週刊M&Aバンカー第40号:相手方にFAがいないのもやりにくい

週刊M&Aバンカー
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5月に入り世の中はGWですが、昨年に引き続きほとんどの方が諸々自粛生活だと思います。今年も自宅周辺で密を避けて行動するしかなさそうですね・・・。

さて、今週は、

【M&A講座】相手方にFAがいないのもやりにくい

です。

【M&A講座】相手方にFAがいないのもやりにくい

今回のポイント

自分自身のことは棚に上げて述べさせていただくと、証券会社のFAというのは基本的に面倒くさい人種です。特に交戦的な方が相手方につくと「やれやれ」ということもあります。

ただし、やりにくい相手であっても、相手方にFA不在の案件よりはFAがいてくれた方が助かるケースがほとんどであるという感覚を個人的には持っています。

要は、稀に相手方に証券会社またはそれに準じるファームのFAが起用されていないケースに出くわすわけですが、それがなかなかややこしい話になりがちです(今回の話は、M&Aにそんなに慣れていないのにFAを使わない事業会社が相手という想定です)。

相手方にFAがいないとどうなるか(M&Aディールプロセスに精通したメンバーの不在が招くあれやこれや)

進捗速度が遅い・プロセス管理が難航する

FAの存在意義のひとつにプロセス管理・スケジュール管理というものがあります。

要は、ディールの要所要所に設定された期日までにちゃんと対応しましょうということです。

M&Aに慣れたFAがいればキチンと進捗管理をしてくれるわけですが、その不在により進捗がその事業会社目線になりがちです。そして、その相手方との関係性次第ですが、時にはこちら側が半ばFA代行として、(なぜか相手方の)プロセス管理の一翼を担うようなケースもないわけではありません。

進捗が遅いことに対して状況のトレースをする場面でも、あまり強く言い過ぎるのも難しい相手だったりすると尚更ややこしいことになり心労が絶えません。

窓口が一本化されない

次に、窓口が一本化されないということもやりにくさを助長します。

たとえば、一義的には経営企画的なメンバーが窓口だという設計になっていたとしても、DDのやりとりなんかも法務まわりは法務部、財務まわりは経理部といった形で「直接やってくださいよ」的な申され方をされるケースもあったりします。

こちら側としては、いったい誰とやりとりすれば良いのか、さらには相手方の社内事情でたらい回しにされることもあり、骨が折れることもままあります。

交渉相手としてやりにくい

事業会社自身が相手方の場合、FAとして強く出ることはなかなか難しいです(諸関係性等の大人の事情により・・・)。

たとえば、株式譲渡案件の交渉の場面でも、普通は、FAはFAと、弁護士は弁護士と、そしてプリンシパル(事業会社)はプリンシパル同士で会話することが多いわけですが、相手方にFAがいないと、事業会社の方と自分(FA)が一定の会話をすることにならざるを得ません。

これがややこしくて、FAトークという事前情報交換もできなければ、FA実務というM&Aプラクティスに基づく会話もできないわけで、交渉が難航する大きな要因になりかねません。

案件成立に対する強いインセンティブを持った人がいない

相手方FAも成功報酬を得られなければ赤字商売なので、案件成立に動こうという一定のインセンティブがあります(もちろん、クライアントファーストでNoというべき時はNoというFAがほとんどですが、それでも案件を敢えて壊しに行くことはしませんよねということです)。

ところが、事業会社の方が相手の場合、そもそもその相手の行動インセンティブとしてその案件の成立がご自身の評価に大きくプラスになるかというとそうではないケースもあったりします(要は、頑張って成立させても、事業会社のディール窓口担当としてあまり旨味がない)。

そうなると、ある意味で「やる気」がそこまでないといいますか、通常業務をやりながらプラスアルファでM&Aディールに関与しているわけで、お気の毒ながらかなりお疲れになる(ゆえにやる気が出ないのは当然)立場になってしまっているケースもあると思います。

さいごに

FA抜きでM&Aディールを精緻に検討できる事業会社も一定数は存在していると思いますが、まだ少数派だと思います。

ゆえに、M&Aに不慣れにもかかわらず、FAが起用されていない会社が相手方の場合には慎重に対応していくことが必要となります。あまり出くわすことはないのかもしれませんが、もしFA不在ディールに出会った場合にはいろいろと注意したいところです。

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