週刊M&Aバンカー第29号:良きリーダーについて考える

週刊M&Aバンカー
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この週末は2月なのにだいぶ暖かいですね。

個人的な感覚では、かつては1年の中で一番寒いのは2月頃というイメージだったのですが、最近はどちらかというと1月の方が寒くて、立春を迎えると暦通り春めいてきて暖かくなる日が多くなってきている気がします。温暖化によって季節が変わるのが早くなってきているのかもしれません。

さて、今週は、

【仕事術】良きリーダーについて考える

です。いつもの先輩と後輩の対話記事にしたててみました。

(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)

【仕事術】良きリーダーについて考える

◎先輩、最近、「良きリーダーとはどういう人だろう?」ということを考えるようになりまして。

◆◆そうなんだ。君もそろそろ実質的にチームを率いる立場になりつつある年次だからかな?

◎ええ。できることからやってみようということで、個人的にリーダーシップ講座を受けてみまして、いろいろと学ぶところがありました。

◆◆せっかくだから、どんなことを学んだのか教えてよ。

3つのリーダーシップスタイル

◎まず、リーダーシップにはスタイルがあるらしく、有名な分類でいうと、クルト・レヴィンの3つのリーダーシップ・スタイルがありますね。3つのスタイルとは、

  • 専制型
  • 放任型
  • 民主型

という具合に分けられるそうです。

◆◆それぞれどういうイメージなのかな?

◎マトリックスで示すのがわかりやすいかと思いましたので、こんな感じにまとめてみました。

◆◆なるほど、結構わかりやすいね。

◎世の中の解説サイトを参考に上手くまとめてみました。ちなみに、リーダーシップのスタイルはこの3つのどれかに純粋に当てはめる必要はなくて、民主型だけど緊急事態では専制型になるし、同じく民主型だけど細かいことは放任するというスタイルもあり得るそうです。要は、組織とメンバー次第でどのスタイルが有効かってことも変わってくる感じでしょうね。

実際の案件にて・・・

FAとしてもクライアントが判断してくれないと困る

◆◆以前の案件でクライアントの事業部と企画部との合同メンバーのチームと仕事をしていて、事業部長と企画部長がそれぞれ全く異なるリーダーシップスタイルを持っていたのを思い出すよ。

◎そうなんですか。どちらがどういうタイプだったのです?

◆◆事業部長が放任型、企画部長が専制型という感じかな。

◎そうなると、企画部長が主導権を握ってる感じになるんですかね。

◆◆実態としてはそうなってしまっているんだけど、企画部長としては事業部の案件なんだから、事業部長がチームを引っ張っていって欲しいという気持ちを持っていたらしいんだ。でも、事業部長はチームとしてまとめようという行動はほとんどとらなくてね。

◎そうなるとメンバーとしては企画部長に頼らざるを得ないと。

◆◆そのとおり。そしてメンバーのみならず、我々FAとしてもクライアントの判断を問いたい場面では企画部長を巻き込まざるを得ないわけだよ。事業部長だけでは決めてくれないからね。

名選手、必ずしも名将にあらず

◎その事業部長が無能ってわけじゃないんですよね? 部長をやっているくらいですし。

◆◆そうそう、そこがまたややこしいところで、個人の能力という意味では事業部長はかなり高いんだよ。優れたアイディアもたくさん出すし、鋭い質問も多くされるし。でも、チームをまとめるという観点では、訓練を受けたことがないのか苦手なのか理由はわからないけど、なかなか評価が難しい側面がある感じだったねえ。

◎「名選手、必ずしも名将にあらず」なんですかね。

◆◆そんな感じかな。日本の組織は上に行けば大抵の場合はチームを率いざるを得ないからね。チームをまとめて判断するっていう行動は業務をこなす、アイディアを出すということとは異なる次元の話であり、やはり難しい。

あれ?専制型がベストなんでしたっけ?

◎でも、その企画部長も専制型ということであれば、メンバーとしての成長という観点では必ずしもベストな体制ってわけじゃないですよね?リーダーシップスタイル理論上も、専制型と放任型よりも民主型の方が一般的には有用だとされているみたいですし。

◆◆理論的には民主型が望ましいのはそうなんだろうけれども、それはメンバーが一定のレベル以上の人員で構成されている場合により一層当てはまる気もするんだよね。

◎といいますと?

◆◆事業会社はM&Aをしょっちゅうやっている会社ばかりではないよね?

◎そうですね。事業会社の本業はM&Aじゃなくて、ビジネスそのものですから。

◆◆となると、M&Aを検討するに際して集められたメンバーは必ずしも全員がM&A検討スキルが高いというわけではないはずだよね。

◎なるほど、専制型が適合するケースであるところの「メンバーが未熟」という条件に当てはまっているといえなくもないわけですね。

◆◆そういうこと。先ほどの企画部長も完全な専制型ということではなくて、一定程度は民主型的に動いていて、メンバーの意見は聞くものの、最終判断は自分がするということで、それはそれで合理的なあり方だったと思うんだよね。

FA自身の組織はどうだろう

◎そういう意味では、我々FAの組織も上司や先輩方の顔ぶれをみてもいろんなパターンがありそうですが、概ね専制型が多いように感じますね。

◆◆我々FAの仕事はチーム戦であり、チームの責任はプロマネがとらなきゃならないわけで、少なからず専制型的に考えておかないと、いつ足を掬われるかわからないからね。それでも、10年くらい前よりはだいぶ専制型の人物は減ってきたと思うけども。

◎そうなんですか。

◆◆我々のジュニアの時代は徹夜で作った資料を朝上司に持っていったら、一目して、全然ダメということで目の前でビリビリと破かれるというのがあったからね。

◎なんというパワハラですか。

◆◆ハラスメント防止の意識もそんなに高くなかっただろうし、まわりも程度の差はあれそんな人物ばかりだったからねえ。

◎我々の組織も心の側面でも進化しているということですかね。

◆◆そうだと良いんだけど(笑)

結局、良きリーダーとは

◎それで、結局なんの話でしたっけ?

◆◆君が「良きリーダーとはどういう人だろう?」ということではじまった会話だよね。

◎そうでした、そうでした!

◆◆良きリーダーについて何かつかめたかな?

◎良きリーダーとは民主型をベースとしつつも、置かれた環境・メンバーの状況次第で放任と専制の度合いをうまくバランス取れる人という、まっとうというか当たり前が結論になりますかね。

◆◆リーダーは後輩を育成しなければならないはずだんだけど、常に専制状態だとメンバーが育ちにくい。一方で放任してぬるま湯環境を作ると自律できないメンバーは堕落していき、やはり育たない。

◎それはそうですね。

◆◆個人的には、さっきの分類はさておき、良きリーダーとはチームメンバーに当事者意識を持たせられる人のことだと思うんだよね。FAの仕事であれば、たとえば、

「DD調整は君の仕事だから、君が率先してあるべき報告がクライアントにできるように必要な業務を定義して、それをこなしていってくれ」

っていうことを伝えて、上手く見守れるかという感じ。

◎やらされている感があると、言われた通りのこと未満の対応しかしませんからね。

◆◆そうなんだよ。むしろ、君が担当なんだから君が自身で考えてみてよというのがまずはじめにあって、でもリーダーとしてあるべき姿は示せるから、いつでも聞いてくれっていうところかな。

さいごに

FAの仕事は緊急事態というか突貫で対応しなければならないなんてケースも、あるわけですが、そのような場合は専制型で対応せざるを得なくなります。

リーダーの仕事は、そのような緊急事態を招かないように、チームメンバーの仕事をモニタリングして常にチームとして先手の対応を心がけるという側面もあろうかと思います。

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