週刊M&Aバンカー第22号:DCF法の残存価値算出時のDAとCAPEXの前提はどう置くべきか

週刊M&Aバンカー
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寒い日々が続きますが、冬至を越えましたね。

とはいえ、実は冬至を過ぎても日の出の時刻は引き続き遅くなっているらしく、どうやら地球の軌道が楕円であることと冬が太陽からの距離としては近いことに起因するみたいです。

ちなみに、太陽からの距離は夏より冬の方が近いのに冬の方が寒いのはなぜかと思ったことがあります。普通に考えれば熱源に近い時の方が暖かそうに思いますよね。どうやら、その理由は単位面積あたりに注ぐ太陽エネルギーの量の違いによって説明ができるらしいです(ご参考)。

さて、今週の週刊M&Aバンカーは、

【M&A講座】DCF法の残存価値算出時のDAとCAPEXの前提はどう置くべきか

です。

【M&A講座】DCF法の残存価値算出時のDAとCAPEXの前提はどう置くべきか

今回は久しぶりに数字面の話

DCF法はアートと言われることが多いですが、特に残存価値は算定者の前提の置き方次第では相当に金額が変動します。さらにいえば、計画期間中の価値と残存価値との割合が8割方残存価値で企業価値を占めているよねなんてこともありますので、その設定方針は十分に検討するべきでしょう。

大原則:最終期のDAとCAPEXは見合い(同額)とする

まず最初におさらいですが、残存価値算出時の減価償却費(DA)と設備投資(CAPEX)の金額は見合いの金額とするのが原則です。要は、減価償却した分だけ設備投資をして、償却資産残高を一定に保ちましょうねということです。

実務上は永久成長率の変動に伴い、設備投資額に補正を入れるという考え方もあるようですが、この記事ではシンプルに「DA=CAPEX」として話を進めます。

DAとCAPEXの金額はいくらにすればいいのか

DAとCAPEXの金額を同額にすれば良いということが理解したとして、その金額そのものはどういう設定をすべきでしょうか。パターンとしては、

  • 計画期間最終期のDAの金額と合わせる
  • 計画期間最終期のCAPEXの金額と合わせる
  • 計画期間最終期のDAやCAPEXとは異なる金額で設定する
    • 定常的な設備投資額をヒアリングしてその金額に合わせる
    • 算定者が独自に分析して依頼者と協議して任意の金額を設定する

という3つの考え方があるでしょう。

(1)計画期間最終期のDAの金額と合わせる

基本的には最終期のDAと合わせるという考え方が合理的だと思います。
残存価値の前提として、売上高やEBITDAは計画期間最終期の金額が継続するという仮定を置くと思いますので、計画期間最終期の償却資産残高(ビジネスモデルの主要素のひとつ)を保つという観点からこの前提を置くことになります。
ただし、後述しますがなんとかの一つ覚え的に「最終期のDAに合わせる」と思っていると足をすくわれる可能性もあります。

(2)計画期間最終期のCAPEXの金額と合わせる

他方で、最終期のCAPEXの金額と合わせるということはほぼ採られないと思います。
理由としては、CAPEXの金額は事業計画策定者が任意で決めるため、最終期の設備投資額が平準的な金額であることは稀だからです。
数字的に言えば、最終期において、DA<CAPEXであった場合は残存価値算出のためのFCFが過少になり、逆に最終期のDA>CAPEXであれば同FCFが過大になるおそれがあります。

(3)計画期間最終期のDAやCAPEXとは異なる金額で設定する

最後に最終期のDAやCAPEXとは異なる金額とするという案もあり得ますが、この方法を採用するならば相当程度留意が必要です。

たとえば、事業計画策定者へ「貴社における定常的な設備投資額はいくらくらいですかね?」とヒアリングしてその回答額を採用するという考え方があります。一見合理的な手続きですし、相手方からの情報なのでそれを採用しても良さそうですが、実務上は敢えて過少の金額を回答されているかもしれませんし、もしかしたらあまり深い分析をせずに直感的に回答されているかもしれません。
特に、計画期間中のDAやCAPEXと大きく異なる水準の金額感で回答された場合にはその金額の合理性はしっかりと検証する必要があります。

また、DCF法の算定者が独自に分析して依頼者と協議して任意の金額を設置するという案もありえます。そんな”鉛筆なめなめ”なんてしてはならないと思われるかもしれませんが、意外とこの方法を取るべきケースも多いです。

最終期のDAを残存価値のDAとCAPEXとしてはならないケースとは

結論から述べれば、過去に償却資産の減損を実施している場合、計画期間のDAが過少に計上されている可能性がありますので、その場合はその減損してしまった分を考慮して、減損未実施状態での毎期の要償却額を推計し、それを残存価値算出時のDAとする必要があります。

極端な例をあげれば、算定基準日に取得原価100億円の償却資産(10年定額償却)を設備投資して同時に全額減損していたケースを想定し、計画期間3年間の設備投資額(資本的支出)はゼロと計画した場合において、残存価値のDA=0と仮定することの不合理さを鑑みれば減損がある場合にしっかりと留意すべきであることわかるかと思います。

さいごに

今年は後半から週刊で記事をあげるという新しい試みをしてみました。
書かない日々が続けば書かないことが自然になり、書くことを課すと、書かないことが気持ち悪い状態になるという不思議な感覚です。
ということで、来年も引き続き当サイトをよろしくお願い致します。

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