今週も引き続き、関西スーパーマーケット(以下、「関西スーパー」)について感じたことを書いてみます。
(いつもの先輩・後輩の対話で進めていきます。文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です。)
関西スーパーマーケットに係る雑記(つづき)
引き続き動きのある関西スーパー案件
◎先輩、今週も関西スーパーの案件は動きがありましたね。
◆◆FAQ(第3回)が開示されたね。
◎ええ、早速読んでみましたよ。
(参考情報)H2O リテイリング グループとの経営統合に関する FAQ(第 3 回)の開示に関するお知らせ
◆◆伊藤忠食品による質問状への直接的な回答ではないけれども、オーケーのプレスに紐づけて回答がなされているね。
◎ええ、今回のNo.3ですね。
【関西スーパーFAQ(第3回)No.3】
オーケーは、2021 年 10 月 19 日付「(Q&A)反対株主の株式買取請求権に関するQ&A」と題するプレスリリースにおいて、株式交換等に反対した株主が株式買取請求権を行使した際に、「2,250 円を上回る価格が関西スーパー様から提示されることが自然」と記載されていますが、これは正しいのでしょうか。
オーケー側の開示
◆◆これについては、まずそもそものオーケー側の「(Q&A)反対株主の株式買取請求権に関するQ&A」と題するプレスを見ておいた方がいいよね。そのQ4を抜粋してみよう。
【オーケー:(Q&A)反対株主の株式買取請求権に関するQ&A(注:アンダーラインは当サイトによる)】
Q4 反対株主の株式買取請求権を行使した場合、いくらで買ってくれるのですか?現在の株価より高い価格になりますか?
A4 会社法上、買取価格は「公正な価格」と定められています。株式交換等の組織再編がシナジーの発生により企業価値の増加をもたらす場合には、反対株主に対して増加した企業価値の公正な分配も行われるような価格だと解されています。
関西スーパー様は、H2O リテイリンググループとの経営統合に関する開示において、 シナジーを考慮しなくても関西スーパー様の一株あたりの理論株価は 2,250 円を上回り得るとし、この価格を大きく上回るレンジの理論株価を提示されています。それに 加え、シナジーがある旨開示されています。これらを前提にすると、「公正な価格」と して 2,250 円を上回る価格が関西スーパー様から提示される(少なくとも以下で述べ る協議の場で関西スーパー様から提示される)ことが自然なようにも思われますが、関西スーパー様がどのように対応されるかは分かりません。また、2021 年 10 月 12 日 に関西スーパー様株主である伊藤忠食品株式会社より関西スーパー様宛に送付したご 質問書が公表されており、そのご質問書の中で買取価格に関して「公正な価格はオーケー株式会社様が公開買付価格として提案されている 2,250 円を下回ることはないという理解でよろしいでしょうか」と質問がなされております。その後、2021 年 10 月 15 日付けで関西スーパー様が開示された「H2O リテイリング・グループとの経営統合に関する FAQ(第 2 回)」Q9 の回答では、買取価格は「公正な価格」とするという会社法上の定めを説明するに留まっており、買取価格の具体的な価格や算定方法は一切示 されていません。
株式交換(第 1 号議案)に係る株式買取請求権を行使した場合、本年 12 月中に関西スーパー様と協議し、協議がまとまらない場合には来年 1 月末までに裁判所に対して価格決定の申立てを行うことになります。かかる手続の中で価格が決定されます。
◎いずれかの肩を持つわけじゃないですけれども、オーケーは「2,250円を上回るのが自然」と言い切っているわけじゃない点は配慮していると感じますけどね。他方で、関西スーパーはオーケーの主張を部分的に切り取っていてちょっとどうなのかなと思いますが。
◆◆まあ、その点はいろいろな見方があるかもだけど、ポイントは今回の関西スーパーの回答そのものだからそっちをみてみようか。FAQ(第3回)No.3の回答を抜粋してみようか。
改めて関西スーパーのFAQ(第3回)No.3 回答
【関西スーパーFAQ(第3回)No.3 回答(注:アンダーラインは当サイトによる)】
その説明には不正確なところがあります。 株式交換等に反対した株主様において買取請求権を行使された場合、当社が提示する買取価格は、株式交換等にご賛同いただき、引き続き当社株式を保有し続ける当社の株主様の利益をも勘案した上、買取請求時の状況に照らして当社が公正と判断する価格となります。オーケーが一方的に提案している条件付の公開買付けの価格に拘束されるものではありませんし、当社において当該価格に合わせてご提案する予定もございません。 また、反対株主の皆様との協議が整わない場合には、裁判所により最終的に公正な価格が決定されることになりますが、その場合であっても、オーケーが主張するような価格になる保証は全く存しないことにご注意ください。
オーケーの Q&A は、株式交換等に反対をすれば、あたかも当社が 2,250 円を上回る価格提示をするかのような誤解を株主の皆様に与えることにより、株式交換等に反対するよう株主の皆様を誘導するものであると当社は考えており、極めて不適切なものです。以上のとおり、オーケーの Q&A は、極めてミスリーディングな内容ですので、株主様におかれてはくれぐれもご注意ください。
◎うーん、正直言って「理論価値」はどこへいったんだ?って感じですね。関西スーパーのいう理論価値はDCF法で「現在」に割り引いた統合会社の本源的な価値だという説明だったと思いますので、それを自ら言ってしまったのならそれを踏襲するなりして回答を組み立ててほしかったですね。
◆◆理論価値を述べた時点では、まさか反対株主の株式買取請求権に紐づけられるとは思っていなかったはずだからね、邪推だけども。関西スーパーも困惑しつつもなんとか反論を試みたんだと思うよ。
◎そうかもです。
◆◆関西スーパー側に好意的に読むとすれば、オーケーのTOB予定価格と反対株主の買取請求権を行使した結果の「公正な価格」とは直接的な関係はないと述べたまでだっていう解釈もあるかもね。
◎そういう意味では「理論価値と買取請求権を行使したあとの公正な価格との関連はどうなっているんですか」っていう質問をFAQに入れてくれればと思いますが。
アイ・アール・ジャパンの理論価値の下限について
◆◆FAQ(第4回)が開示されるかはわからないし、このままになってしまうかもしれないね。関西スーパーとしては、自社の算定機関であるアイ・アール・ジャパンが2,250円未満を理論価値のレンジとしてサポートしていなかったのは痛手だと思うんだよね。
◎理論価値のレンジ内であれば、たとえそれが下限付近であっても説明はつながりますからね。特別委員会の算定機関であるプルータスは1,787円〜3,128円という具合に2,250円を下回る可能性を残していましたけれども、アイ・アール・ジャパンはミニマム(下限)が2,400円ですからね。
◆◆仮に、本件に係る株式買取請求権が裁判所に持ち込まれた場合、発行会社が開示した「理論価値」が公正な価格にどの程度影響を与えるのかが判断されるかもしれないね。
◎ええ。いずれにせよ、来週の臨時株主総会まで引き続き注目していきたいですね。