週刊M&Aバンカー第62号:案件公表後も気が抜けない時代に

週刊M&Aバンカー
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9月は珍しく残暑が厳しかったですが朝晩は涼しくなりましたね。10月に入ってからはようやく過ごしやすくなりそうです、、、そう、もう10月なんですよ。1年はあっという間です。

さて、今週は、

【M&A講座】案件公表後も気が抜けない時代に

です。

(いつもの先輩・後輩の対話で進めていきます。文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です。)

【M&A講座】案件公表後も気が抜けない時代に

案件公表後に物言いがつくケースが増えてきたと感じている後輩ですが

◎先輩、昨今はTOBとか経営統合とか案件公表後に物言いがつく案件が増えつつありますね。

◆◆そうだね。かつてから”ものいう株主”も存在はしていたものの、どちらかと言うと世間的にも煙たがられていた少数派だった印象なんだ。だけど、最近はものいう株主が正しいことを言う限りは世間的な有力どころもそれに沿うような動きもあったりするからね。

◎ですよね。我々のようなM&Aのアドバイスをする仕事を生業としていると、どうしてもクライアント目線といいますか、そういうものいう株主を「対策すべき対象」として考えてしまいますよね。

◆◆まあ、そういう側面はあるね。

ものいう株主とどう対峙するか

◎声の大きい「ものいう株主」といっても、多くの固有名詞が挙げられるじゃないですか。

◆◆そうだね。アクティビストといわれる人たちから、アクティビストまではいかないものの活発に動く株主もいたりして、ちょっと混沌としているよね。

◎ものいう株主とFAって直接対峙することはあるんでしょうかね?

◆◆M&A案件が絡むという前提で考えたとしても、基本的にFAや弁護士(LA)といった人たちは初動としては前に出ない方が良いと考えられているよね。

◎なるほど。そうすると直接対峙するのは当面はクライアント自身ということになるわけですか。

◆◆そうなるね。クライアントのIR担当だったり、場合によってはもっと上のマネジメント層が対応するケースもあるね。

◎素朴な疑問なんですが、クライアントからすれば「高いFeeを払ってFAを起用しているんだから、ものいう株主とも直接やりとりして欲しい」とならないんですかね?

◆◆クライアントから強い要望があれば前面に出ることもあるんだけど、どちらかというと状況を穏便に進めるためには、相当話が混み入らないかぎりFAやLAを前に出さない方が良いですよとアドバイスするかな。

◎なぜですか?

◆◆FAやLAって専門家でしょ?相手方の株主もそういう専門家が出てくると構えるわけだよね。ましてや、株主としては別に喧嘩するつもりで会社とやりとりしていたわけじゃないのに、会社から構えて布陣を整えられたとしたら、最初に拳を振り上げたのは会社側だという流れを作るきっかけになったりもするからね。

◎ちょっとイメージがつきました。たしかにFAやLAがしゃしゃり出ていくと「戦闘モード」だと認識されやすいかもですからね。

案件公表後に想定外の事態が起きないように

どういう会社が危ないか

◎それで、このような時代ですから案件公表前に、公表後に想定外に株主から物言いがついたり、予期せぬ株主が株を買い集めたりというケースに備えて、シナリオは考えておくべきなんでしょうね。

◆◆そうだね。特にPBR1を相応に割っている案件は結構リスクが高いから公表後に起きそうな様々なケースを想定して、その対策も練っておく必要があるかな。

◎本来的には純資産に大きな意味はないのかもしれませんが、市場は株価純資産倍率を見ますからね。

◆◆そうだね。あとは、余剰キャッシュが多いとかEV/EBITDAで見ても低倍率だと目立つよね。

◎要は割安っぽい会社の場合には気をつけよってことですかね。

◆◆まあ、割安でも安定株主がいる場合にはそんなに揉めるケースはないんだけど株主がバラけている場合は要注意だね。

どんなケースに備えるべきか

◎シナリオとして、どんなケースに備えるべきなんですかね?

◆◆案件ごとにケースバイケースだけども、たとえばTOBであれば、

  • 対抗TOBがかけられる可能性はないか
  • 公表後にアクティビストが買い集めをする”メリット”はないか
  • 現状のTOB価格では不十分となった場合に価格を上げる余地はあるか
  • そもそも案件として大義があるか、それをしっかりと世間にアピールできるか

といった要素を検討しておくことは基本だよね。

◎いきなり対抗TOBをかけては来ずとも、買い集めされるケースというのはないわけではないですからね。

◆◆そうそう、TOB公表後にTOB価格を超えて市場株価が推移してしまった場合には相当な注意が必要だからね。

◎あと、「大義があるか」っていうのも面白い着眼点ですね。

◆◆もちろん、どんな案件も大義があるから検討・実行されるわけではあるんだけども、株主を含めたステークホルダーの納得感という意味で、多くの人に幅広く認められる大義があった方がいいよね。

◎「それってちょっと無理筋じゃないですか?」という目的を掲げざるを得ないケースもあったりしますからね。

◆◆そうなんだよね。特に大義とは異なる”別の目的”が見え隠れしてしまうと危ないよね。

◎FAとしてはその辺りも含めてしっかりとサポートしていく必要がありそうですね。

◆◆うん、この辺りのセンスは単純な株式譲渡案件ばかりやっていても身に付かないから、TOBや経営統合等の上場会社案件をしっかりと経験していくことが大事かな。

◎できればジュニアの時代からそういうタイプの案件にも関与していきたいですね。

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