会社法に定められる、組織再編行為である、合併、会社分割、株式交換及び株式移転の4つの手法についてそれぞれの特徴を比較してみようと思い、先輩と後輩の対話仕立てで記事にしております。
今回は連載第2回ということで、略式・簡易の制度を確認していきます。
(文頭のマークが◆◆→先輩、◎→後輩 です)
略式・簡易組織再編制度
略式・簡易の組織再編制度の概要
◎まず、略式・簡易組織再編制度ですね。
◆◆略式と簡易組織再編とは何だったか改めて説明してくれる?
◎はい。略式組織再編制度というのは、存続会社(親会社)が消滅会社(子会社)の議決権の9割以上を持っている場合に、子会社の株主総会を省略できるという制度ですね。
◆◆そのとおりだね。議決権の9割以上を持っているということは仮に子会社の総会を開いても結果は見えているわけで、だったら総会を省略しても差し支えないよねという思想があるよね。一方の簡易というのはどういう制度だっけ?
◎簡易組織再編は、存続会社(親会社)側の株主総会を省略するための制度です。合併であれば親会社の純資産へのインパクト(新株式の発行価額+対価金銭等)が1/5以下なら適用可能ですね。
◆◆そうだね。イメージとしては、吸収してもインパクトのほとんどないような小さな会社を合併するときにわざわざ存続会社(親会社)の株主総会を開くのは煩雑だよねという背景からつくられた制度だね。
株式移転の場合に簡易・略式はあるか?
◎組織再編4きょうだいの全てに略式と簡易組織再編の制度があるんですよね?
◆◆ちょっと待った。
◎あれ?間違えましたか?
◆◆株式移転はどうかな?
◎えーと、、、。株式移転に略式と簡易は無さそうですかね。
◆◆そうだよ。簡易が適用できるのは株式移転で言うところの新設のホールディングスにあたる会社なんだろうけども、そもそも存在していない会社だから省略しようが無いよね。さらに、略式についても新設予定のホールディングスに議決権を持たれているわけがないからこちらもあり得ないね。
◎ということは、末っ子の次女が仲間はずれですね。
簡易組織再編と差損のはなし
◆◆そうだね。ところで、簡易組織再編は1/5以下の要件を満たせばいつでも使えると思う?
◎ええ。そうじゃないんですか?
◆◆実は「差損」が出る場合は簡易手続をとれないんだ。
◎差損? ですか?
◆◆合併差損とか聞いたことないかな?
◎ありますね。
◆◆組織再編の差損益というのは、完全親子間の合併で考えるとわかりやすいんだけど、仮に親会社が子会社株式を100で持っていた場合に、
- 子会社の純資産が120であれば20の差益が発生
- 子会社の純資産が70であれば30の差損が発生
というものなんだ。
◎なるほど。そうなると、仮に完全子会社との合併であっても、合併差損が発生するならば簡易合併は使えないのですね?
◆◆そうなんだよ。我々が携わるM&Aでも、たとえば子会社との合併案件もあり得るんだろうけれども、常に簡易合併が取れるわけではないから念のため合併差損の発生可能性については留意しておく必要がありね。
◎おっと、それは盲点でしたね。気をつけます。
(次回に続きます)
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