平日の朝7時のツイッター振り返り投稿はおかげさまで少しずつ認知いただきつつあるようです。
シリーズものは基本的に第1回を紹介しており、「週刊バンカーシリーズ」は一旦除外してランダムに記事を抽出しております。
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さて、今週は、
です。
【仕事術】「事実を伝える」とは何を伝えれば良いのでしょうか?
今回のポイント
2週間前の記事で、上司やクライアントに何かを報告する際には、
するように心掛けるべきで、特に(3)の意見につき、複数の対策・選択肢を用意しておくことが重要だと述べました。
また、前回の記事では結論を敢えて最後に持ってくる理由に触れました。
今回は「(1)事実の報告」に関するポイントを見ていきましょう。
せっかく事実→論点→意見の順番で報告したとしても、上司・クライアント等の報告相手から、
と言われてしまうようなケースもあろうかと思いますが、どうしてそう言われてしまうのでしょうか。
はじめに結論を述べれば、ビジネス会話の報告における事実とは、以下の要素を含むものです。
- 数字
- 第三者が発信した情報・行動(第三者の言動)
- 報告者(あなた)の言動
それぞれ見ていきましょう。
事実の構成要素
事実の構成要素(1):数字
まず、事実を報告する場合にほぼ必須となる構成要素は「数字」です。
つまり、定量的に事実を把握して、それを報告しましょうということですね。
たとえば、M&Aにおける買手サイドのFA(フィナンシャル・アドバイザー)の立場を想定してみましょう。DDのQ&Aにつき全体としての上限が300個と設定されているにもかかわらず、専門家ごとに上限設定をしなかったため、各専門家がわれ先にと質問を好き放題作成しているようなケースを思い浮かべてみます。
(A)数字を含めずに報告する場合
このままでは、枠が早急に消費されてしまうおそれがあります。【問題点の指摘・論点の整理】
(B)数字を含めて報告する場合
このままでは、同様のペースで質問が作成されれば2日後に枠がいっぱいになってしまうおそれがあります。【問題点の指摘・論点の整理】
普通はここまであからさまに数字を含めないケースと含めるケースを比較することもないかと思いますが、数字の有無で情報の深度がだいぶ異なってくることがわかるかと思います。
数字がないケースでは、報告を受けた側が、
「そもそも、何個の枠のうち何個使っているの?」
とか
「どのくらいの可能性で枠が枯渇するの?」
といった感じで質問をしないと事実が揃いません。
また、数字がふくまれていないと「それは本当?思い込みじゃない?」といった疑念を持たれてしまうかもしれません。
上司やクライアントからこのような事実を掘り出すための質問をされないためにも、自ら率先して数字を含めて報告をするクセをつけましょう。
事実の構成要素(2):第三者が発信した情報・行動(第三者の言動)
次に必要な構成要素は「第三者が発信した情報・行動」すなわち、第三者の言動です。
たとえば、後輩が先輩に対して、クライアントからクレームを受けたことを報告する場面を想定してみましょう。いずれも数字を含めて報告することは対応できている前提です。
(A)第三者の言動を含めずに報告する場合
(B)第三者の言動を含めて報告する場合
「レポート受領が1日遅延してしまい、当社における作業時間が当初想定より短くなってしまい当社メンバーが残業して辻褄を合わせました」
とのことです。いかがいたしましょうか?
「クライアントが怒っている」という情報は大事ではありますが、どのレベル感で怒っているのか、怒っている原因は解決済みなのかという点は重要な情報です。
単に「怒っているようです」とだけ言われても、
「で、具体的に何がどうなっているの?」
といった感じで、追加で状況を整理するための質問をしないと事実が揃わないわけです。
実際には「怒っている」と報告をうければ上司としては一応は何が起きたのか把握するとは思います。逆に本当は怒られていたのに「クライアントがクレームっぽいことを言ってますが大丈夫です」と報告をされると「それは君の思い込みじゃないのか?」と疑われてしまうかもしれません。
いずれにせよ、他者の言動を報告することで、(思い込みではない)事実を共有するように心がけたいところです。
事実の構成要素(3):報告者(あなた)の言動
最後の構成要素のは「報告者(あなた)の言動」です。
これも、先ほどの(2)でみたクライアントが怒っているケースを引き続き想定してみていきましょう。(B)の報告に加えて自分の言動を含めた(C)という報告をみてみます。
(C)第三者の言動と自分の言動を含めて報告する場合
「レポート受領が1日遅延してしまい、当社における作業時間が当初想定より短くなってしまい当社メンバーが残業して辻褄を合わせました」
とのことです。
ただし、クライアント側にも落ち度があるように思いまして、当社のレポートに必須な情報であるクライアントの事業部側の資料提出自体が、レポート提出日の前日の24時過ぎでした。約束ではレポート提出日の3日前には情報をいただけるとのことでしたがクライアントの事業部側の作業がそもそも遅延していたわけです。なお、情報受領の期日を経過した後は半日ごとくらいに状況をトレースしていました。
このような状況ではありますが、いかがいたしましょうか?
(B)のケースに加えてここまで情報が揃うと、そもそもクライアントの経営企画部長のクレームが無理筋というか、誤解である可能性が高くなります。クライアントの経営企画部長にこちらの遅延の理由が、そちらの事業部側の作業の遅延に起因しているんですよとやんわりと伝えれば、怒りは沈むように思います(もちろん、単に事業部を「売る」と事業部側から恨まれますのでその辺はうまくやりましょう)。
このように、相手の言動のみならず、その言動を引き起こしたこちら側の言動も含めて報告することで、より有効な対応策が考えられるようになるはずです。
ときには、自らの言動が間違っていて、報告内容に含めたくない場合もあるかもしれませんが、”言いにくいことこそ率先して共有”することを心がけたいですね。
さいごに
このように、事実報告においては、
- 数字
- 第三者が発信した情報・行動(第三者の言動)
- 報告者(あなた)の言動
が必要となりますが、その背景には、事実を報告する相手からの「確認のための質問」が最小限になるように配慮した方が良いよねという思いがあります。
事実が適切に報告されていれば、「意見としての対応方針の協議」のために多くの時間を使えるようになりますが、事実が十分に報告されていなければ、まずは事実確認をひとつひとつしていくことに時間を割かなければならず、非効率となります。