「困難は分割せよ」とはよくいったもので、ヒトはどんなに困難な場面であっても次の一歩が明確であればあとはやるかやらないかだけになり、葛藤はあっても悩みはなくなるのではと思うところです。
逆に、漠然と「どうしようかなあ」と思っている悩みの段階では、それをそのままにしておいても一向に解決せず、むしろいたずらに時間だけが過ぎていき事態は悪化する一方かもしれません。
さて、今週は、
です。
(いつもの先輩・後輩の対話で進めていきます。文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です。)
【仕事術】相手から信頼されていないと思うときに
クライアントから信頼されていないことを嘆く後輩
◎先輩、こんにちは。我々M&Aアドバイザリー(FA)の仕事って、クライアントからいかに信頼していただくかが大切ですよね。
◆◆そうだね、信頼されないと助言を受け入れてもらえなかったりするからね。
◎まさに、いま担当している新規案件のクライアントの方の対応がキツいというかつっけんどんな感じなんですよ。
◆◆そうなんだ?
◎ええ。ことあるごとに
「おたくとははじめての取り組みなんだけど大丈夫なんですかね。他社さんは・・・とよくおっしゃっていたのですが・・・」
という具合に、他社との比較や不安感を前面に押し出されるんです。
◆◆なるほどね。ちなみに相手から信頼されるためには信用を積み重ねる必要があるって話知ってる?
◎え? そもそも信用も信頼も同じような意味じゃないんですか?
信頼の前には信用を重ねること
◆◆日常会話では信用と信頼を同じようなニュアンスで使うこともあるけれども、アドラー心理学ではその2つを明確に分けているんだよね。Web記事の引用だけどこんな感じ。
「信用○○」と聞いて、何を連想するでしょうか?「信用取引」「信用金庫」など、金融上の取引を連想する方が多いのではないでしょうか。では、質問です。「信用」という言葉を「信頼」に置き換えてもそれは成立するでしょうか?「信頼取引」「信頼金庫」など。おそらくはピンと来ないのではないかと思います。
なぜピンと来ないかというと、「信用」と「信頼」は明確に違うからです。「信用取引」とは、その人の預金残高や保有資産、過去の取引実績、担保など、何かしらの「裏付け」があって初めて取引を行うものです。つまり、「信用」とは裏付けや担保と引き替えに相手を信じることなのです。
しかし、「信頼」は違います。「信用」とは逆に、一切の裏付けや担保もなく相手を信じることを「信頼」と呼ぶのです。 裏付けがない、ということは、相手に裏切られるかもしれない、ということです。そうです。それでも信じる。それが信頼です。
◎ようするに、
- 信用:条件付きで信じる
- 信頼:無条件で信じる
ということなんですね。
◆◆そんな感じ。アドラー心理学では信頼という概念は交友タスクのベースになるという文脈で使われているんだけども、それをちょっと発展的に解釈すれば、そもそも誰を信頼するのかという判断にはそれ以前の信用の積み重ねという要素が大きく影響するという整理になる気がするんだよね。
◎信用にたる言動を繰り返して少しずつ相手から信頼していただくようになるというプロセスがある感じでしょうか。
◆◆そうそう。信用貯金という言葉あるじゃない? あのイメージで少しずつ信用を貯めていくと徐々に信頼度が増していく感じ。
◎ちなみに、信用貯金ゼロの今の私のような状態だと信頼度はどうなっているんですかね?
信用貯金ゼロの場合、相手は「警戒モード」かもしれない
◆◆初対面のような個人的な信用貯金ゼロの場合であっても、仕事・組織として動いている限りは会社の看板や実務経験といったものによってある程度の信用が得られている場合もあるよね。そういう時は少なくともニュートラルに話を聞いていただけることが多いかな。
◎となると、今の私のケースはなぜ信頼度ゼロ近傍なんでしょうか。
◆◆詳しい事情はわからないけど、過去に新規業者に頼んでひどい目にあったとか、そもそもうち会社の他のメンバーがご迷惑をかけたとか、その方の過去の経験から自衛のために警戒モードで接することにしようとなっている感じかもね。
◎たしかにいつも疑いの目で見られている気がします。
◆◆そういう場合でも基本的にやることは同じなんだけども、より念入りに信用を積み重ねていく必要があるよね。
◎といいますと。
◆◆イメージとしては、一気に信頼ゾーンにいくのは難しそうな場合、
- 安心安全(敵ではない)
- 親和性あり
といった印象を持ってもらうように心がけると良いかもね。
◎それぞれ具体的にはどういうことですか?
安心安全の土台を築く(私は敵ではありません)
◆◆まず安心安全の方は、相応に警戒心の強い方の場合、こちらサイドにキツく当たってくることがあるんだけど、それに真っ向から対抗してこちらもきつめの行動をとって敵対しないように気をつけることだね。
◎クライアントなのに敵対する人っているんですか。
◆◆本来的にはクライアントと敵対しても全く意味ないんだけども、人によってはその性質からかイヤイヤオーラが見え隠れすることもある気がするんだよ。
◎そうなるとお互い嫌い合うわけですから収集つかなそうですね。
◆◆そのとおりなんだよね。そうならないためにも、まずは相手の警戒モードを解くためにすくなくとも敵対しないっていうところから始める必要があるよね。
親和性あり(共通項を見出す)
◆◆次に親和性の方なんだけど、これは簡単に言うと相手との共通項を探すってことだよね。
◎なるほど、たとえば同じ大学出身とかですかね。
◆◆そうそう。同じ大学出身者だというと急に親みを感じてくださる相手も多かったりするからね。
◎あとは、出身地方が近いとかもですね。
◆◆それも王道だね。
◎大学も出身地も異なる場合はどうすれば良いんでしょうかね。
◆◆趣味的なもの、好きなスポーツチームとかそもそも好きなスポーツ自体とかが無難だよね。会議の本題に入る前のアイスブレイク的な時間とか、帰り際エレベーターホールまでのときにさらっと会話して情報を掴みながら共通項を探すのが良いと思うよ。
◎ウェブ会議だと難しそうですが、対面の会議も戻りつつありますからその辺は意識しておきます。
ただし、信用貯金を貯めるのは大前提
◆◆なお、当然のことだけども信用貯金を貯めていくのは大前提だからね。
◎キチンと仕事をするってことですよね。
◆◆それはもちろんだし、つまらないところでミスしないってことも大事だね。メールのレスポンスの早さとか、時間を守るとか。
◎わかりました。お聞きしたことをベースになんとかいまの気難しいクライアントに信頼いただけるように頑張ってみます。