M&Aの過去事例は宝の山 〜東証上場会社情報サービスやEDINET全文検索の活用〜

M&A講座
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Financial Advisory業務(FA業務)の業務範囲には、「適時開示資料の作成サポート」が含まれるのが一般的です。

上場会社のM&A案件では適時開示が必要となるケースが多いため、クライアントとしても適切な開示ができるようにとサポートを期待しているところがあります。

その際に、参照する情報として

  • 会社情報適時開示ガイドブック(規則)
  • 過去の類似M&A案件の適時開示(事例)

の双方を確認するというアプローチをとることが多いです。

ということで、今回は過去事例は宝の山であるという話と、それをどのように調べたら良いかということについて見てきます。

過去の類似M&A案件の適時開示(事例)

過去事例は宝の山らしい

M&Aの提案書を作るとき等、類似する過去事例の適時開示を参照して論点を確認することがあります。

といいますのも、過去事例の適時開示資料は、その作成過程において、FAはもちろん、各専門家の先生方や取引所の担当官も含めて、より適正に開示するための様々なやりとりがあったはずです。

そんな関係各位の叡智の結晶が過去事例の適時開示であるわけで、その記載内容はとても勉強になります。

ゆえに、ある意味で、過去の類似案件の適時開示資料は「宝の山」であるといえるのではと思っています。

過去の類似事例の探し方(1) 無料で誰でも

(i)東証上場会社情報サービス

東証のホームページには、

東証上場会社情報サービス

という上場会社が東証に提示した各種資料に関する検索機能があります。適時開示資料として

  • 決算情報 → 5年分
  • 決定・発生事実 → 2年分
  • 合併等組織再編の事前・事後開示書類を含む各種ファイリング → 5年分

等の情報が保存されています。特に、合併等組織再編の事前・事後開示書類を簡単に閲覧できる点が特徴かと思います。

ただし、この検索方法は会社コードを基準にしていますので、

合併の適時開示を網羅的に探したい

というニーズにはちょっと合致しないかもしれません。

こういうニーズのためには、EDIENT全文検索かGoogleファイルタイプ検索をあわせて活用することになります。

(ii)EDINET検索(EDINET全文検索)

今更説明する必要は無いかもしれませんが、有価証券報告書等の金商法に基づく開示書類の閲覧ができるサービスであるEDINETを使って過去事例を探すという方法もあります。

とくに、TOB(公開買付け)の案件では、公開買付届出書をどのように作るのかということがかなり重要になってきますので、EDINETにお世話になることが多々あります。

なお、EDINETには「全文検索」という機能があります。

全文検索をしながら、検索する書類種別や期間を設定できるので、

  • 検索文字列 → 第三者委員会
  • 書類種別 → 公開買付届出書
  • 期間 → 全期間(過去5年間)

という具合に検索すると、次のような検索結果が出ますので、第三者委員会を設置したTOB案件を過去5年分見られるようになります。

(iii)Googleのファイルタイプ検索

ざっくりとしたキーワードで過去事例を検索をする場合、Google検索は実務でもかなり使えます。

特に、ファイルタイプ検索という方法を知っていると便利です。

ファイルタイプ検索とは、試しにGoogleの検索窓に

filetype:PDF 公開買付 第三者委員会

と打ち込んでみると、「公開買付 第三者委員会」が含まれるPDFファイルのみを検索することができます。

ただし、この検索方法だとその適時開示の前後にどのようなイベントがあったのか、その事例特有の事情や背景を把握するのは難しいため、この検索方法で類似案件に取り組んでいそうな会社の証券コードと時期を把握して、先ほど説明しました

東証上場会社情報サービス

で会社を指定して検索するようにすれば良いと思います。

過去の類似事例の探し方(2) 有料

なお、実務上は会社で「eol 企業情報データベース(プロネクサス)」とかの契約があれば、これで必要なキーワードを入れて全文検索をかけるのが最も効率的です。

ただし、そういう契約がない場合や自宅等で検索する場合には、これまで述べてきた無料で誰でも使える方法で検索しても十分に過去事例を探せるのではと考えています。

さいごに

類似する過去事例を素早く探す能力はとても大事です。

ただ、さいごにひとつ注意点を挙げるとすれば、少し古い事例の場合、開示規制が変わっていることがあります。

ですから、過去事例だけではなく「会社情報適時開示ガイドブック」もあわせて参照して、現行の開示規則で変わりは無いか確認するようにしましょう。

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