日が沈むのがだいぶ早くなってきて、本格的な秋を感じるところです。
さて、今週は、
です。以前仕事術でまとめた記事を適宜追加修正しております。
(いつもの先輩・後輩の対話で進めていきます。文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です。)
【仕事術】言いたいことを全部言うことが正解とは限らない
プロセス論にあまり興味を示さなかったクライアントですが
◎先輩、こんにちは。今日は新規で売手のFAとして起用されることとなったクライアントを訪問して今後のプロセスの進め方について話をしてきたのですが。
◆◆そうなんだ?
◎ただ、そのクライアントの反応がいまいちだったんですよね。
◆◆どういうこと?
◎状況としては、
- 売却プロセスの全体像
- 入札形式と相対形式の違い
なんかを丁寧に説明したんです。でも、お客様の顔を見るにいまいちピンときてない感じだったんです。
◆◆もしかするとそのお客様は
ということに興味があったのかもしれないね。
◎あれ、そういうものですか?
法規制や手法論を論ずるのが正しいとは限らない
◆◆M&Aの経験がそれなりにあるクライアントの担当者であれば法規制や手法論についても興味を示すのかもしれないけど、「はじめてM&Aをやります!」というクライアントの場合、相手の属性にもよるけど、一般的には手法論を話しても”ちんぷんかんぷん”になってしまうのだろうね。
◎たしかにそのクライアントはM&Aの経験がほとんどないですね。
◆◆我々のようなM&Aアドバイザリー業務ばかりやっている人間は、法規制や手法論を詳しく論じたくなるし、そうすることが付加価値だろうと錯覚しがちなんだけど、必ずしもそうとは限らないんだよね。
◎そうなのですか。
◆◆誤解を恐れずに言えば「はじめてM&Aをやります!」というクライアントは、売却想定額がどの程度なのかとか、どんな取引相手が存在しそうかという点に興味・関心の大部分が置かれるんだろうね。
◎なるほど。
◆◆要は、売却のために必要な法規制や手法論がそもそも論点になり得るという心構えになっていないんだと思うんだよね。
◎話を理解するための準備ができていないということでしょうか。
相手の理解度に応じて話題は変えていこう
◆◆そんな感じだね。売却プロセスの入札形式がああだこうだとか、デュー・ディリジェンスは大変ですよ、とかそういうのは売却プロセスの経験があればわかるだろうけど、何もかもがはじめての会社に「かくかくしかじかで」と言っても消化不良になるだけだよね。
◎たしかに消化不良ですという顔をしてましたね。
◆◆売却案件に着手するに際してもクライアントの経験値に応じてどんな話をすべきかを変えていく必要があるんだよね。「買手候補は誰か?」というのはすごくわかりやすいし、誰しもが興味を持つところなので、はじめてのクライアントでもたぶん食い付きが良くなると思うよ。
◎ 次回訪問するときにはそのあたりの話を重点的に触れるようにしてみます。
話題を10個用意したとしてそのうち3個でも伝えられれば十分かもしれない
◆◆本来的には初回の訪問時から論点は網羅的に持っていっておいて、クライアントの反応をみながらどこまでを伝えてくるかを変えるという進め方が良かったのかもね。
◎・・・厳しいですが、そのとおりかもしれません。
◆◆我々の仕事は、伝えるべきことはしっかりと伝えるというのが原則なんだけど、その伝え方というか、いつ誰にどのように伝えるのかということについてはいろいろと工夫の余地があるからね。
◎マテリアルは網羅的に作って持参しておき、相手の反応をみながら重点を置くポイントを変えるというのが良いのですね。
◆◆そうだね。クライアントとの話の進め方はケースバイケースで対応しないとならないよね。話題を10個用意して、そのうちの3個でも適切に伝えられれば、その訪問は上手くいったと思えるというイメージかな。
◎なるほど。
ただし、紙面においてコメントをしているという証跡は残すべき
◆◆ただ、繰り返しだけど話題を10個用意すべきなのであれば、紙面上(資料上)は網羅的に10個の論点についてしっかりと整理しておく必要があるよね。
◎そういうもんですか?
◆◆クライアント社内において紙面(資料)だけ回覧されて、わかっている担当者が見たとき、
「なんだこのスカスカの資料は、このFAは大丈夫か?」
と思われてしまっては得策ではないからね。
◎たしかに、クライアントの全員が素人というわけではないかもしれませんね。
◆◆そういうこと。わかっている人が読み込めばちゃんと痒いところに手が届く資料になっているという前提でありつつも、こちらが言いたいことをその場では絞って相手に消化不良を起こさせないというのがうまいプレゼンターと言えるよね。
◎わかりました。次回の資料作りから気をつけて参ります。