週刊M&Aバンカー第52号:支配株主の有無はどのようにして調べる?

週刊M&Aバンカー
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交渉術として三顧の礼という方法は賢いなと。

目上のものが目下のものを丁重に迎えるの意ですが、目下的に考えるとある意味でハロー効果を狙えるように思います。やりすぎると期待ギャップを生むだけですが、上手く使えば、

「あの人が丁重に扱うんだから、優れているに違いない」

と思ってもらえるかもしれません。

さて、今週は、

【M&A講座】支配株主の有無はどのようにして調べる?

です。

支配株主との取引等に関する諸規則は周知となっておりますが、そもそも支配株主がいるかどうかはどうやって調べるのでしょうか。そして支配株主が存在しない場合でも気をつけるべきケースはないのでしょうか。

【M&A講座】支配株主の有無はどのようにして調べる?

支配株主とは

◎先輩、こんにちは。TOB+スクイーズアウトや株式交換といった案件においては、支配株主との取引等に該当するかどうかを検討しますよね。

◆◆そうだね。この規制が導入されたのは10年ちょっと前だったけれども、今では実務にも十分に浸透しているといえるよね。

◎そもそも支配株主というのはどういう株主でしたっけ?

◆◆日本証券取引所グループ(いわゆる東証)のホームページのその定義の説明があるよ。

「支配株主」とは、次の①②のいずれかに該当する者をいいます。

①親会社(財務諸表等規則第8条第3項に規定する親会社をいいます。)

②主要株主(金融商品取引法第163条第1項に規定する主要株主をいいます。)で、当該主要株主が自己の計算において所有している議決権と、次に掲げる者が所有している議決権とを合わせて、上場会社の議決権の過半数を占めているもの(①を除きます。)
・当該主要株主の近親者(二親等内の親族をいいます。)
・当該主要株主及び当該主要株主の近親者が、議決権の過半数を自己の計算において所有している会社等(会社、指定法人、組合その他これらに準ずる企業体(外国におけるこれらに相当するものを含みます。)をいいます。)及び当該会社等の子会社

原文はこちら

◎これって簡単に「親会社」と言っちゃえば良いように思うのですが。

◆◆親会社っていうと「法人」しか規制対象にならないんだよ。

◎なるほど、筆頭株主が過半を持っている個人といった感じの「自然人が支配しているケース」が抜けちゃうわけですね。

そもそも支配株主の有無はどのようにして調べる?

◎支配株主の定義はわかりましたが、その存在の有無はどうやって調べるんですかね。株主名簿の上位株主をみて過半を持っている者がいるかどうかであたりをつけるんでしょうか?

◆◆株主名簿で確認するのは危ないよ。そもそも過半を持っている者が居ないように見えても議決権が分散されているだけで実は親会社が存在しているかもしれないし、個人の場合はどういう血縁関係かわからないし。

◎となりますと、対象会社に聞くしかないんですか?

◆◆そんなわけないよね。

◎ふーむ。

◆◆端的に言えば、日本証券取引所グループの

で対象会社を検索して、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を見れば良いんだよ。

◎なるほど。ちなみに、会社の基本情報の右下ところにそのものズバリ「支配株主等に関する事項」とありますが、これを見れば良いということではないんですかね?

◆◆そこが「有り」になっていたとしても必ずしも支配株主が存在するとは限らないよ。

◎なんと!

◆◆たとえば、三菱自動車工業をみてみようか。

(例:三菱自動車工業)

◎支配株主等に関する事項は「有り」になっていますが、コーポレート・ガバナンスに関する報告書を見ると、支配株主も親会社もいませんね。

◆◆支配株主等に関する事項は、「等」がついているとおり、その他の関係会社(自己を持分法適用している相手先)が存在している場合にも「有り」になるんだよ。

◎そうなんですか、ここは横着せずにコーポレート・ガバナンスに関する報告書を確認しにいくべきなんですね。

支配株主が存在しない場合でも特別委員会を設置するケースあり

◆◆最近の風潮では支配株主が存在していないけれども、その他の関係会社が存在しているならば、支配株主との取引等に準じた扱いをしてTOB等において特別委員会を設置したりするケースが増えてきているよね。

◎たしかに、事例をみていますと支配株主は不存在であるにもかかわらず、特別委員会が設置される案件が増えてきている印象です。

◆◆案件担当の弁護士との相談次第だけども、その他の関係会社が存在しているケースではFAとして初期的に特別委員会設置の必要性(可能性)を指摘しておくべきだろうね。

◎そういう意味では先程の「支配株主等に関する事項」が有りになっている会社は要注意だってことですね。

◆◆たしかに、そういう見方もあるね。

さいごに

支配株主との取引等に該当または準ずるケースに該当してしまうと、特別委員会の設置が必要となります。

この特別委員会の設置・運営は大きな負荷になり、スケジュール勘案上のボトルネックになり得るため、案件検討の初期段階でその可能性を指摘していないと後からおおきなクレームになりかねませんので注意したいところです。

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