M&Aアドバイザリーの仕事には、Valuationモデルを含む財務モデルをエクセルで作って分析するというものがあります。
今回は、エクセルで財務モデルを作るときに最優先すべきことを考えてみようと思います。
Valuationのレビューをするようになって気付いたこと
アソシエイトともなるとValuationモデルをレビューする機会が増えてきます。
色々な後輩の作るモデルを見ていると、レビューしやすいものとしにくいもので結構差があることに気付きます。
投資銀行によっては、エクセルの運用のルールを厳格に定めているところもありますが、比較的ゆるいルールしか定めていない組織もあったりします。今回は比較的ゆるいルールしか定めていない組織に特に当てはまる話かもしれません。
1つのセル内に値で数式を入れてしまうと・・・
エクセルでモデルを作る際に最優先すべきことは
- 「1つのセルに複数の値を入れて計算をしない」
ということです。
具体例としてNet Debtの計算を想定してみます。
借入金から現金預金を控除するに際し、
- 借入金が200、現金預金が50
だとして、一つのセルで
- 「=200-50」
という数式を入れてしまう人がいますが、そうなると、相当レビューがやりにくくなり、またモデルのメンテナンスも難しくなります。
まず、前提の資料と突き合わせないと200と50の意味がわからず、仮に前期末のBS数値で作っていたモデルを、直近四半期末に変更する際にも何をどのように変更すればいいのかわかりにくく、メンテナンスもしにくいです。
作成者自身なら各数値の意味を覚えているかもしれませんが、仕事というものは、個人の暗黙知に依存すべきではなく、誰が見ても何を意味しているのか容易に分かるようなモデルを作るのがチームにとってもあるべき姿でしょう。
値を入力するセル、式のみを入力するセルを徹底して区別する
セルは、数値のみを入力するセル、又は式のみを入力するセルを徹底して区別すべきです。
たとえば先ほどのようなNet Debtの数値を計算する場合は、
- B1セルに借入金として、200を入力
- B2セルに現金預金として、50を入力
- B3セルに「=B1-B2」という式を入力
といった具合に財務モデルを作れば良いわけです。
ついでに、
- A1セルに「借入金」
- A2セルに「現金預金」
- A3セルに「Net Debt」
と入力しておくとラベルも付いてよりわかりやすくなります。
さいごに
慣れれば当たり前のことなのですが、エクセルの初心者の方は、セル内に数値を並べがちなので、ことあるごとに、
- 数値のみを入力するセル、又は式のみを入力するセルを徹底して区別しよう
と意識すると良いと思います。
なお、エクセル術を学びたい方は以下の書籍もお勧めです。