仕事術として、3つの「とりあえず」をご紹介。重要だけど緊急性の低い作業に取り組むための心構えについて考えてみたいと思いますが、まずは結論をどうぞ。
- とりあえず5分間だけやってみる
- とりあえず大枠(全体像)から決める
- とりあえずベータ版として仕上げる
以下、順を追って見ていきましょう。
とりあえず5分間だけやってみる
なんとなくやる気がしない・・・
物理の最大静止摩擦力みたいなもので、何かをやろうとするとき、それに着手するのが一番のボトルネックだったりします。ちょっと気乗りしないけどやらなければならない作業があった場合に次のような心の声(言い訳)が聞こえてこないでしょうか。
- 30分後でいいや
- いまやってる別の作業が終わってからでいいや
- うーん、今日はやる気が出ないから、明日からやろう
そして、「先送りの言い訳」を繰り返した結果、今日もやるべきことをやらずに終わるということがいかに多いことでしょう。
5分だけでいいなら・・・
そんなときは、とりあえず5分間だけでいいから、無心でやってみることをおすすめします。ポイントは、
- 無心で着手する(心の中でやらない言い訳が聞こえてきても、無視してとりあえず「エイヤ!」っとやりはじめる。ここばかりは無心で身体を作業に向けることが重要で、頼るは「気合い」しかない)
- 自分への言い訳を「5分でやめていいんだから」というものにズラす(どうせ自分に言い訳するなら前向きな言い訳で自分を騙す)
- 本当に5分でやめてもいい
実際に作業をはじめてみると、たいていの場合は5分間でやめることはなく意外と作業にのってきてしばらくは続けられるはずです。ここでも物理の摩擦係数と同じで動き始めたら摩擦力(やりたくない気持ち)は小さくなるようです。
なお、仮に本当に5分間でやめてしまったとしても、それはそれでいいと思います。なぜって何もやらない世界よりも、5分間だけやった世界の方が何かは進んでいるはずでしょうから。
とりあえず大枠(全体像)から決める
たとえばValuationレポートを作る時に
報告書やプレゼン資料等の成果物を作ることになったとする。そういう場合、まずは「とりあえず大枠から決める」ことをおすすめします。
簡単に言うと、目次を作るようなイメージで作成する資料の全体像を把握することからはじめることになります。具体例を挙げてみるとValuationレポートならば、
- はじめに(案件の弊社理解)
- 評価結果のExecutive Summary
- 市場株価法の評価詳細
- 類似会社比較法の評価詳細
- DCF法の評価詳細
- Appendixとして企業価値評価の手法の一般的な説明資料
という枠組みを決めてしまえば、あとはそれぞれのパーツを掘り下げていけばいいというわけです。上記の例でいうところの「市場株価法の評価詳細」についてもっと掘り下げるならば、次のようなパーツを用意することになるでしょうか。
- 市場株価法の算定期間(基準日、過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月等)ごとの評価結果
- 対象会社株価の推移(過去1年間と過去3年間とか、主なイベントを記載)
- 対象会社の株価推移とTOPIX等推移の比較(相対株価化して)
これを逆に、とりあえず市場株価の過去1年間のグラフを作ってみるかというところから始めてしまうと、そのパーツが報告書全体の中でどこにあるのか迷子になるし、チームで仕事を分担するときもやりにくいのではないでしょうか。
チームで作業する場合も大枠の合意から
チームで何かを作り上げるときにも、まずは成果物の大枠をメンバーで共有して、合意を得ておくことが重要です。
先ほどのValuationレポートを3人で分担するとして、
「Aさんは市場株価法、Bさんは類似会社比較法、そしてCさんはDCF法ね。そして、有価証券報告書や決算短信等のパブリックデータはDCF法を担当するCさんが集めること。」
と役割を分担し、それぞれのパーツとしてどんなコンテンツが必要か協議・合意してから作業に着手しないと必要なパーツが欠けたり、不要なパーツを作ってしまうことがあります。すなわち、
- Valuationレポートの作成のための前提データの収集
- エクセルでのモデル作成
- パワーポイントでの報告書作成
- エクセルモデルのレビュー
- パワーポイントで作成した報告書のレビュー
- クライアントへ報告するプレゼンテーター
といった一連の作業の大枠を定めて、メンバーに役割を振ることで、作業の重複や漏れが防げるというわけです。
とりあえずベータ版として仕上げる
いきなり100点はとれないから・・・
何かを作るときに、「すべてをきれいに完成させないと」と考えると途方もない作業量に圧倒されてやる気をそがれることがあります。テストで1発で100点をとらなければならないというプレッシャーを受けながら作業するようなものだから、それはつらいものがあるわけですね。
でも、世の中のたいていの作業はテストじゃないわけで、1回で終わらせなければならないこともなく、作業が繰り返されることがほとんどです。ということで、何かを作り上げるときには「とりあえずはベータ版」でいいやという心構えで取り組むことをおすすめします。
これは、顧客へ提出する資料等は最終的に100点のもの、すなわち自分としてベストだと信じるものを提出すべきですが、いきなりそれを目指すのは無理があるし非効率ということです。
たとえばひとりで作業する場合に
ベータ版を作る
自分一人の作業、たとえば何らかの報告書を作るとして、先ほど述べたように「とりあえずの大枠」を決めたら、必要なパーツ(コンテンツ)を一旦はどんどん埋めていくことが重要です。体裁等についてはそこまでこだわらずに、まずはコンテンツを埋めていき、まずは荒削りなベータ版を作ってみるわけです。
作成者の視点を忘れて客観的に読み、ベータ版2.0に着手
次に、一端休憩等をとった後に自分で作ったことを忘れて、全体を通してその報告書を読んでみます。
すると、この表現はこう修正した方がいいとか、このロジックは弱いから補強するために別のロジックを加えようとかいろいろ気づくことがあるでしょう。そういう気づきを活かしてベータ版の第2版を作ればいいわけですね。
やってはいけないこと・・・いきなり100点を目指す
これらの逆の進め方として、まずは第1パラグラフを完璧に作り上げるんだと意気込んで作業に着手するのはやめた方がいいと思います。
たいていの場合、全体ができる前に息切れしますし、仮にそのペースで全体を作り上げられたとしても、そこで改めて読み返すと修正が必要な箇所で出てくるものです。
すなわち、当初はどんなに「完璧に仕上げた!」と思っても結局修正点は出てくるものだ、と良い意味で諦めて力を抜き、早さを重視してベータ版をまずは作ろうという気持ちでさくさく作業を進めることが重要だと思います。
チームでの作業→何をやっているのか見えないのは怖い
チームでの作業の場合、「今日はここまでいったん仕上げました」とか「まだこのパーツは作り込みが必要ですが、いったん担当部分は仕上げました」とベータ版的な仕上がり状況でも状況を共有してくれた方が助かります。場合によっては、作業したメンバーはベータ版だと思っているかもしれないけれども、ほぼ完成版にしてもいいケースもあるでしょうし、大幅な修正が必要なケースもあるかもしれません。
逆に、なかなか進捗状況を報告しないメンバーがいると「彼はどこまでできているんだろうか?」と若干不安になります。資料の提出間際になって「完璧に仕上げました」と意気込んで持ってこられても、全然完璧ではなかったりすることも往々にしてあったりするのがつらいところです。
※なお、チームリーダーがそういう「抱えたがりの部下」をうまくマネジメントするというのもスキルのひとつですが、今回はそれは敢えて割愛してます。
さいごに
とりあえず、5分だけの気持ちで着手して、まずは全体像から決めて、ベータ版でいいやという気持ちで作業すれば、いわゆる「重要だけど緊急でないこと」も進むこと請け合いです。