M&Aアドバイザリーの仕事をしていると多くの会議に参加することになります。
今回は、クライアント等の外部のオフィスでの会議の際に最優先で注意すべきことについて考えてみたいと思います。
外部のオフィスでの会議の注意点
M&Aの仕事は情報管理が最重要
M&A案件は限定的なメンバーで検討が進められる
上場会社が関与するM&A案件ですと、そのインサイダー情報が関与者以外のメンバーに漏れることはあってはなりませんし、非上場会社でも様々なステークホルダーへの影響もあり、限られたメンバーで検討を進めるのが一般的です。
なので、FAによるM&Aの提案書においても、
「情報管理は徹底しましょう!」
というメッセージを載せます。
情報はどこから漏れる?
それでも、時々ではありますが、M&A案件を検討しているという情報がどこからともなく漏れてしまうこともあります。一体どこから漏れるのでしょうか。
案件の関与メンバーが、
「実はこんな案件があってさ・・・」
と、案件の非関与者にしゃべってしまうというケースは、かつてはあったのかもしれませんが、現在は誓約書をとられていたり、そうではなくても、情報管理の重要性の啓蒙が進み、そのような単純なミスによる情報漏洩は少なくなってきているように思われます。
非関与者による推察や意図せざる情報取得
そのような中でもM&A案件の情報が漏れてしまうということであれば、案件の非関与者が何らかのルートで案件を知ってしまうということであり、関与者としては情報取り扱いの改善余地があるということです。
FAとして特に留意すべきなのは外部の会議室で会議をする際、
- お茶出しを待つとき
- 会議室の壁の厚さ
の2点には特に気をつけた方がいいでしょう。
会議の開始直後にお茶出しがある場合
他のメンバーが報告していても、臆せず中断させるべし
クライアントでの会議でしばしば出くわすのが、会議の開始直後に、アシスタントの方がお茶を持ってきてくださることがあります。
そのような際に、FAがプレゼンしているならば基本的に会議を止めて、いったん他愛のない世間話に話題をシフトすることになります。
実務上は、クライアントに「一旦止めましょうかね」と聞いてみて、大抵は「そうですね」となります。
稀にですが、案件メンバーになっているアシスタントの方がお茶出ししてくださるケースもあり、そのような場合にはクライアントが「続けていただいて大丈夫です」と言ってくださるので、その指示に従うことになります。
なお、時々、DD報告会で専門家の先生方がDD報告をしている際にお茶出しがなされる時、アシスタントの方が入出してきても、先生方が何も気にせずに報告を続けることがありますので、FAとしては
「ちょっと一旦ストップしましょうか」
等と発言して、会議を中断するように仕向ける必要があります。
会議の資料は裏返すべし
外部者が入ってきた際には会議を中断するというのは基本的なマナーであるため、大抵のケースでは守られるわけですが、その際に、会議の資料を開いたままにしているケースがあります。
たとえば、会議の資料に大きな字で
「AA社の買収について、その金額は総額●●億円と想定」
と書いてあれば、それが何の会議でどんな案件を検討しているのか一目瞭然です。
アシスタントの方にしてみれば、
「そんないらない情報を晒さないでくださいよ」
という気分でしょう。
このあたりも、FAのメンバーは基本的に資料を裏返すというのは身についていて、反射的にそうしている者がほとんどでしょうけれども、専門家の先生方が気づいていないケースもあるので、さらっと注意する必要があるケースが結構あります。
会議室の壁の厚さ
お茶出しの際の注意点は守っているケースが多いと思いますが、以外と盲点なのが会議室の壁の厚さです。
壁が薄い場合
時々、クライアントの会議室区画の一室で会議がなされる中で、隣の部屋から会議の声が漏れてくることがあります。
隣の声がもれてくるということは、こちらの声も漏れるということですので、そのような場合にはこちら側の声はトーンを落として小声で話していく必要があります。
そもそも壁がない場合
また、時々受付付近の簡易応接でパーテーションで区切られただけの簡易的な会議スペースで会議をはじめるように仕向けられることがありますが、そのような場合にはまずは、
「恐れ入りますが、機密情報を扱っておりますので、会議室にご案内いただくことは可能でしょうか」
と外部から遮断された部屋に通してもらうようにお願いする必要があります(それでも物理的にそのような部屋が空いてない等の場合には、やむを得ずの対応として、小声かつ固有名詞は出さないで会話をすすめることになります)
さいごに
情報管理については、石橋をたたきすぎることはないので、危ないと思ったら会話を止めたり、資料を伏せたりと常に気を張っておく必要があります。