会社法に定められる、組織再編行為である、合併、会社分割、株式交換及び株式移転の4つの手法についてそれぞれの特徴を比較してみようと思い、先輩と後輩の対話仕立てで記事にしております。
今回は連載第5回(最終回)ということで、独禁法対応を確認していきます。
(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)
独禁法対応
国内独禁法対応
仲間はずれなのは?
◎最後に独禁法対応についてですね。
◆◆そうだね。
◎まずは日本の独禁法対応について限定して考えたいと思いますが、同一企業集団内ではない第三者間の組織再編では、どんな場合も一定の規模(売上高:200億円・50億円ルール)を満たせば独禁法の届出が必要というイメージで良いですかね?
◆◆いいや。
◎あれ、また間違えましたか?
◆◆そもそも、独禁法では組織再編の4きょうだいのうち、一つだけ仲間はずれなのがあるのは知っている?
◎そうでしたっけ?合併、分割、株式交換、株式移転の全てにおいて規定があると思っていたんですが。
◆◆公取委のホームページをよく読んでごらん。
(参考サイト:公取委の企業結合/届出制度)
◎えーと、対象となる企業結合は、こう書いてありますね。
- 株式取得の届出制度
- 合併の届出制度
- 分割の届出制度
- 共同株式移転の届出制度
- 事業等の譲受けの届出制度
◎あれ?株式交換がないですね。
◆◆そうなんだよ。
株式交換=株式の取得
◎ということは、株式交換は独禁法の対象外なんですか?
◆◆そんなわけないでしょ。
◎ですよね。
◆◆株式交換は株式等を対価に対象会社株式を”強制取得”しているわけで、「株式取得」に分類されるんだ。
◎なるほど。じゃあ、やっぱり株式交換をするならば必ず独禁法対応が必要なんですね?
◆◆いや、かならずしもそうとは言えないんだ。
◎あれ。今日はスムーズに議論が進みませんね。私のカンが外れまくりです。
◆◆そもそも、合併等の他の組織再編も含めて、同一企業集団内の組織再編は現行の独禁法では届け出の対象外になっているんだよ。
◎ああ、それは聞いたことがあります。となると、50%超保有する上場子会社に対する株式交換は独禁法の届け出対象外になるのですね。
◆◆そのとおりなんだよ。株式交換は規制の形式だけ追っていると一見対象外に見えて、実は対象なんだけども、同一企業集団内の再編ならばやっぱり対象外という落とし穴の多い再編なんだ。
◎なるほど。注意しておきます。
海外独禁法対応
◆◆独禁法と言えば、日本だけじゃなくて海外の独禁法対応も必要だよね。
◎ええ。特に中国独禁対応は大変だということで毎度論点になっています。
◆◆結果的には問題なしとなるとしても、中国は動きが遅いからね。ある案件で、中国独禁のために案件が一旦ストップという話もあるし。
◎どこの国まで届け出するのかと言う点も重要ですよね。
◆◆完璧にやろうとすると終わらないから、ビジネス上関係ある主要国の対応をすることになるのだろうね。弁護士の先生が活躍する場面だね。
◎しかも、国によっては案件を公表してからでないと独禁法対応のFilingを受け付けてくれないところもあるらしいですね。
◆◆そのとおりだよえ。いずれにせよ、海外独禁法対応が予想される案件の場合には、クロージングまで相当に時間がかかることも想定してスケジュールを立てておく必要があるよね。
さいごに
全5回として連載してきました「組織再編四きょうだい」をお読みいただき、ありがとうございました。
お気づきのとおり、組織再編の4手法については、似ている側面もあれば、異なる部分も多く存在します。
特徴をおさえるには、比較しながら覚えるのがわかりやすいかなと思って、4手法を”きょうだい”に見立てて説明してきたわけです。
これらの連載で組織再編4手法の各論点に関して、ざっくりとしたイメージを持って頂けたら幸いです。
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