週刊M&Aバンカー第34号:議論・交渉では相手を論破しないよう気をつけたい

週刊M&Aバンカー
この記事は約6分で読めます。

今日は春分の日です。感覚としても日の出が6時前になってくると、朝、窓の外が明るくなるのが早くなったなと感じるようになりますね。目が覚めたらさっさと起床したいところですが、なかなかどうしてです。

さて、今週は、

【仕事術】議論・交渉では相手を論破しないよう気をつけたい

です。

【仕事術】議論・交渉では相手を論破しないよう気をつけたい

M&AアドバイザリーのFA業務は様々な場面で議論や交渉が発生し、社内外の方々と議論することばかりです。

他の仕事や、プライベートでも相手と話し合う場面というのは数多くあるはずで、社会生活というのはいわゆる議論・交渉と切り離すことはなかなか難しいのかもしれません。

そのような際に、ガチガチのロジックで固めて相手を論破して自分たちの意見を通すべきなのか、それとも自分たちと相手方との双方の主張を鑑みて、”三方よし”の解決策を導くのかはケースバイケースです。

ただ、傾向としては相手を論破せず三方よし、といいますか少なくとも互いに”それでやむなし”と思えるような方策を編み出す方が良いのではないかと思うことが多いので、今日は、そんな話をしてみようと思います。

なぜ相手を論破しない方がいいのか

1. 議論の目的が相手を屈服させることにすり替わりやすいから

個人的な経験談ですが、かつて自分がジュニアの時代、交渉というものは徹底的に論破し、できる限り相手の意見を潰し当方側の主張を相手を通すことだと思っていたこともありました(そういう上司や相手方FAが結構多く居たような・・・)。

そのような場面では、強い言葉を使って相手を威圧し、それぞれの常識を振りかざし相手方の主張の欠点を指摘したり、ときには揚げ足を取り、はたまた言った言わない論争を繰り広げるという具合で、明らかに戦場のような雰囲気のときもあったように記憶しています。

議論の当初は「クライアントのため」としてロジカルな主張をしていたのに、いつの間にか相手方FAを屈服させ、誤りを認めさせることが心情的には最優先になっていたこともあったのかもしれません。

2. 言い争っても相手は余計に頑なになる

相手から何かを咎められたときに

「はいそうですね、すみません、そちらの希望通りにします」

と簡単に認めることは、その関係性が上司・部下のような垂直な命令系統ではあり得ると思いますが、交渉相手のような水平の間柄においてはあまりないと思います。

普通は、攻められれば、逆にこちらも攻め返すぞということで、言い争いがエスカレートすればするほど、互いに頑なになり相手方の意見を取り入れようなんていう気にはならなくなりがちです。

イメージとしては、「北風と太陽」の北風で相手を吹きつけ続け、なんとかして屈服させるようなものです・・・。

3. 不毛で疲れる

相手を屈服させるように、互いに頑なな主張を続ける結果、当然ながら双方とも、とても疲れます。

議論を尽くしてもあまり良い解決策が出て来ず、不毛な議論だったと思うこともあるでしょう。

相手を論破しようとしても、骨折り損のくたびれ儲けなわけです。

相手を論破しないための具体的な工夫

ここからは、交渉や議論において、相手を論破しないための具体的な工夫としてどのようなものがあるか見ていきます。

1. 言い切らず疑問系や穏やかな語尾で提示する

まず、何かを主張するときには強い言葉で言い切らずに疑問系や語尾を穏やかにして提示してみるのが良いと思います(まさに、「良いと思います」というのが穏やかな提示ですね)。

たとえば、次のような言い方がいいかもしれません。

「・・・と思いますが、いかがでしょうか。もし、考え方に齟齬や抜け漏れがあったら教えてください。」
「・・・という前提で考えているのですが、前提が異なるということはないでしょうか。」

言い切らないことの利点については、以前次の記事でいろいろ考えてみたので、ぜひ読んでみてください。

(参考記事)

相手に何かを伝えるときに守るべき最優先のルール 〜余白のある伝え方をしよう〜
以前、どうすれば相手の間違いを適切に指摘できるのかについて具体的な実例も交えて書いてみました。 他方で、もう少し抽象的な観点で、どんなコミュニケーションであっても優先的に守るべきルールがあるようにも感じております。 とこ...

2. 意見が一致しているところ、共通項を探して、仲間意識を刺激する

類似性の法則というものがあるように、相手と共通点があったり、仲間的なスタンスで臨まれると、親近感を抱きやすいみたいです。

たとえば、交渉の場面でも、

お互い(自社のクライアントファーストで貢献しなければならず、そこには当然利害対立がある)立場がありますが、クライアントのために尽力するというスタンスはお互い一緒ですよね
お互い立場がありますが、この案件を成功させたい気持ちは一緒です

お互い立場がありますが、双方で精一杯真摯に交渉すべきという点では同様です

といった具合に、心情的に相手方と同じ部分を強調することで、

「相手は敵ではないかもしれない」

という認識を相手に持ってもらえて、意見交換がスムーズに行きやすくなるという側面が期待できるとはずです。

3.  相手の懸念に寄り添う

こちらが穏やか・冷静に対応していても、相手が強い対応をしてくる場面もあり得ます。

そのような場面で、こちら側が慌て始めるとせっかくいい雰囲気だったのが一変してしまうかもしれません。

もし、相手が何らかの懸念を持っていて、それを示唆・主張してきた場合には、まずは、

ご心配をおかけしていることは認識しております
ご懸念点はごもっともです

という感じで、相手方が懸念している事項につき、ちゃんと気持ちも含めてわかりますよということを伝えるのが良いと思います。先程の「言い切らない」と「共通点を探す」を組み合わせて、

・・・という論点につき、貴社にてご懸念があるかもしれないということは、私どもも拝察しているところです。とはいえ、互いにこの案件を上手く成功させたいという気持ちは一緒だと思いますので、まずは、・・・という形ですすめられれば、貴社のご心配もいくばくかは解消されるかもしれないと考えておりますが、いかがでしょうか。もし認識に誤りなどがあったら教えてください。

という具合に、述べてみると、案外相手も冷静さを取り戻して、引き続き互いに良い解決策を検討できるかもしれません。

さいごに

相手を論破せずに、互いにとってより良い解決策を見出していきましょうということを最前面に押し出して協議・交渉を進めていくと、話の流れが、

「(自分) ⇄ (相手)」というキャッチボール的なやりとりから、

「(自分)→ ↑ ←(相手)」

という具合に、一緒にアイディアを昇華していきましょうという形に変わっていくこともあります。

そうなると、楽に双方で合理的だと思える進め方に落ち着けるので、互いに気分もいいし、相手に構えられなのので、余計な工数も削減できます。

また、相手方と良好な関係であれば、以前も別の記事で述べたように、互いの立場を守った上での「情報共有・FA間コミュニケーション」がスムーズできるかもしれないという副産物も生まれるかもしれません。

いずれにせよ、議論においては、

負けなければ、勝ち切る必要はないかもしれない

という気持ちで臨むのがよいかもしれません。

error:Content is protected !!