週刊M&Aバンカー第24号:何年経てばジュニアワークから卒業できますか?

週刊M&Aバンカー
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年明け早々最強寒気とやらで日本全国軒並み氷点下ですね。

来週には寒さがやわらぐようなのでそれが待ち遠しいです。

さて、今回は、

【M&Aとキャリア】何年経てばジュニアワークから卒業できますか?

をお題として考えてみます。

【M&Aとキャリア】何年経てばジュニアワークから卒業できますか?

時々やる気のある若手や、同じく希望に満ちた若い転職希望者から、

入社後どのくらいの経験を積めばジュニアワークから卒業してプレゼンターや交渉者になれるのでしょうか?

という質問をいただきます。

結論というか傾向

大雑把な傾向

まず大雑把な言い方となりますが、どのくらいの経験があれば前面に出てしゃべれるようになるかというのは、

  • 所属ファームのカルチャー
  • 新卒採用 or 中途採用
  • 案件の規模
  • 案件の関与メンバーの状況
  • プロマネの資質・判断
  • その人のキャラクター・能力

といった複合要素が絡み合って決まるものと思います。

要はケースバイケース(ひとによる)

ざっくり言えば、新卒で早ければ3年目くらいから徐々にしゃべりに参画するメンバーもいますし、FA業務未経験中途採用者でも半年位経てば前面に出るケースもあります。

一方で、新卒の23歳の年次で入社して30歳になっても前面に出せないケースもあれば、中途採用後に35歳を超えてもエクセルワークばかりしているケースもないわけではないです。

所感としての傾向

傾向としては、規模がそんなに大きくなくて進めるための諸条件が比較的緩めの案件であれば、能力あるジュニアを積極的に前に出してみようかと思っているシニア層は一定数いるかなという印象です(それは自社のみならず他社の状況を見ても同様のようです)。

原則としてFA業務はチーム戦

ところで、世の中の仕事には個人プレイの仕事もありますが、FA業務はチーム戦(チームワーク)です。

要は、MD(D)、VP、AS、ANという明確な職階差があり、各段階のメンバーがどんな仕事をするのか一定の枠組みがあります。

簡単に言えば、AS、ANはエクセル・パワポで資料を作りつつDD(デュー・ディリジェンス)の調整をこなし、VP以上は比較的ハイレベルなイシューを顧客・相手方FAと協議するというものです(上の方は案件取ってくるという話は今回は置いておきます)。

なので、基本的には、初期ASやAN段階でバリバリ交渉をしようと思ってもその機会はほとんどないはずで、VP手前のASになってようやく「ちょっと案件回してみるかね?」という感じになることが多いでしょう。

ただし、そのようなASもANの作成したエクセルのレビューやパワポ作りがなくなるわけではないので、通常のジュニアワークに加えて案件をコントロールする仕事も増える、すなわちやること倍増になるわけです。

それでもやってみたいという気合の入ったメンバーであれば一定程度任せてみるのもありかなとは思います。個人的には、そのメンバーに経験と能力があるなら、ASでも前面に立って案件を回していってもらって構わないかなと思ってはいるのですが、最近はそのような気概と能力を持つ若手がこの業界にかつてほどは来なくなっているような気もします(寂しいですね)。

どうすれば上手く案件をさばけるようになるか 〜才能x経験〜

いま現役でバリバリやっているD/VPの人たちもかつては前面に立つはじめてのデビュー戦があり、その後様々な経験を経てきたわけです。なので、遅かれ早かれ、いまのジュニアの方もどこか適切なタイミング・状況で前面に立ちはじめることになります。

その際に、わずかな経験でもうまく前面に立ってまわしていけるようになるひともいれば、何年やっても上のサポートがないと独り立ちできないひともいます。

才能というか向き不向きはある

残酷な事実かもしれませんが、適材適所という原則はこの仕事にも当てはまり、一定程度の才能があるというか向いているひととそうではないひとが存在します。

いい仕事をするひとが、みんながみんな金太郎飴の如く同じようなFAのスタイルということではなく、各人の資質を引き出すようないい動き方ができている人は上手にハマってくれる印象です。

おそらくは、この自分なりのスタイルというものを確立できるかどうか(それをみつけられるかどうか)というのが、この道でやっていけるかどうかを分ける要素の一つなのだと思います。

そして、やはり経験がものをいう

一定の才能というか、向いている資質を持っていても、それだけで良いFAになれるわけではありません。この仕事はかなり専門性が高いというか、やったことがあるかないかでもっている知見が大きく異なります。

たとえば、経営統合案件をやったことがなく、単純な株式譲渡案件だけしかやったことがない場合、普通は組織再編に係る法令・規制の細かいところまで熟知できているわけがありません。そんなんではまともな助言はできませんから、やはり、いろいろな類型の案件に関与していくことがFAの仕事の幅を広げるためには重要だといえます。

この辺は、ある程度は組織力といいますか、案件メンバー繰り次第でカバーできる側面はありますが、チームリーダーがそのタイプの案件はやったことがないなんてFAにはクライアント側も頼みたくないでしょう。

(ゆえに、案件のビューディーコンテストなんかでは、類似案件の経験豊富なメンバーをアサインしますよという主張を各社とも繰り広げるわけです)

さいごに

ジュニアの方はいきなり株式譲渡契約書の交渉の最前線に投入されることはないかもしれませんが、たとえば、DDのセッション調整とかQ&Aシートのやり取りとかで発生する一定の「協議・交渉」というものもあります。この辺りの一見つまらなくどうでも良さそうなやり取りに真摯に取り組んで、協議・交渉における自分の強み・弱み(スタイル)を見出していくということが実は後々とても大事になってくるような気がします。

要はまずは局地戦をしっかりと戦っていき、いつかは本丸のSPA交渉とか価格交渉を最前面でさばけるような人材に育っていくのが、王道なのだろうなと思うところです。

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