今日も転職希望の方向けの記事ですが、投資銀行に転職しようとするならば、そこからのEXITプランを転職の前に考えておいた方が良いかもしれないという話をしてみようと思います。
次の転職先の、そのまた次まで考えるってことはあまりしないのかもしれませんが、そこを考えておいた方が良いのではということです。
投資銀行からのEXIT
投資銀行業務に対するニュートラルな感覚は今しか持てない
投資銀行へ転職する前にその次のステップを考えておいた方が良い最大の理由は、
からです。
これはどういうことかというと、人は何らかの意思決定をする際に、完全にニュートラルなポジションでものごとを考えるというのは難しく、自分の現状を無意識的に(潜在的に)肯定するような選択肢を採りがちであり、入社後は
- 「投資銀行社員である今の自分の目線」
で次を考えてしまうからです。
言い方を考えると、何かを分かってしまった後は、それが分からなかった時代の自分の気持ちが分からなくなるという感じでしょうか。
ここで、
「投資銀行社員の自分の目線で考えることは、別に普通のことだし、入社後にわかることもたくさんあるわけで、知ってから判断した方が良いじゃないですか」
っていう反論が来そうですが、それは全くもって、そのとおりです。
投資銀行からのEXIT戦略、すなわち次の転職先は、当然ながらその転職時に詳細に検討することになるのだと思いますが、その際に、
を記録として残しておくことが意外に有用だからです。
入社後は「ひたすらラットレース」になる・・・はず
一旦入社してしまうと、想像を超える多忙さと勉強することの多さとで、中長期的なキャリアプランを考える余裕はなくなり、
「とにかく今のこの案件を何とかやりすごすぞ」
ということに集中せざるを得なくなるはずからです。残酷かもしれませんが、毎日が次の絵のように過ぎ去っていきます。
このような状態では、冷静な判断をするのは難しいでしょう。「毎日がつらい」という理由で逃げるように転職をしたいという精神状態になってしまうかもしれません。
そんなとき、入社前の自分がどのように考えていたのかを残しておくと、場合によっては冷静さを取り戻して、もうちょっと頑張ろうかなという気分になれることもあるのかもしれません。
時間の経過と共に転職に対する摩擦係数が上がる
投資銀行の現場という相応に過酷な職場だとしても、それなりの期間その場にいると、何気にそれが心地よくなってくると言う不思議な現象があります。
これはひとえに人材の新陳代謝が激しく、かつ新メンバーの質が高い組織ということが理由だと思います。
自分の転職時は、自分が最も新しいメンバーであり、完全に「新人」です。
ところが、その後に徐々に古参メンバーが退職や異動で居なくなってくると、ある日、自分がその会社の「重鎮」とまではいかないものの、それなりに美味しいポジションになってくるときがやってきます。
面倒なジュニアワークは新しいメンバーがやってくれるし、M&A案件を多数こなして仕事自体はそれなりに面白く、そして待遇も悪くないときたら、
「正直言って、いまは転職する意義がないよなあ(半分は感覚の麻痺かもしれません)」
となってしまうことでしょう。
本当の意味でブラック企業であると、入社してくる新メンバーの力量に限界があるのかもしれませんが、投資銀行の場合は新たに入社してくるメンバーが基本的に皆ピカピカの経歴と能力を兼ね備えているため、古参になるほど居心地が良くなる傾向にあるのだと思います。
投資銀行というキャリアは何らかの「手段」ではなかったのか?
M&Aアドバイザリーの仕事が大好き過ぎて、それを一生涯の仕事にしていこうと思っている人は別ですが、それなりの割合の方は、投資銀行のキャリアをその後に別のことをやるためのひとつのステップにしようと思って入社してきていると思います。
ところが、いざ入社してしまうと
- 「毎日がつらい」 または 「毎日がそれなりに居心地が良い」
となってきて、冷静に長期的なキャリアプランで物事を考えなくなってしまうという事態に簡単に陥ってしまうように思います。
そんなときに、
さいごに
実は、今日の記事の根底にある考え方は、心理的バイアスによる影響をなるべく防ごうというものです。
心理的バイアスには色々な種類がありますが、転職前にEXIT先、すなわち次のキャリアを考えておいた方が良いのは、主に次のようなバイアスによる影響を避けるためです。
- 確証バイアス
- 当初の意思決定にとらわれ、それを肯定的に裏付ける証拠ばかりを探し、都合の悪い情報は無視する
- 立場固定バイアス
- ある意思決定が、必ずしもリターンをもたらすとは限らず不利益を生む可能性があっても、それをやめられない状態
- サンクコスト(埋没費用)を受け入れるのが困難な状態ともいえる
- 後知恵バイアス
- あることを知ると、それ以前にはどう考えていたかを忘れてしまう状態
- 結果が起きてからそれが予測可能だったと考えてしまう状態ともいえます