今日は、完璧主義者はFAの仕事に向かないという話をしてみます。
世の中完璧主義者というのは結構存在しているようで、仕事をしていても、この人は完璧主義者だなと思うケースにしばしば遭遇します。
そして、そのような場合、大抵はいろいろと振り回されます・・・。
ベストよりもベターを目指すべき
M&Aの案件では、色々と選択をすべきタイミングというものがあります。
そもそも案件をやるか否かということもはもちろん、どのようなスキームで買うかとか、いくらで買うかとか、買った後どうするのかとか、決めなければならないことはたくさんあります。
そのような中で、関係者に完璧主義者がいるとどうなるかと言いますと、基本的に
「次の会議に先送り」
になります。
もっと良い・・・かもしれない
要は、完璧主義者の方は、決められないのです。
- もっと良い買収スキームがあるかもしれない
- もっと良い売却相手が出てくる可能性があるかもしれない
- もっと良い対象会社が出てくるかもしれない
正直に言えば、もっと良い何かがある可能性は常にあります。ビジネスは限られた情報・時間の中で、限られた選択肢の中から選ぶ必要があり、選択を待てば別のもっと良い選択肢が出てくるかもしれません。
ただし、選ばなかった選択肢に戻ることは困難であるケースがほとんどです。
そして、わすれがちなのですが、先送りとは「今は選ばない」という選択をしているということなのです。
選ばず、無為に時間だけが過ぎていき、気付いたら現実的な選択肢がほとんど残っていなかったなんていう事態はさけるべきです。
FAは現実主義者たるべき
だからこそ、FAは完璧主義者にならず、現実主義者でありたいものです。
現実的に、いまはこの選択肢しかないのだから、この中でベターな選択をしましょうと案件をドライブしていく必要があります。
仮にクライアントが完璧主義者の傾向にあったとしても、FAが地に足を付けたベターな解を提案していき、それをクライアントに選択していただく必要があります。
ところで、FAが提案する選択肢は基本的にベターな解であろうとするものの、ベストな解ではないはずです。
なので、それを選択することによる、メリットとデメリットが存在します。
しっかりしたFAであろうとするならば、メリットもデメリットもしっかりと説明すべきであり、それを踏まえてもその解がベターである理由も添えてクライアントの意思決定をサポートしてあげる必要があります。
M&Aは他社から対象会社を買ってくるわけで自社に完全にフィットすることはない
FAとして覚えておきたいのは、M&Aという行為そのものが、別の組織にあった対象会社・対象事業を取得させていただくという行為であり、そもそもその新しい買手にしっかりとフィットするような状況になっているわけがないということです。
すなわち、買手は、M&Aの対象会社を買収後に自社の組織にフィットするように徐々に時間をかけて融和していくことになるわけで、買収前にベストフィットを目指すのはそれはもう無理があるというものです。
したがって、FAとしてはクライアントの期待値をしっかりと適正なレベルにチューニングして差し上げる必要があります。
この点でも、FA自身が完璧主義者の場合には、そのような地に足のついたアドバイスをすることが困難となりますし、そのようなアドバイスをすること自体に自身が持てないはずです。
FAとしては、
「理想を言えば色々と選択肢があるかもしれませんが、現実的に貴社が選べる選択肢は、やはりこの●個であり、その中であれば、この選択肢がこれこれこういう理由で良いと思いますよ」
と助言できるようになりたいものです。
さいごに
記事の途中でも触れましたが、現実のビジネスでは、限られた情報の中で限られた選択肢から選んでいかなければなりません。
意思決定に必要な情報が漏れなく手許にあるという理想的な状況であれば、最適な選択が採れるでしょうけども、現実はそうはいかないわけです。
情報は刻々と新しく手に入りますので、更新されていく情報をベースに、ベターな選択肢を変化させ続ける必要があるわけです。
なので、FAとしては常に今の解はベターな解であって、ベストではないわけだから、いったんはこれを選んでもらったものの、現実的な範囲でもっと良い選択肢がないかということには気を配っておく必要はあると思います。
なお、この考え方は「一旦選んで、その後必要な軌道修正をしていく」という意味であり、先送りとは違うのだと思っております。