けるにあたり、それが普通株なのか別の種類株なのかって話から理解をしていませんでしたし、出資割合はどうするのか、拒否権は渡すのかってきいてもあまりピンときていませんでしたからね。
◆◆それは困ったね。
◎さらに、出資の場合、後々の配当や剰余金の帰属の話をして、返済の義務はないけど代わりに成長した暁にはめっちゃ高くつく話をしても、そんな仕組みは知らないし聞いていないの一点張りでしたよ。
◆◆ええぇ!?
◎そして、出資を受けた後の毎期の報告義務や株主総会はどうするのかって聞いても、やはりそんな話は全く相手方から聞いていないってことで、私から毎期の定時株主総会が必要という話や計算書類を作らなければならない話をしてびっくりしていましたけどね。
相手方の目的は
◆◆そもそも、よくわからないんけどその相手は何が目的で出資しようとしているんだろうね?
◎その真の目的は友人もわからなかったので、私の推察ですが、おそらくは主要取引先として友人の会社につけたマージンを一定程度取り戻したいっていう観点と、仮に友人の事業が急拡大した際には大きなゲインが期待できますからね。
◆◆なるほどね。ベンチャーキャピタル的な発想+ランニングでもマージンを取り返したいってことか。抜け目がないなあ。
◎たぶんですけど。それにしても、世の中には悪い輩がいるもんですね。甘いことだけ言って、全貌を言わずに出資を受けさせようとするなんて。
◆◆まあ、嘘は言っていないからね。全部の事実を述べていないだけで。その辺りはやっぱり自衛するしかないんだろうね。
◎自衛って言っても、世の中の大部分の人は会社法も習いませんし、計算書類の作り方もほとんど理解していませんからね。
簿記と会社法を
◆◆個人的な感想だけど、スモールビジネスを立ち上げようという意気込みのある人は、その気合いのちょっとを簿記と会社法のキモの理解に回した方がいいと思うんだよね。別にM&Aバンカーになるほど理解せよとは思わないけど。
◎理想はそうなんですけども、事業を始めるってのは結構忙しいらしいですよ。そんな勉強をしてる余裕はなさそうです。
◆◆そりゃそうだよ。だから、その代わりに実際に立ち上げる以前の話として、事前準備のひとつに簿記と会社法をやるべきって話さ。
さいごに
ハンマーしか持っていないと全ての問題が釘に見えるという話もありますから、ビジネス立ち上げに簿記と会社法が必要かどうかは議論の余地はあるのでしょう。
けれども、個人的には必須だと思いますし、その知識なくしてもいつかは足をすくわれてしまうのではと危惧しています。