週刊M&Aバンカー第27号:相手方のFAが敵対的で、すぐにキレるときはどうする?

週刊M&Aバンカー
この記事は約7分で読めます。

早いもので1月も末ですね。世間は閑散としており、仕事帰りに商業施設に立ち寄ってもがらんとしています。

さて、今週は

【M&Aとキャリア】相手方のFAが敵対的ですぐにキレるときはどうする?

という話について考えてみます。

【M&Aとキャリア】相手方のFAが敵対的ですぐにキレるときはどうする?

M&A案件のコミュニケーションルート

M&Aアドバイザリー(FA)の仕事は自分たちのクライアントとその取引相手、そして取引相手が起用したFAという形で

{当社のクライアント⇄当社(FA)} ⇄ {取引相手のFA⇄取引相手}

というコミュニケーションルートがとられることが一般的です。

経営統合案件なんかでは、プリンシパル間の直接のやりとりがなされますが、株式譲渡の入札案件なんかでは特にこのコミュニケーションルートは”FA経由で”、と厳密に制限されると思います。

いずれのタイプの案件であっても、FAの相手はお互いFAがやりましょうねということで、我々が日々社外の人とやりとりをする場合の相手はFAであることが一般的なわけです。

基本的にプロマネのレイヤーは不用意にキレない

ところで、プロマネ的な立場になると、相手方FAの対応相手もプロマネ(またはそれに準ずる役職者)になり、不義をしたり不当な要求をしない限りにおいては、どのファームの方々も基本的に紳士に真摯なやりとりができるひとしか出てこないと思います。

理由は後ほど詳細に述べますが、このレイヤーでキレてもロクなことはないですし、だいたいはマイナスな結果しか生まないからであり、わかっている人は相手方FAとWin-Winな関係構築をすると思います。すなわち、

御社も弊社もお互い立場があり、それぞれクライアントがいるので、できることできないことあると思いますが、お互い上手くやっていきましょう。

といった感じでお近づきになり、関係構築をしていくイメージです。

若手は相手方FAからキレられたりキレ返したりもあるかも

ということで、個人的には相手方のFAから不当に攻撃される、不当に罵倒されるといった体験を長らくしていないわけですが、時々案件メンバーから、

「相手方の何某氏とDDの調整をしているんですが、なぜかすぐにキレられるて困っているんですよね」

といった相談・ボヤキを受け取ることがあります。

また、逆に相手方FAのプロマネ的なひとから、

「御社の何某さんですが、ちょっとやりとりに収集がつかないので、●さん(私)の方で上手くコントロールしてもらえませんか?まずは次回のDD調整の電話会議に乗ってくださいよ」

とボヤき兼クレームが入ることもないわけではないです(そして電話会議に乗ってみると、「まあ相手方のいうこともわかる部分もあるなあ」と思ってしまうやりとりがなされていることもあったりします)。

いずれのケースもイメージとしてはFA経験がある程度溜まってきて自信とプライドがついてきた場合、かつDD調整や諸資料のやりとりといった、あまり本質的ではないところでバトルしているケースが多いのではと感じています。

ちなみに、誤解のないように補足させていただきますと、自社のクライアントを守るために、たとえば交渉の場面でロジカルに主張をしていくことはキレるとは別次元の話です。
仮に相手方FAの主張を否定することになったとしても、それが相手の面子を保ちながら、うまくこちらのいうべきことを伝えている限りにおいては有用な交渉戦術であります。
他方で、不用意に「どなる、わめく、大声をあげる、揚げ足を取る、机を叩く」といったマウントをとるがための原始的な行動を「キレる」と本稿では表現しています。

そもそも人はなぜキレるのか

一般論になりますが、人はなぜキレるのかでしょうか。

おそらく、いくつかパターンというか理由があると思いますが、基本的には”メンタルが弱い人”がキレると思って差し支えないと思います。大抵の場合、キレるのは、

  • 自分の思い通りにならず、感情が昂って抑えられない
  • キレることでマウントをとれるのではという期待
  • その場の収拾方法がよくわからず、相手に選択肢を提示させてそれにダメ出ししつつ落とし所には乗っかりたい

といった感情が複雑に絡み合っているものだと推察されます。

個人的にはキレる人とのやりとりは面倒なので基本的にお近づきにはなりたくありません(みんなそうですよね・・・)。幸いなことに、現状はまわりにキレキャラがいないので助かっております。

キレる人にはどう対処すべきか

基本的にキレる人を相手にするとこちらのメンタルもがっつり削られるので、逃げられるなら逃げた方が良いでしょう。でも仕事で簡単に逃げるわけにもいかないということも往々にしてありますよね。そんな場合の方策を考えてみます。

(1)キレる相手の上司に改善を促す

まず、王道のやり方ですが、キレる相手方FAのプロマネにこちらのプロマネからモノイイ(クレーム)をしてもらいましょう。そちらさんがキレることで無駄なエネルギーが双方にかかっていますよねという話をすれば、大抵の場合しばらくは落ち着くと思います。

(2)自分より上のポジションの自社のメンバーを巻き込んで、その人に状況を整理してもらう

人間社会の諍いごとを法的に解決しようとする場合、弁護士が間に入ってやりとりをしますよね。あれは法的な有効性ももちろんありますけれども、第三者が入ることによってやりとりがスムーズにいくという側面もあるものだと思います。

という感じに、キレるキレられるという人間関係の枠外の人(ウチの先輩)を巻き込んで、その人に解決してもらおうという作戦です。

その先輩氏が優秀であれば、キレる相手を綺麗にコーナーに追い込んでKOしてくれるでしょう。

先輩を巻き込んでやり取りのレイヤーを崩すのは望ましくはないという見方もあるかもしれませんが、キレるという異常行動に律儀に付き合う必要はないと思うところです。

(3)キレる相手を諭す

自分に対してキレる相手と冷静に話し合うことができる強メンタルのひとは相手と膝詰めでとことん話し合ってみてもいいかもしれません。

普通は逃げた方が得策だと思いますが、キレる相手も人間ですから、もしかすると何かを超越してわかりあい、親しくしてくれるかもしれません(妙な相手に好かれる状態ってやつでしょうか)。

FAの仕事でキレるのは損

FAの仕事でキレるのは、結局そのキレた人にとって損失にしかなりません(もちろん、他の仕事でもキレることの有用性は普通はないと思いますが)。

FA業界は広そうで狭い

たとえば、新規の案件で相手方のFAが何とか証券の何某さんだった場合、同僚にその人を知っている人がいるか確認しつつ、面識のある人がいたら、その相手の人柄を事前に探るようにする人は結構いるのではないでしょうか(少なくとも、私はそういう事前調査をします)。そこで、

  • あの人はヤバいですよ

といわれるのか、

  • あの人は合理的でやりやすいですよ

と評されるのかで、実際の案件に入る際の初動が変わってくると思います。要は、自分の信頼している人からの情報は基本的に信じやすいという心理的な側面も効き、最初から好印象でやりとりができるのか、構えられてやり取りが始まるのかというのはだいぶ違いがある印象です。

また、仮に同業界や関連業界へ転職する際に、転職候補先に自分がキレた相手が面接官として出てきたら、間違いなく採用してもらえないでしょう。世間は狭いですから自分の評判を落とすキレるという行動は自分で自分の首を絞める行為です。

良いプロマネになるには人間力に基づく情報収集力が必須

プロマネの仕事はいろいろありますが、主な仕事の一つに、「相手方の情報収集」があります。

相手方の情報を集めるといっても、側面ルートを使えることもありますが、まずは正当な王道ルートはFA間のやりとりです。いかに相手方FAから有用な情報をゲットできるかは、クライアントの意思決定をサポートするという観点でもプロマネの重要な手腕の一つです。

仮にプロマネがキレる人間であった場合、普通はキレる相手に頻繁に連絡したいと思いませんから、FA間トークという名の”よろず情報収集”にも難航することでしょう(個人的にはこのFA間トークによる情報収集はプロマネには必須な能力であると感じます)。

相手方が何を考えているのかをタイムリーに把握しておかないと、お互いの認識のズレが発生した際に適時に軌道修正ができません。場合によっては認識のずれが相互に大きくなりすぎて案件に重大な悪影響を与えてしまうこともあるわけです。

プロマネはそれこそが自社と自分の評価を下げることだと熟知していますので、基本的には前述のように、

お互いそれぞれのクライアントのために働く立場ではありますが、FA間で上手くやりとりできるところは協働していきましょうね。

という流れを作ることになるわけです。そのためにはキレるなんてことはもってのほかなわけです。

さいごに

それでも、最近はキレる人は結構減ってきた印象です。自社はもちろんですが、相手方の若手がキレキャラであるということもほとんど見なくなりました。ハラスメントに関する啓蒙が進んできたおかげや業界に属するひとの精神性が向上しているからかもしれないですね。

error: Content is protected !!