週刊M&Aバンカー第49号:先輩と後輩のコーヒーブレイク(3)

週刊M&Aバンカー
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M&Aの成功と失敗について見聞きすることがしばしばあります。また、同様の論点をお客様から聞かれることもあります。

何を以て成功と定義づけるかはさておき財務的な観点で述べるとするならば、高値掴みをすると大抵上手くいかない、ということでしょうか。

また、高値掴みを避けるべくレッドオーシャンで戦わないという戦略もあるようです。

いずれにせよ、各位が色々知恵を絞っているのがよくわかって興味深いですね。

さて、今週は、

【M&Aとキャリア】先輩と後輩のコーヒーブレイク(3)

という名の雑談その3です。

(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)

【M&Aとキャリア】先輩と後輩のコーヒーブレイク(3)

M&Aディールにおいて話の通じない相手が存在するとき

◎先輩、こんにちは。いま関与している株式譲渡案件でちょっと辟易しておりまして。

◆◆どうしたの?

◎相手方のメンバーの中に、話が通じない人が居るんですよ。そしてその人が意思決定に与える影響力が大きいのです。

◆◆オーナー社長とかそういう系?

◎いえ、オーナー社長のアドバイザー的な位置付けの人ですね。何やら社長が昔お世話になった方だか何かで、M&Aに限らずその会社の重要案件においてはいつも関与する「アドバイザー」らしいです。

◆◆その人はFAではないんだよね?

◎FAじゃないです。相手方FAはまっとうな証券会社のディールチームが起用されてるのですが、彼らもその「アドバイザーさん」の扱いに困惑しているみたいでして。

◆◆ふうむ。全く同じってわけじゃないけど、過去に似たような境遇に陥った案件に関与したことがあるよ。

◎そうなんですね、先輩ならどうするか教えてもらえますか?

1. 相手方の話の通じる人に向けて話す

◆◆まずはじめにとるべき対策は、相手方の話の通じる人、今回であれば相手方FAにちゃんと仕切ってもらうように依頼することかな。

◎もちろんそれはやっておりますね。

◆◆それはそうだろうね。

◎でも、相手方オーナー社長はFAよりもその「アドバイザーさん」の意向を重要視するようなのでFAも困惑しているんですよ。

◆◆そういう”構造”になっていたとしても、相手方FAとしてはディールがうまくクローズしないとタダ働きみたいなもんだろうから、そこは上手く立ち回ってもらうしかないね。場合によってはこちら側のクライアントの意向として

「うちのクライアントも普段から多方面の付き合いのある貴社の立ち回りには期待するところがあるらしいですよ」

的に、激励の言葉を投げかけるのもアリかもね。

◎それ、うちの会社も逆に言われたりしますね。ディールチームとしては「そこはウォールがありますから」と言い返したいですが、そうもいかないのが大人の事情です。

◆◆ちなみに、君もふくめた当方側のディールメンバーはそのアドバイザーさんと直接対峙することもあるの?

◎ええ、交渉の局面ではその人も参加することが多いですからね。M&Aに詳しいわけではないのに、なぜか交渉の局面でも影響力を行使してくるんですよ。

2. 質問からの誘導で望ましい結論に至ってもらう(自ら思ったと錯覚していただく)

◆◆だとすると、相手方FAに頑張ってもらうという対策の次に有効なのは、そのアドバイザーさんにひたすら質問をして話をとことんしてもらうことかな。

◎要は、「詰める」ってことですよね、先輩のお得意の。

◆◆いやいや、普段から詰めているつもりはないんだけども。それはさておき、そのアドバイザーさんに対して多面的に質問をして、なぜそのような発言をするのかの意図・真意を確認していくことが大事だよね。

◎質問しつつ上手く誘導することで、その人に「自らとしてその望ましい結論を思いついた」と錯覚してもらうことが大事ってやつですよね。

◆◆うん、そういうこと。

◎実は相手方FAもその辺は頑張っていて、そのアドバイザーさんがまっとうな発言をするように上手く誘導しながら話をしているみたいなんですけど、その人が「感情的になる」傾向があるんですよ。

◆◆それはお気の毒だ。つまり質問を投げ掛けても「聞く耳を持たない」感じなのか。

◎ある程度は会話になるのですが、途中からは、「私がこういうのだから、それが正しい、あなたはおかしい」の一点張りですよ。

3. どうあがいてもダメな場合は・・・

◆◆だとすると、最後の手としてはこちら側も最後通牒をするってことだろうね。

「そちらのアドバイザーの主張の”この部分”は明らかにおかしいので、貴社として真っ当な判断をお願いします」

と当方側のクライアントの名で直接投げかけざるを得ないだろうよ。

◎まあ、最後はそうなりますよね。

◆◆相手方がそのディールをどこまでやる気があるか次第ではあるんだけども、ある意味でのこちら側の「静かなる怒り」を伝えることで事態が好転することもあるかなと思うよ。

◎今回のディールは相手方としても千載一遇のチャンスのはずなので、多少強めに申し出てもいきなりブレイクとはならないと思いますので使えるかもです。

◆◆望ましいのはそのアドバイザーさんの顔を立てつつ進めていくことなんだろうけども、どうしようもないときにはそこを切りにいくことも必要になるんだろうね。もちろん、ちゃんと外堀を埋めるというか、相手方FAや相手方事務局にも同調してもらうことが重要だけど。

◎わかりました。ありがとうございます。

さいごに

謎の外部アドバイザーのみならず、場合によっては専門家各位が案件の混乱を招くこともあったりするのがM&Aの難しいところです。

不慣れな専門家ほど、謎理論を繰り出してきたりしますし、かといってプライドは超一流ですのでなかなか無碍にもできなかったりします。

それでも、当方側のクライアントのためには嫌われ役となるのを承知で刀を抜くときもあるのがFAの辛いところです。

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