週刊M&Aバンカー第20号:どんな相手でも面子を潰してはいけない

週刊M&Aバンカー
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相変わらず寒い日々ですが、来週は一段と寒くなりますね。

都市伝説ですが、ある証券会社は顧客訪問時にどんなに寒くともコートを着ないし雪が降っていても傘をささないなんて話がありますが、現代でもそんな猛者はいるのでしょうか。

コートはまだしも、傘をささずに濡れたスーツで来られても迷惑だなあと思ってしまってはネタにマジレスなので、ここは単に笑っておきましょう。

さて、今回の週刊M&Aバンカーは、

  • 【仕事術】どんな相手でも面子を潰してはいけない

です。

【仕事術】どんな相手でも面子を潰してはいけない

ある日の会議風景より

たとえばクライアントとのミーティングにおいて

クライアントのメンバーがM&Aの法規制について間違って理解していた際に、その誤解を堂々と訂正する専門家がいたりします。

特に、クライアント社内では専門チーム扱いの経営企画チームのメンバーが他部署のメンバーもいる中で誤りを指摘されると、面子が潰れた状態になり得るかもしれません(以前、似たような話を記事にしましたね)。

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たとえば相手方のFAとの交渉場面で

最近はだいぶ減ったという印象ですが、FAの中には攻撃型の方がいることがあります。そういう人はこちらに対して常に威圧的な態度を取り、仮に何か間違えたようなことをいえばこれでもかという具合に揚げ足を取ってくるような感じです。

そういう嫌がらせ的な物言いをするのが作戦なのかその人個人的な特性なのかはわかりませんが、こちらもそれに呼応して相手を罵倒したり声を荒げたり粗探しをすることでなんとか相手の面子を潰そうとしてしまうかもしれません。

なぜ面子を潰してはいけないのか

なぜ面子を潰してはいけないのか、ちょっと考えてみました。

偉人だったらどうか?

たとえば釈迦やイエス並みに悟り切っている人であれば、面子が潰されたり自分の意見が否定されても何ら気にしないのかもしれません。

自己と面子・意見を同一視せず、否定されたのは面子・意見であり自分が何か損なわれたわけではない・・・と飄々としていることでしょう。

我々一般人は・・・

しかし、俗物たる我々一般人はそんな達観した見解に至ることはできず、ふつうは相手から否定されたら、気分が悪くなります。これは、社会的な生き物である人類の特徴であるためもう仕方無いでしょう。仕組みとして、ネガティブな意見を言われた時に反応するようになってしまっているからしょうがないというところです。

面子を潰したらどうなるか

誰かの面子を潰すということは、その相手が釈迦・イエス並みの超人でない限りは、禍根を残すこと請け合いです。要は、程度の差はあれ恨まれるということです。

もしかしたら、その相手はそれまで自分を好意的に思っていてくれて、今後も別の案件を任せようと思っていたかもしれませんし、社内調整も含めて友好的に動いていこうと思っていたかもしれませんが、場合によっては一気に針が逆振れするように、嫌いなやつ認定されてしまうかもしれません。

その結果、その相手・相手方クライアントとの関係性が悪化してしまうでしょう。

他にも、攻撃型FAのように先にこちらの面子をつぶしに来た相手に対してハンムラビ法典のごとく目には目をとやってしまうと、もう収集がつかなくなります(単にこちらの気分が悪くなるということのみならず、本来とれるはずの交渉に役立つ有用な相手方の認識に関する情報がほとんど得られず、協議・交渉が難航するという弊害もでてきます)。

真に利己的になるなら相手と友好関係を構築すべき

浅はかな利己主義

「利己的」というと、自己本位で相手のことを軽視するスタンスという具合に捉えられです。

たしかに、浅はかな利己主義はそのとおりの行動をとるでしょう。もしかしたら、相手の面子を潰すことで、相手を屈服させたと(勘違い)して、ささやかなよろこびを感じることもあるかもしれません。

しかし、こういった浅はかな利己主義は長期的・究極的には自分を害することになります。なぜならば、日々交流する相手から大事にしてもらえず、自分の希望・期待通りに動いてもらえなくなるからです。また、まわりから助けてもらえることもなくなるでしょう。

究極的な利己主義

本当の意味で利己的になる、すなわち究極的な利己主義者であれば、相手と良好な友好関係を構築することでしょう。

要は、「情けは人の為ならず」の精神で在るわけです。

先にも述べた通り、人類はもともと社会的な生き物であり一人では生きていけません。現代のビジネス社会も同様にひとりのちからでできることは大したことはなく、M&Aアドバイザリーの仕事も含めてあらゆる仕事はさまざまな関係性の中で成り立っています。

人間には返報性の原理という心理があり、施しを与えられると何かこたえなければならないという気持ちになります。ゆえに、先にまずはこちらから良い印象を残すようなやりとりを始めることが必要です。面子を潰すのとは真逆の相手を立てるような話し方をすべきです。

相手に面子を潰された場合は

相手方のFAから罵倒されたり細かいところについて揚げ足を取られたりすると、イラッとするのは人間なのでしょうがないかもしれません。

ただし、そこで相手の土俵に乗ってしまっては余計なエネルギーを使うことになりますし建設的ではありません。

この辺りの話はまた別の機会に書いてみたいと思いますが、相手に何を言われたとしても、それを受け流すのがだいたいにおいて最善手となります。

相手とは違うもうちょっと冷静な視点を持ち続け、淡々と受け流すことができれば相手も諦めるかもしれませんし、場合によっては相手のその脅し的な物言いに対して「あなたも大変ですねえ」という同情的な声かけをすると効果的なこともあります(真正面から同情すると激情するのでそこはやんわりとですが)。

いずれにせよ、相手と同じ次元に落ちることなく、こちらは相手の面子を潰すことなく淡々とやっていきましょう。

さいごに

先ほどあげた以前の記事も書きました通り、相手の誤解を面子を潰すことなく指摘するのは難しいことです。

何も考えずにストレートな物言いをしてはならず、相手の特質を多面的に分析し、どのような言い方をすることがもっとも穏便にかつ効果的に相手の理解を正せるかということを瞬間的に考慮する必要があります。

まあ、疲れますが、これも長い目で見て自分の身を守るためと思ってやるしかないでしょう。

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