週刊M&Aバンカー第66号:関西スーパーマーケットに係る雑記(最後に)

週刊M&Aバンカー
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今週は関西スーパーマーケット(以下、「関西スーパー」)の臨時株主総会がありましたので、引き続き感じたことを書いてみます。

当職は完全なる部外者であり、本記事は一個人の呟きであって投資判断や議決権行使につき影響を与えることを意図したものではない旨申し添えます(要は、単なる感想文です)。

(いつもの先輩・後輩の対話で進めていきます。文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です。)

関西スーパーマーケットに係る雑記(最後に)

関西スーパーの経営統合議案可決

◎先輩、今週の関西スーパーの臨時株主総会、注目していましたが経営統合議案は可決になりましたね。

◆◆各種ニュースでとりあげられているけど、経営統合=株式交換の議案の賛成は66.68%だったらしいね。

関西スーパーマーケットがエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の食品スーパー2社と統合することが29日決まった。臨時株主総会では3分の2以上の賛成が必要な株式交換議案に対し、賛成比率が66.68%という薄氷の可決となった。背景には、株主が会社提案にむやみに賛成するのではなく、企業価値向上につながるかを冷静に判断するようになっていることがある。

(日経新聞より抜粋)

◎接戦もいいところだったんですね。

◆◆可決してしまえば決議は有効ではあるものの、これだけ反対された経営統合はなかなかないはずで歴史に残る案件になる気がするなあ。

これから起こるかもしれないこと

◎オーケー側からも、TOB提案を取り下げる旨のリリースが出ていますから本件はこれにて決着ということなんでしょうね。

◆◆大枠としてはその理解なんだけども、個人的には反対株主の買取請求権とその後の価格決定申立がどうなるのかは気になるところだよ。

◎理論価値の公表が価格決定申立に何らかの影響を与えるのか否かということですか。

◆◆そうそう。ちなみに、今回の場合”逆取得”に該当するはずだとはいえ、関西スーパーは株式交換完全親会社なので、強制退出(スクイーズアウト)される子会社側の株主がらみの価格決定とは違う理屈になるような気もするんだよね。

◎そうでした、確かに関西スーパーは親会社側でしたね。株主としては何もせずとも株式を奪われるわけではない、と。

◆◆ただ、実態としてはH2O傘下の子会社になるわけだから、単純な株式交換完全親会社の価格決定申立の事例を踏襲してくるのかはわからなあ。

◎そのあたりはもしかしたら将来的になんらかの媒体で記事が出るのを待つしかなさそうですね。

◆◆まあ、そうなるかな。

FAとして参考にできること

◎ただ、いずれにせよ今後は理論価値を自ら言うのは差し控えるケースが増えるんでしょうかね。

◆◆うーんどうだろう、今回の決議の接戦を見るに、理論価値をプレスリリースしたことで賛成が増えて可決したという見立てもできなくもないわけで。

◎要は理論価値の公表が勝敗を決した重要なパーツであった、と?

◆◆そうかもしれないし、違うかもしれない。結局答えはわからないから「かもしれない」という域をでないんだけどね。

◎そういう意味では買取請求からの価格決定申立がどうなるかで理論価値の公表という行為の評価は変わりそうですね。

◆◆そうだね。ただ、案件を複雑にしないためにも今後自分が担当する統合案件においては基本的には理論価値の公表はおすすめしないというスタンスをとっていくつもりではあるかな。

◎となると、どうやって統合にご賛同いただくための説明を組み立てるんでしょうか。

◆◆そこは従前通りの財務指標によるシナジー効果の定量化が王道だとは思うんだよね。

◎「統合後、X年後に売上高●億円、営業利益●億円を目指す」という言い回しですね。

◆◆そうそう。そもそもシナジー効果を訂正的に述べるだけの案件もあるくらいだから主要財務指標の目標値を開示するだけでも効果はあるはずなんだよね。

予告TOBについて 〜競争法対応の観点も〜

◎ちなみに、日経の記事でこんなのもありましたね。

「熊」は本物か オーケーの予告TOBに戸惑った投資家

◆◆この記事の途中に表で書かれているとおり、予告TOBはそれなりに件数があるんだよね(以下の図は同記事より抜粋)。

◎記事には、日本のTOB法制上一度TOBを開始してしまうとその撤回が難しいから予告TOBという手法が用いられるという説明がありました。

◆◆以前、商事法務の記事でも日本のTOB規制はこのままで良いのかという論調で撤回事由にもう少し柔軟性を持たせた方がいいのではという話もあった位だからね。

◎なるほど。ただ、予告TOBでも提案を受けた側の取締役会は善管注意義務の観点でそれを真摯に検討せざるを得ない点はつらいですね。

◆◆それがベアハグと呼ばれる所以だからね。

◎ふーむ。

◆◆ちなみに、予告TOBは競争法上(特に海外)の理由から案件を公表しなければ審査が進まないような場合であって、案件公表と同時にTOBを始めてしまうとTOB期間終了までにクリアランスが取れないことが想定されるケースでも使れるんだけどね。

◎今回の表で言えば、日立金属のケースですね。現時点(21年10月末)においてもTOBは始まっていないようです。どうやら11月下旬をTOB開始のメドにしているらしいですが。

◆◆そうそう。予告TOBといえば”敵対的”みたいな覚え方をするとちょっと間違いだから留意しておきたいね。

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