前回の記事で、投資銀行に入社する前にその次のステップを考えておいた方が良いという話をしました。
(参考記事)
今日は、それを踏まえて、投資銀行の次のキャリアとして具体的にどのような選択肢があるのかを見ていきたいと思います。
金融系か事業会社かという大きな選択肢から
一旦金融畑を離れてから出戻りするのは難しいかもしれない
これは、傾向でしかないのですが、投資銀行から他の投資銀行やPEファンド等の別の金融系の仕事にシフトするのは可能だと思いますが、投資銀行経験者でも一旦事業会社に移ったあとに金融系に出戻りするのは簡単ではないと思います(実際に、出戻りに成功している事例を数件は直接知っているので、不可能ではないですが難しいという印象です)。
なので、金融畑を離れる際には、「もう金融系には戻らないぞ」という、ある程度の覚悟を持って選択した方が良いように感じます。
なお、近年は金融系を離れつつも、事業会社でなくて商社へ転職するというケースも相応に散見されますので、それについても最後に触れてみます。
投資銀行出身者が事業会社で働くとなると・・・
投資銀行出身者が事業会社で働くとなると、基本的には
- 経営企画部
- 財務部
といった部門での採用になると思います。
これらの部署は基本的にはコストセンターなので、これまでのようなある意味で売上成績を追われる立場からは解放されることになると思います。
その代わりに、働く環境が安定化しすぎる点で刺激が少ないということを良しとするかどうかという悩みが出てきます。
すなわち、
- 仕事を一緒にする同僚はほぼ固定メンバー
- 事業部を巻き込んでM&A案件検討をしていても、自分が事業のスペシャリストではないためFAと事業部の仲介役になってしまう傾向
- 投資銀行の時代のように外出してクライアントを訪問するということがなく基本的に内勤になる
- 自分の仕事の成果がわかりにくい(M&A案件の成約が必ずしも自分の評価になるわけではない)
という点で、投資銀行の仕事とは大きく異なり、人によっては
「安定しすぎていて、刺激が無くてつまらない」
と感じる方もいるようです。
もちろん、転職先がM&A案件を毎年何件も成約させる程積極的な会社であれば別ですが、そのようなアグレッシブな会社ばかりではないということです。
どうしても年収は下がる傾向にある
投資銀行時代の年収と比べて、事業会社の年収は基本的に下がる傾向にあるようです。
何らかの手当てがつくかもしれませんが、日本企業の多くは未だに実質的に年功序列の考え方に準じておりますので、仕方ない部分があるかもしれません。
でも、その代わりにワークライフバランスは保ちやすいようです。
夏なんかは外が明るいうちからビアガーデンでビールを飲むなんてことも可能なようで、
- 人生は仕事ばかりじゃあつまらないよね
という価値観であれば悪くない選択肢かもしれません。
実業をやりたいから金融系から脱出するという考え方は?
これは、ジュニアワークのつらさに辟易している若手に多いのですが、
「日本はものづくりの国だから、金融業のような虚業ではなく実業をやるんだ!」
と息巻いて転職される方がいます。
個人の価値観の問題ないので止めはしませんが、転職先で何らかの職人になるなら別ですが、結局のところ経営企画部や財務部での採用となると
「本当の意味では実業に触れるという訳ではない」
という点に落胆する方も居るようです。管理系の職種として採用される以上はその点は仕方ないですし、ものづくりを本当に経験したければ現場系の職種として金融キャリアを捨てるつもりで転職するしかないと思います。
ベンチャー企業へ転職するという選択肢
事業会社でも、いわゆる大手企業ではなく、ベンチャー企業へ転職するという方は一定数居ますし、直接の知り合いでも何人かは心当たりがあります。
ただし、それらの方々がその後も上手くいっているかというとそれは千差万別ですし、傾向としては上手くいく人は少ないと思います。
それはベンチャー企業という特性上仕方ないと思いますし、もしかしたら会社がつぶれるかもしれないという覚悟を持って、エイヤっと転職するのはそれはそれで一つの選択だと思います。
金融系に残るという選択肢
引き続き金融系に残ろうとしても、大きく分けて
- セルサイド:投資銀行・証券会社等の業者
- バイサイド:ファンド・アセットマネジメント等の投資家(運用会社)
という2択を迫られます。
セルサイド
セルサイドでは、投資銀行的な手数料ビジネスで勝負することになりますので、
- 別の投資銀行(証券会社)
- 会計系ファーム
- 独立系ファーム
あたりに転職して、それまでと同じような仕事を継続することになります。
投資銀行の仕事自体は好きだけど、何らかの理由で働く会社は変えたいという場合には有用な選択肢だと思います。
バイサイド
バイサイドは、要は運用で勝負する人たちであり、代表例は、
- PEファンド
- アセットマネジメント
あたりなのかなと思いますが、この2つの仕事はだいぶ違います。
PEファンド
PEファンドは、Private Equity Fundの略であることからわかるように、基本的に非上場会社をターゲットとしてそのマジョリティに投資して、IPOや他社への転売によってEIXTすることでリターンを得るビジネスです。PEファンドのジュニア層の場合はやっていることはモデリングであり、投資銀行のジュニアの仕事とほとんど変わらないというイメージで間違いはなさそうです。
(実際に、案件で懇意にさせていただいているファンドの方に聞いても、IBD(Investment Banking Division:投資銀行の投資銀行部門)出身者は「結局のところモデリングができてなんぼだ」と端的におっしゃっていました)
アセットマネジメント
直接の知り合いにアセットマネジメントへ転職したという方は居ないのですが、バイサイドの有力な転職先セグメントのひとつになるようです。
基本的に、セカンダリー市場を相手に商売をすることになるので、IBD出身者の場合はだいぶ違った仕事になりますが、それもまた面白いと思えるかどうかだと思います。
商社という選択肢
ここ数年、IBD出身者で直接的な知り合いがが商社へ転職するというケースを何人か見てきました。
若手の場合、ポテンシャル採用で総合職的な位置づけで採用されているケースもありましたが、基本的にはM&A関連の部署に配属となり、投資案件を検討するチームメンバーとなるケースが多いように感じます。
そうなると、商社という看板ですが、やっていることはファンドに就職したケースとあまり変わらないようです。そしてファンドよりはワークライフバランスが取りやすく、マイルドな生活を送れるということもあり、相応に人気な転職先になってきているように感じられます。
さいごに
色々な選択肢を検討してみましたが、まとめとして一つ言えることがあるとすれば、投資銀行出身者というのは、上手く使えば転職の黄金のチケットであり、それをどのように生かしていくのかは自分のキャリアプランを長期的に見据えながら考えていくと良いと思います。