週刊M&Aバンカー第38号:会話の基本は「結論から伝える」ですよね?

週刊M&Aバンカー
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最近、平日の朝7時にツイッターで過去の記事を振り返りコメントをつけながら紹介するという試みをはじめました。

自分の書いた文章でも、改めて読み返すと色々と気づきがあって興味深いところです。時にはちょっと直したくなることもあり、その場合は微修正しておりますものの・・・。

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さて、今週は、

【仕事術】会話の基本は「結論から伝える」ですよね?

です。

【仕事術】会話の基本は「結論から伝える」ですよね?

今回のポイント

前回の記事で、上司やクライアントに何かを報告する際には、

(1)事実の報告、(2)論点の整理、(3)意見(複数の対応方針) をセットで報告

するように心掛けるべきで、特に(3)の意見につき、複数の対策・選択肢を用意しておくことが重要だと述べました。

この場合の報告という会話の結論は「(3)意見」の部分の対策・選択肢となります。

長々と事実・論点を述べて最後に結論が来るというのは、会話の基本である、

「はじめに、結論から伝える」

というセオリーと矛盾しているのではないかという疑問を持たれた方もいらっしゃるかと思います。

今回は、その辺りの補足をしてみます。

なんでもかんでも結論から伝えるとどうなるか

「はじめに結論ありき」というの考え方・姿勢が大切であることに疑問の余地はありません。ただ、その「結論」というものの定義付けといいますか、何をもって「はじめの結論」とするかとということには一定の工夫の余地があるのではとも思っております。

たとえば、次のようなケースでは「相手に行動してほしい選択肢としての結論」から述べるよりも、事実→論点→意見(選択肢としての結論)の枠組みで述べた方がいい場面が多いと感じます。

  • 相手の感情を刺激しかねない場合
    1. 相手を否定するニュアンスが含まれるケース
    2. 相手と前提認識が揃っておらず、相手を驚かせかねないケース
  • 意見(選択肢)を昇華させたい場合

相手の感情を刺激しかねない場合

自分の意見を伝えることで相手の感情を刺激しかねないケース、として、相手を否定するニュアンスが含まれるケースと相手と前提認識が合っていないので相手が驚くケースがあると思います。

1. 相手を否定するニュアンスが含まれるケース

まず、相手を否定するニュアンスとは、たとえば、たとえば相手の意見と異なることを伝えるときや、相手の作業のダメ出しをするときとかを想定していただければと思います。

いずれも、最初に相手を否定して感情を逆撫ですると、相手は聞くモードではなく戦闘モードになってしまうこともあって、本来なら伝わるはずのところが誤解されたり、余計なしこりを生んだりしてしまうかもしれません。

人間誰でも、最初に「お前の言動は間違っている」と言われれば気分が悪くなりますし、むしろ「あんたにそこまで言われる筋合いはないわ」と心の中では思ってしまう側面があるのは否めないでしょう。たとえば、はじめに

「あなたの意見とは異なるのB案の方を選ぶことにします」

とか

「君の作った資料、全然なってないから、全部やり直しね」

とか言われると、大抵の人は『(なんですって!?)』と心の中で思い、いくばくか冷静さを失ってしまうでしょう。

普通は相手が感情的になってしまうと、会話が生産的ではなくなりますので、お互い冷静に会話すべく、

  1. まず、事実を確認し相手にも理解・納得してもらう
  2. 次にその事実に基づくとどんな論点(問題点)があるかを述べてそれについても同意を得る
  3. 最後にその問題点を解決するために選択肢としてどんなものがあり、何を選ぶのかという意見を伝える

といった順番で一歩ずつ相手を否定するニュアンスが含まれる結論に近づいていった方が、仮に途中で相手と意見が対立しても、どこまでなら同意しているのかがわかりやすいので(たとえば、事実認識は整合しているが論点の認識が異なっているとか)、より生産的な会話がなされやすいのではと考えます。

2. 相手と前提認識が揃っておらず、相手を驚かせかねないケース

相手と前提認識が揃っていない場合というのは、簡単に言えば相手から、

「そんなの聞いてないよ!」、「そんなこと知らないよ!」、「いまさらそれはないですよ!」

と思われるケースです。

このような場合も、相手を否定するニュアンスが含まれるケースほどではないにせよ、相手が感情的になり会話がスムーズに進まないこともあるはずです。

要はセンセーショナルな結論を伝える前に、しっかりと相手に前提と論点を理解していただき、驚かれるかもしれないが結論としてはこれが合理的であるということを順を追って理解してもらいましょうということです。

意見(選択肢)を昇華させたい場合

先に述べた相手の感情を刺激しかねないケースというのは、伝える側も本能的に結論から述べるのを避け、丁寧に事実関係・論点整理を積み上げるような会話の進め方をすることが多いので、そんなの言われなくてもやってるよという方も多いと思います。

他方で、こちらの「意見(選択肢)を昇華させたい場合」に敢えて結論から述べないというのは、全く別の観点です。

(i)結論から述べると、事実と論点を「それ(結論)」に合わせて歪めかねない

何かの意見を伝える場合、結論ありきではじめると、その結論をサポートするような事実認識、論点整理をしてしまうことってあると思います。

それを一番感じるのは、株価が下がった時に、

  • 株価が下がった(結論)
  • 感染症が拡大している(事実)
  • 経済の中長期的な停滞が予想されるためだ(論点・問題点)

といった論調で報道がなされる場合です。翌週に株価が上げれば環境はほとんど変わっていないのに都合の良い別の事実・論点を見つけてきて、株価上昇をサポートするような物言いをするわけです。

普段のビジネスの会話はここまで恣意的に事実と論点を取捨選択することはないと思いますものの、結論ファーストで述べると、どうしても自分の結論をサポートするような要素を集めようという気持ちが働いてしまう点があるのは否めないのではないでしょうか。

このように、事実・論点を歪めて伝えてしまうということを防ぐため、まずはなるべく客観的な視点で事実・論点から積み上げて相手に納得していただくという進め方が効果的となる場合もあるのではと感じるところです。

(ii)結論としての「わたしの意見」よりももっと良い選択肢があるかもしれない

最初に結論として「わたしの意見」を述べたとして、相手と議論する中で、

「その事実関係と論点整理なら、もっと〇〇という方法の方が良くない?」

というより良い選択肢が生まれることってあると思います。

そのような場合、最初に自分の結論を述べてしまってるため一貫性の原理という心理的バイアスにかかって自分の意見を譲れなくなってしまったりすることもあろうかと思います。

また、そこまで頑なにならない場合でも、最初に述べた自分の意見がやや的外れだったり、議論が行ったり来たりして効率的ではなかったと感じる場面もあるかもしれません。

建設的に協議する場合は「事実→論点→意見」の順番で伝える方が有用なことも

上記の(i)および(ii)でみたように、相手と議論を尽くしてより良い選択肢を練っていきたい場合には、

「事実→論点→意見」

の順番で会話を進め、相手と認識をひとつずつ揃えていくことが有用だと感じます。

結論の代わりに「会話の目的」を伝えることからはじめてみよう

先ほど、

その「結論」というものの定義付けといいますか、何をもって「はじめの結論」とするかとということには一定の工夫の余地があるのではとも思っております。

と述べたわけですが、自分の意見としての結論を述べることは常にベストなやり方ではないかもしれないという点はご理解いただけたかと思います。

じゃあ、場合によっては最初に結論は言わなくて良いんですね?

と聞かれれば、答えば、YesでもありNoでもあります。

「わたしの意見」としての結論は最初に言わなくても良い場合もある

今回、長々とみてきたように、最初に結論として「わたしの意見」からはじめない方が良いよねという場合もいくつかあると思います。

そのような場合に、何をもって会話を始めるのが上手いやり方なのでしょうか?

相手にその会話の目的(どんな風に時間を使いたいのか)を伝えよう

結論としての「わたしの意見」の代わりに、これから何の目的で会話をしたいのかをはじめに伝えるのが良いと思います。

具体的に言えば、会話のはじめに、

報告・連絡・相談(ホウレンソウ)

の、どの話なのかを伝えるというアイディアです。

最初に会話の目的を伝えておけば相手は、「報告を受けるのか、連絡を聞くだけなのか、相談を持ちかけられるのか」という心構えができるため、よりスムーズに話を聞いてもらえると思います。

ちなみに、会話は必ずしもホウレンソウだけで成り立つわけではありませんので、

「依頼(お願い)、雑談」

といった、枕詞をはじめにつけるのもアリだと思います。それぞれ工夫して会話の目的をキーワードとして冒頭に述べてみるのが良いのではないでしょうか。

より高度なテクニック:結論のチラ見せ

さらに、会話の上手い人が自然に取り入れている話し方として、

「結論のチラ見せ」

とでも、いえるようなテクニックがあると思います。

たとえば、こんな感じです。

先輩、相談なんですけど、少しお時間いいですか?【会話の目的の伝達】

いま提案書を作っているんですが、クライアントに伝えるべき留意点が多すぎてちょっと絞ろうと思っていまして、いまの留意点はこんな感じなんですけども、どれを残すべきか迷っていまして。わたしの中ではいくつか色分けといいますか、何となくの方向感は出つつあるものの、それが合ってるか不安な側面もありまして。【結論として自分が何を残したいと思っているのかの素案は持っていることの伝達(チラ見せ)】

まずは先輩にも事実関係と論点を少し理解していただいてからそれぞれの留意点について相談させてくださいね。【まずは、事実→論点と積み上げていきますよという会話の進め方の伝達】

使い所を間違えると”まどろっこしいやつだな”と思われますが、うまくハマれば相手を惹き付けられ、会話がより有効かつ効率的に進められるようになるでしょう。

さいごに

「わたしの意見」としての結論を伝えるというのは、ある意味でポジションを取るともいえるものだと思います。

途中でも述べましたが、人間は一貫性の原理に縛られる側面があり、一度言ってしまった意見を引っ込めるのは負荷がかかります。

いわゆる風見鶏タイプになろうということをすすめるわけではありませんが、「わたしの意見」の出しどころと伝え方には慎重になった方が良いと感じるところです。

(でも、M&Aアドバイザリーの仕事だと、「FAさんどう思うんですか!?」と問われて、自分の意見を言わなきゃならない場面が多いので、そのような場合に備えて、自分の意見を伝えるときのポイントというものも考えていたりしているわけです)

参考記事

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