週刊M&Aバンカー第37号:「どうしましょう?」で判断を丸投げしていませんか?

週刊M&Aバンカー
この記事は約5分で読めます。

桜のシーズンも終わり、4月も中旬となります。

今週はなぜかキーボードネタ(Capslock?)が流行っていたみたいで、当ブログの記事もかつてないほど多くの方に来訪いただきました。

さて、今週は、

【仕事術】「どうしましょう?」で判断を丸投げしていませんか?

です。

【仕事術】「どうしましょう?」で判断を丸投げしていませんか?

今回のポイント

いつになっても仕事を任せられないジュニアに共通の特徴があるわけではなく、また、そもそも仕事が得意ではないことが必ずしも悪いというわけではないという前提を置きつつも、M&Aアドバイザリーの仕事で頭角を現していきたければ、

(1)事実の報告、(2)論点の整理、(3)意見(複数の対応方針) をセットで報告

ということができるようにした方が良いと思います。

クライアントや上司といった報告先は、事実と論点の確認とあわせて報告主体であるその人自身の「意見」も求めているはずだからです。

何ら対応方針を報告していなかった時代

私自身の反省点ですが、ジュニア時代にプロマネの方へ、

・・・という状況ですが、どうしましょうか?

と問いかけて、

「君はどうしたら良いと思うんだ?現状については君が最も詳細に把握しているわけだから、その君がどうしたいのかを述べてくれなきゃ困るよ」

と指導を受けたことがあります。

その上司いわく「ジュニアでもプロフェッショナルの一員なんだから、状況把握とその対応方針についての自分の意見を言えないのであれば、メンバーとして存在している意味が無い」ということでした。

口調はもう少し穏やかだったかもしれませんが、要はそういうことでした。

報告の「型」を学ぶ

ただ、その上司はあわせて報告の型も教えてくださいました。

その報告の型というのが、

  1. 事実の報告
  2. 論点の整理
  3. 意見・コメント

という3点セットでした。

報告の「型」の具体例

報告の型を具体的に用いるとこんな感じの報告となります。たとえば、デュー・ディリジェンス(DD)の質問数の上限があるにもかかわらず、質問枠の整理をしておらず、重要な質問にあてる枠がなくなりそうなケースを想定してみます(もちろん、これは単なる例示であり、こんなおそまつなDDのコーディネートをするFAはいないと思いますが・・・)。

1. 事実の報告(なるべく客観的に状況を報告)

今週DDが始まったばかりですが、各専門家が予想以上に質問を出してきており、このペースでは早々に質問数の上限の●個を超過しそうです。事前に質問枠を各専門家のファームごとに割り当てなかったため、それぞれが我先にと質問を出してきている雰囲気もあります。

2. 論点の整理(事実に基づき何が問題なのかを挙げる)

今回は入札案件であり、売主FAとの会話でもDDの質問数の上限を超過して追加のQを出すことは難しそうです。このままだと後ほど発生するかもしれない重要な質問の枠がなくなるおそれがあります。

3. 意見・コメント(論点につきその解決策・対応方針を述べる)

本来はDD開始前に各専門家のファームごとにQの個数を割り当てるべきでしたが、今からでも遅くないので各専門家に使える質問の個数を割り当てた方がいいと思います。たとえば、こんな感じで割り当てるのでいかがでしょうか。まず、弁護士にX個、次に・・・

意見としてひとつの選択肢を提示していた時代

クライアントへの報告も「型」にしたがって対応

報告の型を覚え、それにしたがって報告するように心がけるようにしたため、上司からクレームをもらうことはほとんどなくなりました。

他にも、クライアントとの会議などでも、意見を含めずにコメントをすると、ロジカルなクライアントの部長から、

「・・・状況はわかったんだけれども、それで〇〇社さんとしてはどうしたら良いと思うの?」

と、FAとしてのコメントを求められました。そのような場合には、事前に考えていた方針を追加で述べたり、また、先んじて意見もセットでクライアントに伝えるようにしました。

ただ、概ねのケースで意見を述べるとしても1つの方針を述べることに留めることが多かったと思います。

「俺はそう思わないな」

FAとしてコメントした方針が必ずしも採用されるわけではなくて、クライアントから

「うーん、俺はそうは思わないな、かくかくしかじかでと、こういう方針の良いんじゃない?」

と、FAのコメントを踏まえた別の方針を示されることがありました。

そのような場合、その方針に対して、

「じゃあ、それでいきましょう」

というと、また、苦言を呈されました。

クライアントいわく、

「言われた方針にYesとだけ言っているなら、君たちFAに高いFeeを払って起用している価値がないじゃないか。俺のコメントは単なるアイディアなんだから、それをさらに昇華して良いアイディアを言ってもらわなきゃ困るな。そのためにも、もっと事前に色々と打ち手を考えて提示してよ。」

とのことでした。

複数の選択肢を提示するように心掛けていると

それらの経験を経て、プロマネとしてクライアントに対しては、できる限り複数の選択肢を提示するように心がけるようにしました。

論点によっては、対応策が1つしかないだろうとしか思えないケースもあったわけですが、チームで頭を捻ってなんとか形を整えました。

そうすると、ロジカルな手厳しいお客様でも、

「今回のA案とB案だったら、B案で行こうか」

とか

「A案とB案の折衷案でここらへんを織り交ぜてC案ってのはどうかな?」

といった感じで、より実践的で中身の濃い議論がスムーズにできるようになったような気がします。あわせてクライアントからの信頼感や満足度も増していったように感じました。

まとめ

今回のポイントを再掲しますと、上司やクライアントに何かを報告する際には、

(1)事実の報告、(2)論点の整理、(3)意見(複数の対応方針) をセットで報告

するように心掛けることをおすすめします。

特に、(3)の意見につき、複数の対策・選択肢を用意しておくことが重要ですね。

さいごに

FAはチーム戦であるということは何度も述べている通りですが、経験知識がメンバーぞれぞれ異なります。また、考え方、スタンスも違います(スタンスというのは、アグレッシブな意見を述べがちなひともいれば、保守的・穏便に進めるのが好きなメンバーもいます)。

それらの意見を総合的に組み上げて、クライアントの方針に合いそうな選択肢を2つか3つ程度に絞って提示することがプロマネの重要な役割のひとつです。

ゆえに、ジュニアや直下のVPの意見もどんどん出してもらって、それらを凝縮して良い意見にまとめあげる必要があるわけです。

という立場に自分がなってみて、ようやく、当時の上司が、

「君の意見はどうなの?」

「意見を言えないなら価値はないよ」

と言っていた背景・想いが少しわかった気がします。

error: Content is protected !!