投資銀行(証券会社)のM&Aアドバイザリーチームに就職しようとしたときに、
- 外資系と日系
のどちらにしようかということで悩まれる方も居るようです。
新卒採用で片っ端から受けるにせよ、中途採用でピンポイントで受けるにせよ、それぞれの違いを知っておくのは有用だと思います。
ちなみに、外資系と日系の投資銀行は主に次の会社をイメージしております。
- 外資系(GS, MS&三菱, JP, ML, UBS 等)
- 日系(野村、大和、日興、みずほ)
外資系と日系の違いを3つの観点で比較
外資系と日系の投資銀行を3つの観点で比較してみようと思います。
- ディール数・質
- 組織・人材
- 給与・ワークライフバランス・長期の勤務可能性
1.ディールの数・質
外資系と日系の違いの1つ目は、ディールの数と質です。
外資系
外資系は基本的に高い手数料の取れる大型案件を少数精鋭のチームでこなすという働き方です。
ひとつひとつの案件が大きい分、同時に抱える案件数は少なくなる傾向にあり(個人として経験できる案件数が少なくなる)、どのファームなのかにもよりますが案件のブレイクが続くと1年間で1件もクローズしなかったという人も出てくるようです。
いわゆる日経新聞の1面をかざる大型案件を多くこなしているのは間違い無く外資系Top Tierの証券会社ですので、そういう目立つ案件をやりたければ、険しい道だとは思いますが、ぜひ外資系に入って精鋭チームの仲間入りを目指すと良いと思います。
日系
日系の証券会社は、Thomson Reutersのリーグテーブルを見ていただけば分かると思いますが、半端なく多い件数をこなしつつ、大型案件にも関与しています。リーグテーブルは公表・クローズされたものだけがカウントされますので、非公表案件やブレイク案件まで考慮すると、この何倍もの案件数をこなしているのだと思います。
もちろん、M&Aチームに属する人数が外資系よりもかなり多いという側面はありますが、それを鑑みても件数の多さは特筆すべきものがあると思います。
なお、日系投資銀行がこのような件数をこなせる理由は、ひとえに小規模案件も含めて全方位型の案件受け入れ体制があるからだと思います。
いわゆるBig Dealを担当するメンバーは外資系と同じようにそんなに多くの案件数を抱えることはできないと思いますが、中小規模のディールを担当するメンバーは並行して5件以上掛け持つのはよくあることだと聞きます。
個人的な所感
M&Aのディールは取引金額の大小を問わず、基本となるプロセスはだいたい一緒です。
(案件規模が大きくなればなるほど、関与する人数が増えてき色々な人が言いたいことを言うため、案件の進捗に時間と労力がかかるという傾向はありますが、プロセスの骨格は同じです)
そういう意味で、いきなり外資系に行けるほどのポテンシャルがない場合には、まず最初は日系の投資銀行で中小型案件にたくさん入れてもらって、そこでいちはやくM&A案件に慣れて、ディールもたくさんクローズさせて、少しでも早く案件主担当になるのを目指すのが良いと思います。
その後、中小型案件で培ったディールの回し方をベースに大きめの案件に取り組むようにするのが王道だと思いますし、そのために、外資系へ転職したり、転職はせずとも大規模ディールを扱うメンバーにして欲しいと社内で主張したりすると良いでしょう。
2.組織力・人材
組織力
組織力については日系投資銀行の方が圧倒的だと思います。
日系では、過去からの連綿たる主幹事やメインバンクの関係で案件がとれるというというある意味で不思議な構図です。全方位的に営業網を張っているので、案件数が増えるのも、「そりゃそうですよね」という感じです。
一方で、外資系はある意味で顧客層を最初から絞っている(Big Dealをやらない会社は顧客にしない)という割り切りがあるようで、全方位型の日系とはだいぶ異なる営業スタイルだと思います。ただし、ピンポイントに良い案件を取る力は外資系が数段上手だと感じます。
M&Aアドバイザリーのチームについては、日系ではシニア層になってもオリジネーションに積極的に関与しなくてもなんとかなる傾向だと思いますが、外資系で案件を取ってこれないバンカーはつらい立場になってしまうようです。このあたりも組織の大きさの違いに起因しているのでしょう。
人材
人材という意味では、組織力で勝負できない分、外資系の方が尖った人材が多いように思います。
ただし、外資系の人材は、尖りつつ案件数もこなしている超人も居れば、尖ってはいるものの案件の経験が足りない方も居るようです。単に尖っているだけのシニアバンカーの下についてしまうとつらいものがあるようです。
日系の人材は良くも悪くも、常識人が多いと思います。尖っている人もいないわけではないですが少数派な印象です。かつてのような「何があっても仕事を最優先にしろ、掛け布団の上に携帯を置いて寝ろ」という上司は日系の方が少ないのではという(勝手な)印象です。
なお、いわゆるパレートの法則(80:20の法則)はどんな組織にもあてはまるようで、どのファームも上位2割の人材の凄さは流石だなという印象です。
(逆に、下位2割の人材が逆サイドのFAになってしまった場合には、色々と大変なことになりますが、それはまた別の話・・・)
3.給与・ワークライフバランス・長期の勤務可能性
給与 or ワークライフバランス
給与とワークライフバランスの2つの要素は片方を追求すればもう片方が劣後しやすい関係にあると思います。
すなわち、外資系のように首切りリスクが高い採用形態の場合には、給与は高いですが、ワークライフバランスとはなんぞやという働き方になるでしょう。
一方で、日系の場合給与が相対的に低いのに、外資系ほどではないにせよやはりワークライフバランスは崩壊傾向にあるので、そもそもワークライフバランスを求める方はこの仕事に向かないかもしれません。
そういう意味で、短期間で勝負しようとするならば、外資系でがっつり稼ぐのが良いかもしれませんが、IBDのジュニアの場合、最近はそこまで稼げなくなってきているようにも聞きます。
長期勤務の可能性
何度も繰り返し書いてますが、M&Aアドバイザリーの仕事は経験量(案件数)がものを言うので、どれだけこの仕事を長くやり、いかに案件をこなしたのかが重要です。
M&Aアドバイザリーの仕事は数年経験できれば良くて、その後別の業界に転職しようという方ならあまり気にする必要もありませんが、長期間この仕事をやろうと思うならば、首切りリスクをどう評価すべきかは自分の能力と仕事に対するスタイルを客観的に見て決めるべきと思います。
本当の意味で猛者・超人であれば外資系でゼロから昇進していけると思いますが、その道は相応に厳しいことだけは肝に銘じておいた方が良いでしょう。
さいごに
という感じで色々と比較してみましたが、実は一番の決め手は一緒に働く人がどんな感じなのかということかもしれません。
すなわち、M&Aアドバイザリーのチームがある証券会社であれば、だいたい同じような業務につくことなります。一方で一緒に仕事をする周りの人間のタイプは大分違うので、面接を通じてそれぞれのファームの特徴を肌で感じ、合うか合わないかを見極めるというのも重要な観点かもしれません。